ダシは不要!料理用清酒がうま味を生む「極上鍋」

鶏肉から出たうま味を含んだスープには薄い塩味がついています。ゆずこしょうや七味などを添えるのもいいですし、ゴマ油+にんにくのすりおろし+塩で食べるのもおすすめです(写真:筆者撮影)

料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作れる方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回は、長ネギをたっぷりと使った鶏と青ネギの鍋をご紹介しつつ、鍋料理のポイントを解説します。

酒を使ってうま味を補う

まだまだ寒い日が続いているので、身体が温まる鍋料理が恋しくなります。

【写真で作り方を確認】これ、マネしよ! 鍋料理のときに面倒な「アク」の発生を抑えて「クリアなうま味」を作り出す極意とは?

鍋料理は具材を食べ、最後に残るスープを味わうもの。ダシには昆布やかつお節などを使うのが一般的ですが、今回は酒を使ってうま味を補います。

この料理のポイントは酒にあります。広島には美酒鍋という水の代わりに酒を使った郷土料理がありますが、酒はいわばコメのダシなので、甘みとうま味で味を補ってくれます。

鶏と長ネギの鍋

材料(2人分)

鶏もも肉 300g

塩    小さじ1

長ネギ  3本

酒    200ml

水    300ml

料理に使う酒=日本酒には塩分が入った料理酒もありますが、ここでは「料理用清酒」と呼ばれるジャンルの酒を使用しています。料理用清酒は塩分がゼロで、味わいが濃いのが特徴です。

そもそも日本酒には「純米酒」や「吟醸酒」など、作り方によってさまざまな種類があります。そうした清酒の多くはきれいな味で、酸味も控えめ。飲むお酒には味のバランスやキレのよさが重視され、余分な雑味のない味が好まれるからです。

タカラ「料理のための清酒」がおすすめです(写真:筆者撮影)

一方、料理用清酒はあまりコメを削らず、高めの温度で醸すなどすることで、清酒の世界では「雑味」と呼ばれるアミノ酸や有機酸を多く含んでいます。この雑味が料理ではいい働きをするので、料理用清酒がおすすめなのです。

「霜降り」でアクを抑えてクリアな味に

鶏肉は一口大に切り、2%重量の塩を振って、冷蔵庫で30分以上置きます。塩を振って下味をつけておくことで、鍋の具材として煮た後にもおいしく食べられるからです。

長ネギは白部分は3cmの長さに切り、青い部分は笹切りにします。

皮の脂がスープの味に厚みを与えるので、皮付きのもも肉を使います(写真:筆者撮影)

鍋にたっぷりの湯を沸かし、鶏肉をさっと表面だけ湯がきます。色が変わったら取り出し、鍋に移しましょう。

これは「霜降り」という作業で、手間ですがクリアな味わいをつくるために必要な工程です。この工程を踏むことで、後から鍋で煮るとき、出てくるアクが減ります。

そもそもアクとはなんでしょうか。動物性食品のアクは、水の中で加熱された筋肉や血液から出てきた鉄イオンを含むタンパク質が、脂質を取り囲んで対流によって浮いてくる物質を指します。アクにも味があるので取り除かないほうがよいとする意見もありますが、鍋料理の場合はダシの口当たりに影響するので、取り除くのが一般的です。

鍋料理のコツは、そもそもアクを出さないように下処理をしておくことです。今回は鶏肉を使っていますが、豚肉などほかの畜肉、あるいはタラやイカなど魚介類も一度霜降りすることで表面のタンパク質を洗い流しておくと、クリアな味わいに仕上がります。

土鍋を使っていますが、フタができる鍋であればなんでもかまいません(写真:筆者撮影)

鍋に霜降りした鶏肉、3cm長さに切った長ネギ、笹の葉状に切ったネギの青い部分を入れ、水と酒を加え、中火にかけます。沸騰したら弱火に落とし、15〜20分煮たら出来上がりです。

味の微調整は手元の調味料で

煮え立てがごちそうです(写真:筆者撮影)

煮上がったら、まず鶏肉とネギをポン酢で食べます。ゆずこしょうや七味などを添えるのもいいですし、ゴマ油+にんにくのすりおろし+塩で食べるのもおすすめです。

鶏肉から出たうま味を含んだスープには薄い塩味がついているはずですが、物足りなければ塩を足してください。ただ、鍋料理はあまり味を濃くしないのが、飽きずにおいしく食べるコツ。鍋に加えるのでなく、手元に塩を用意して、好みで加えるようにするのがいいでしょう。