神奈川県央「素通りされる駅」が大激変したワケ

神奈川県央の素通りされる駅が激変した理由とは?(筆者撮影)
海老名を変えた唯一無二の商業施設
海老名駅は、新宿駅から小田急小田原線快速急行で約45分。相模鉄道本線、JR相模線と合わせて3路線が乗り入れる神奈川県央の交通拠点である。
【画像】かつては「地味」「素通りされる」街だったが…変貌を遂げた街、海老名はこんな感じ
海老名駅の東口を出ると、遊園地のようにカラフルかつ巨大で、楽しそうな建物が見えてくる。2002年4月に小田急電鉄がオープンした商業施設「ビナウォーク」だ。この「ビナウォーク」こそ海老名を変えた商業施設である。

海老名駅東口にある商業施設「ビナウォーク」(筆者撮影)
休日の海老名駅前は、日本の少子化など嘘ではないかと思うほど子ども連れファミリーや若者があふれている。その賑わいは、「ビナウォーク」にも続いている。
まず目に入るのは、「ビナウォーク」の建物に囲まれている海老名中央公園だ。

「ビナウォーク」の建物に囲まれている海老名中央公園(筆者撮影)
海老名中央公園の所有者は海老名市だが、「ビナウォーク」と一体的に活用されている。中央のステージでイベントが開催されていたり、キッチンカーが並んでいたり、スケートリンクが設置されていたりと、「ここに来れば何か楽しいことがある」と感じさせる。
この公園とカラフルな外観による楽しい空間が、「ビナウォーク」の何よりの特徴だ。
幅広いテナントが集積し賑わう
「ビナウォーク」は1番館〜7番館・ビナプラス・ビナフロントの9つのエリアで構成され、核店舗の海老名マルイとシネコンのほか、飲食店や雑貨店など約130店舗が集積している。
1番館はダイソーや書店、食物販など主にデイリーユースのテナントで構成されている。2番館は居酒屋が軒を連ねる「呑み処ビナ横丁」。3番館は核店舗の海老名マルイが大部分を占め、4番館にはクリニックやサービステナントが入る。

駅から近く、デイリーユースのテナントが入る1番館(筆者撮影)

「呑み処ビナ横丁」のある2番館(筆者撮影)

主に核店舗のマルイがある3番館(筆者撮影)
5番館は面積が広く、ムラサキスポーツやキラキラドンキといった物販テナントから飲食まで幅広いラインナップだ。6番館はシネマや「ビナウォークら〜めん処」。7番館はマンションギャラリーとなっている。

多様なテナントがそろう5番館(筆者撮影)

シネマやゲームセンターがあり主に若者で賑わう6番館。奥は4番館(筆者撮影)
ビナプラスには飲食チェーンやカラオケがある。ビナフロントは他の棟と少し雰囲気の違う外観で、無印良品500やユニクロが出店している。

駅目の前のビナフロント(筆者撮影)
エリアによって差はあれど、休日となると「ビナウォーク」は多くの子ども連れファミリーや若者で活気に満ちている。
県央の新たな商業都市へ
「ビナウォーク」ができるまで、神奈川県央の商業の街といえば2駅隣、相模川を渡った先の本厚木だった。海老名駅はJR相模線、相鉄線、小田急線の3路線が乗り入れる交通結節点でありながら、周辺は田畑ばかりで、乗り換え拠点にすぎなかった。
「ビナウォーク」がオープンして1年が経過すると、「東京都町田市や横浜市などへの買い物客の流出を抑えるだけでなく、近隣地域からの集客に大きく貢献している」と報じられた(『日本経済新聞』04年8月3日)。海老名は県央の商業都市として仲間入りを果たしたのだ。
現在の本厚木駅前は多くの人々が行き交っているが、「本厚木ミロード」や「厚木ガーデンシティ(イオン厚木店)」などの商業施設館内の人通りは、「ビナウォーク」に比べると落ち着いている。駅前には居酒屋やカラオケ、パチンコが目立ち、雑多な繁華街という印象を受ける。

本厚木駅前の様子(筆者撮影)

駅前の「本厚木ミロード」(筆者撮影)
古くから栄えた本厚木の街並みも魅力的ではあるものの、海老名はまた違った雰囲気と店舗を持つ商業の街になったのである。
15年10月、海老名にさらなる転機が訪れた。「ららぽーと海老名」のオープンである。「ららぽーと海老名」によって、海老名は商業の街としての色を強めていく。

「ららぽーと海老名」が海老名を洗練した(筆者撮影)
「ららぽーと海老名」は4階建てで、フロアごとのゾーニングがはっきりとしている。1階はスーパーのロピアや食物販、無印良品、クリニックなど日常利用に便利なテナント中心だ。
2階はさすがのららぽーとといったラインナップで、ファッションが充実している。H&MやZARAといった外資系ファストファッションから、トミーヒルフィガー、カルバン・クライン、ポロ ラルフ ローレンなど高感度なテナントもそろう。
3階は比較的お手頃なファッションテナントやフードコート。4階はサービス・カルチャーテナントが多く、レストラン街もある。
「ビナウォーク」と違って屋内型のため、天候に関係なく買い物しやすい。館内動線もぐるりと1周するメイン通路にテナントが面するサーキット型で、わかりやすい造りだ。

「ららぽーと海老名」はサーキット型でわかりやすい。なお、Coming Soonと書かれた空き区画がいくつかあるのはリニューアル中のため(出典:「ららぽーと海老名」公式サイト)
外観や内装は白を基調としており、すっきりと洗練された印象を受ける。
加えて、海老名駅から「ららぽーと海老名」までの通路にも、「ビナガーデンズ テラス」「ビナガーデンズ パーチ」という高感度なカフェや食物販が集積した商業施設があり、東口は小洒落た空間になっている。

おしゃれな雰囲気が漂う「ビナガーデンズ テラス」(筆者撮影)
ビナウォークができたからこそ街が変わった
新しくできた「ららぽーと海老名」に比べ、誕生から24年経つ「ビナウォーク」にはいくつか弱点もある。
まず、棟が複数に分かれており動線が複雑なため、目的の店舗がどこにあるのかわかりにくい。屋外型のため天候に左右されやすく、雨の日や猛暑の日は買い回りしにくいだろう。

「ビナウォーク」の全体マップ。複雑な造りはブラブラと歩く楽しさを引き出している一方、わかりにくさもある(出典:「ビナウォーク」公式サイト)
「ららぽーと海老名」の誕生により、「ビナウォーク」の客足が流れた側面もある。「ビナウォーク」の核店舗である海老名マルイの各フロアには現在、1〜3つほどの空き区画が存在する。
それでも休日となると両施設が多くの人々でごった返し、海老名の街の勢いを感じる。
海老名駅3路線合計の1日あたりの乗車人員は01年度の約13万人から、コロナ禍前の18年度には約15.3万人にまで増加し、23年度は約13.4万人となっている。(『神奈川の統計』)
人口も21年1月には約11.8万人だったのが、26年1月には約14.2万人に増えている(海老名市『世帯数と人口(国勢調査に基づく推計人口)』)。
まさに商業施設が街を変えた
もし海老名駅前で最初に開発された商業施設がららぽーとであったら、はたまたシリーズ化された他の商業施設であったら、海老名はこれほど人気になっていなかったのではないか。
「海老名といえばビナウォーク」。個性的で唯一無二、かつ大きな公園を持つ「ビナウォーク」ができたからこそ、海老名の街は新たなブランドを獲得した。
まさに「商業施設が街を変えた」のである。