地味で非おしゃれも「一人暮らしに最適」街の実態

神奈川から東京へ上京、上京前は終電を逃して痛い目に, 杉並区、駅徒歩15分、4畳半のシェアハウス。家賃6万5000円, 方南町は、家賃が手頃なのにアクセス最強, おしゃれさは無視して、アクセスのよさで選んでいい, いつまで経っても、方南町は「穴場の街」であり続ける?

環七通りに面している方南町駅。近辺にはチェーン店の飲食店やお惣菜屋さんが並んでいる(筆者撮影)

進学、就職、結婚……人は様々な理由で東京に移り住む。しかしずっと同じ街に暮らすとは限らず、一度引っ越すと、その街に何年も足を運ばないケースも――本連載ではそんな「東京で最初に住んだ街」を、様々な書き手が久しぶりに歩き、想い出の中の街と現在の街を比べていきます。第9回はフードライターの市岡彩香さんが、方南町で過ごした日々を振り返ります。

久しぶりに東京で最初に住んだ街、杉並区の方南町を訪れた。引っ越してから一度も帰る機会がなかったため、約10年ぶりの再訪である。

【画像】おしゃれではない、むしろ地味、しかし住むには超いい「方南町」はこんな感じのところ

当時は必ず中野坂上駅で乗り換えなければ辿り着けなかった方南町駅だが、現在は丸ノ内線の運行が変わり、東京駅からも、新宿からも、銀座からも、乗り換えなしで直通でアクセスできるようになっており、時の流れを感じた。

神奈川から東京へ上京、上京前は終電を逃して痛い目に, 杉並区、駅徒歩15分、4畳半のシェアハウス。家賃6万5000円, 方南町は、家賃が手頃なのにアクセス最強, おしゃれさは無視して、アクセスのよさで選んでいい, いつまで経っても、方南町は「穴場の街」であり続ける?

丸ノ内線の終着駅にある、方南町駅。駅自体は小さいがアクセス抜群な穴場だ(筆者撮影)

神奈川から東京へ上京、上京前は終電を逃して痛い目に

筆者の実家は、神奈川県茅ヶ崎市にある。東京の隣県のため、「上京する意味はあるの?」と思う人もいるかもしれないが、私の実家は最寄り駅まで徒歩40分で、駅までのバスは1時間に4本くらいしかなかった。

自転車で15分かけて駅に向かい、そこからさらに電車で1時間半。当時勤務していた会社には片道2時間弱かかり、通勤だけで体力を消耗していた。

大学時代も東京の大学に通っていたが、学生と社会人とでは生活スタイルも疲労度もまったく違う。学生は夜遅くまで東京にいる必要はないし、働いていない分、体力にも余裕があった。

しかし、東京で働き始めてから「最寄り駅まで徒歩40分」という現実は、想像以上にメンタルにくる。仕事終わりに飲みに行き、うっかり終電を逃した日は、この世の終わりかと思った。仕方なくタクシーで帰宅し、2万4000円を支払ったこともある。

杉並区、駅徒歩15分、4畳半のシェアハウス。家賃6万5000円

神奈川から東京へ上京、上京前は終電を逃して痛い目に, 杉並区、駅徒歩15分、4畳半のシェアハウス。家賃6万5000円, 方南町は、家賃が手頃なのにアクセス最強, おしゃれさは無視して、アクセスのよさで選んでいい, いつまで経っても、方南町は「穴場の街」であり続ける?

住み始める前のシェアハウスの個室。マットレスを自分で購入するだけですぐに住めた(筆者撮影・2015年頃)

現在私は、フリーランスでフードライターやMCの仕事をして生計をたてているが、大学卒業時からフリーランスになりたかった。そのため、内定していた会社を入社前日に辞退したこともあるのだが、半年でフリーランス生活に挫折。第二新卒ですぐに会社員になった。

そんな23歳の私は、とにかくお金がなかったため、ひとり暮らしの初期費用を用意できる余裕はなく、初期費用ゼロで家賃も手頃なシェアハウスを選ぶことにした。

選んだのは、東京都杉並区・方南町にある女性専用シェアハウス。フランチャイズ問題で何かと話題となった「かぼちゃの馬車」である。まさか数年後に社会問題になるとは想像もしていない私は、かわいらしい名前と部屋の雰囲気に惹かれ、即決。なかでも方南町の物件は、家賃が周辺より安かった。

家賃だけでなく、共用のお手洗いやシャワールームは週に数回業者が清掃してくれ、衛生面も安心。共用リビングはなく、全員個室なのもよかった。さらに1人1台自転車を自由に使えたため、下北沢や笹塚へも気軽に行けた。浴槽はなかったが、通い始めた笹塚のジムには大浴場があり、不便は感じなかった。

方南町は、家賃が手頃なのにアクセス最強

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徒歩15分の帰り道は常に車通りが多く、夜道も怖くなかった(筆者撮影)

今あらためて歩くと、駅まで徒歩15分は遠く感じる。だが当時は、実家から駅まで徒歩40分が当たり前だったため、「なんて近いんだろう」と感動していた。なんてったって方南町駅から新宿駅までは電車で約10分。さらに家からもう1つ近かった最寄り駅「代田橋」駅を使えば、渋谷までも電車で約10分で着く。そんな利便性抜群のシェアハウス暮らしに大満足していた。

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方南町駅からすぐのサミット。仕事終わりに予定がない日はここに立ち寄っていた(筆者撮影)

方南町は、正直おしゃれな街ではない。ただ、駅前にはサミットがあり、シェアハウスから徒歩1分の場所にはドン・キホーテもある。生活に必要なものはすべてそろい、不便を感じることはなかった。

さらに住んでいた場所は環七通り沿いで、人通りと車通りが多く、夜道も怖くなかった。利便性抜群のため、車がなくて困ることも一切なかった。

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シェアハウスに住み始めた頃の筆者。当時は若かったこともあり、週4日合コンということも珍しくなかった。その結果、今の夫と出会っている。ある意味、方南町がくれた縁かもしれない(筆者撮影・2015年頃)

何より嬉しかったのは、飲み会で終電を逃しても、5000円以下で帰宅できること。神奈川在住では、そうはいかない。上京前は終電が22時台のこともあり、盛り上がっている最中に帰ることも珍しくなかった。それが東京に住んでからは、終電が1時間以上遅くなり、生活の自由度が大きく変わった。

おしゃれさは無視して、アクセスのよさで選んでいい

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シェアハウスから徒歩1分のところにあるドン・キホーテ。食料も生活品もここですべてそろえることができた(筆者撮影)

方南町という街は、正直普通だ。でも、アクセスのよさが抜群。その割に家賃が高くない。環七通りに面しているため、空気の綺麗さや騒音が気になる人はあまり選ばないのが影響しているのだろう。

しかし、そこさえ気にならなければ、住むにはとてもいい街だ。近くにはスーパーもパン屋もドンキもあり、不便さを感じることもないため、初めての上京には打ってつけだったと思う。

神奈川から東京へ上京、上京前は終電を逃して痛い目に, 杉並区、駅徒歩15分、4畳半のシェアハウス。家賃6万5000円, 方南町は、家賃が手頃なのにアクセス最強, おしゃれさは無視して、アクセスのよさで選んでいい, いつまで経っても、方南町は「穴場の街」であり続ける?

初めての上京は、人通りが少ない道は選ばないほうがいい。車通りが多い立地を選ぶと安心感があるのでおすすめ(筆者撮影)

上京を考えている若者の中には、「憧れの街に住みたい」という思いがある人も多いだろう。だが、まずは東京で暮らしてみることをおすすめしたい。自分が思い描いていた東京とは違っても、ひとりで生活してみる経験は大きい。シェアハウスでも十分だ。上京するだけで、毎日は大きく変わる。

社会人になってからは、親と毎日顔を合わせる必要はないのかもしれないと当時を振り返ると思う。実際、私は親と離れて暮らしたことで、親子関係がむしろよくなったと感じている。

実家にいた頃は、夜0時を過ぎて帰ると、父に家のチェーンを閉められていた。そのため終電を過ぎてまで飲みに行くことがなかなかできなかった。親から離れて、東京で生活するようになってからは、時間を気にせず外出できるようになった。もちろんその親子次第だが、適切な距離感はあると私は思っている。

いつまで経っても、方南町は「穴場の街」であり続ける?

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家から徒歩圏内で行ける代田橋駅すぐにある沖縄タウン。沖縄料理店が立ち並んでいる(筆者撮影)

ちなみに方南町は、筆者が2025年に読んだ雑誌の不動産特集でも「穴場エリア」として紹介されていた。筆者が暮らしていた10年前も穴場と言われていたが、今も変わらないようだ。

おしゃれではないし、地味だが、一人暮らしを始めるには最適――。初めての上京先として、筆者は方南町を強くおすすめしたい。きっと何年経っても、今のポジションを守り続けてくれることだろう。