自由な視点、多様な技法 「TARO賞」入選21作品を展示 川崎の岡本太郎美術館

岡本太郎賞に輝いた高田さんと作品=川崎市多摩区で
現代美術の巨匠・岡本太郎(1911~96年)の自由な視点と発想を継承する作家に贈られる「第29回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」の入選作品展が、川崎市岡本太郎美術館(多摩区)で開かれている。多様な素材と技法を駆使したインスタレーション作品群には、作家それぞれの社会観や自分史が色濃く反映されている。(佐藤圭)
TARO賞は97年度に創設され、公益財団法人・岡本太郎記念現代芸術振興財団(東京都港区)と岡本太郎美術館が主催。平面作品は5メートル四方、立体作品はこれに奥行き5メートルを加えた範囲に収まれば、表現方法は自由。今回は国内外から644点が寄せられ、計21作品が入選した。
最高賞の岡本太郎賞には、兵庫県三木市の高田哲男さん(53)の作品「FUKUSHIMA5000」が輝いた。2011年3月の東京電力福島第1原発事故で被災した福島県沿岸部の浜通りを舞台に、住民の日々の暮らしなどを10センチ四方の画用紙5440枚に描いた。
18年冬、初めて浜通りを訪れた際、除染土を詰めた黒のフレコンバッグの山に衝撃を受けた。「テレビや新聞のニュースだけでは足りない。自分の目で見た情報を形にしたい」と思い立ち、10回ほど現地に足を運んだ。画用紙の枚数は事故発生時から現在までの日数を意識した。高田さんは現在、広告などのアルバイトで得た貯金を取り崩しながら作家活動を続ける。「ちょうど仕事を探していたところだった。賞金を使って福島の取材を続けたい」と笑顔を見せる。

岡本敏子賞を受賞した馬場さんと作品=川崎市多摩区で
次点の岡本敏子賞には、東京都東村山市の馬場敬一さん(51)の作品「死と再生のイニシエーション」が選ばれた。うつ病に苦しむ中で得た死生観を基に、自我(本人)、死に誘う髑髏(どくろ)、長年支え続けてくれたパートナーを投影した女神による神話的世界を表現。段ボールに描いた絵をカッターナイフなどで破壊し、立体的に再構成したものを樹脂で固めている。「制作工程は、誕生、死、再生を象徴している。作品をつくることで、うつから抜け出せた」と説明する。
3月29日まで。月曜休館(ただし2月23日は開館、翌24日休館)。館内では、常設展「岡本太郎 生きることは遊ぶこと」を同時開催。料金は一般700円など。
両展終了直後から約3年間、老朽化に伴う大規模改修工事に入る。工事期間中は展示室を閉鎖し、TARO賞の公募も取りやめる。29年度のリニューアルオープンと、同賞の再開を目指している。問い合わせは美術館=電044(900)9898=へ。
◆若き太郎が見た星空再現 プラネタリウムで特別投影 23日、川崎の科学館

1930年、パリ郊外で撮影された岡本太郎(川崎市岡本太郎美術館提供)
川崎市多摩区の市岡本太郎美術館とかわさき宙(そら)と緑の科学館は23日、プラネタリウム特別投影「無限に透明な世界 太郎が見た欧州航路の冬空」を同科学館で開く。岡本太郎が18歳の時、留学先のパリへと向かう旅路で見た星空を再現する。
太郎は1929(昭和4)年12月、新聞社の漫画記者としてロンドン軍縮会議に派遣された父・一平に同行し、作家の母・かの子ら一家で神戸港を出発した。シンガポールを経て、翌年1月にパリ着。約10年間滞在し、数々の芸術運動に参加した。
特別投影では太郎の著書などを基に、当時の東京とシンガポール、パリの星空を紹介。科学館の担当者は「現在とは惑星の見え方が違っている。赤道直下のシンガポールでは、東京では観測できない南十字星を見ることができる」と説明する。
投影時間は午後4時半から約45分。定員は200人。観覧料は一般400円、高校・大学生と65歳以上200円、中学生以下無料。問い合わせは科学館=電044(922)4731=へ。(佐藤圭)
【関連記事】"差別投稿11件を認定 川崎市、運営会社に削除要請
【関連記事】"川崎市選管で不在者投票32票に気づかず、開票漏れ…麻生と川崎区 多摩区では投票者数の集計に誤り
【関連記事】"<かながわ未来人>旬野菜 おいしく食べて 「ライブ感」重視 SNSで農業を配信の若手農家・亀井尋仁(かめい・ひろひと)さん(31)