ハメネイ師殺害後のイラン 「軍事政権化」か「体制維持」か 不透明な指導部の行方

ハメネイ師殺害後のイラン 「軍事政権化」か「体制維持」か 不透明な指導部の行方
【AFP=時事】米国とイスラエルによるイラン攻撃の継続と最高指導者アリ・ハメネイ師殺害は、同国の指導部に不確実性をもたらした。
ドナルド・トランプ米大統領は、1月にピークを迎えたイランの聖職者指導部に対する大規模な抗議活動への支持を表明し、またイラン攻撃作戦終了後には、イラン国民が権力を掌握するよう促している。全国規模に拡大した抗議活動では、体制側による厳しい弾圧が行われた。

ハメネイ師殺害後のイラン 「軍事政権化」か「体制維持」か 不透明な指導部の行方
■現状の継続
「現在、国は『厳しく統制されている』ようだ」と地中海戦略研究財団のピエール・ラズー代表は語る。イラン当局は大学を閉鎖したほか、都市に治安部隊を配備し、インターネットを遮断した。
「抗議デモを防ぐためにあらゆる手段が講じられている。市民が抑圧的な装置、つまり60万人のバシジ(志願準軍事組織)と25万人の国内治安部隊が無力化されたと確信しない限り、再び街頭に出ることはないだろう」と指摘した。

ハメネイ師殺害後のイラン 「軍事政権化」か「体制維持」か 不透明な指導部の行方
ラズー氏はAFPに対し、イランの政治システムには最高指導者の後継手続きが存在し、指導者の排除が直ちにシステムの終焉(しゅうえん)を意味するわけではないと言い、「この体制には多くの権力中枢が存在し、代替機能が幾重にも備わっている」とした。

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また「体制の継続が新しいルールのもとで行われる可能性があり、聖職者に不利になるかもしれないが、同じ人々が権力を握り続ける」との見方を示した。
グルノーブル政治学院の研究者テオ・ネンチーニ氏も「新しい最高指導者の選択が体制の方向性を完全に左右する」と述べている。
ベネズエラでは1月、米軍がニコラス・マドゥロ大統領を拘束した後、副大統領のデルシー・ロドリゲス氏がトランプ氏の支持を受けて政権を維持。米政府への譲歩と引き換えに体制を存続させた。
フランス系イラン人社会学者のアザデ・キアン氏は、ラジオ放送局フランス・アンフォに対し、トランプ氏が「体制内のより穏健な派閥との間で、何らかの合意を図ろうとしている可能性がある」と推測した。
キアン氏はまた、ハメネイ師の殺害は「革命防衛隊と文民指導部の間で権力の輪の中に重大な対立を生じさせる可能性がある」とも指摘したが、「しかし現時点では、彼らは体制を維持するために協力している」と続けた。
■イラン革命防衛隊の時代か?
ラズー氏は「代替案はパスダラン、つまりイラン革命防衛隊による掌握だ」と話す。
指揮官のモハンマド・パクプール氏は2月28日の攻撃で殺害されたものの、IRGCは非常に組織化された部隊であり、イラン社会、政治、経済において大きな影響力を持ち続けている。
これについてネンチーニ氏は「実際には、革命防衛隊に有利な権力の再均衡はすでに近年進行している」と指摘。
「IRGCの指導の下で行われる、より軍事化された体制への移行については可能性がある。現在のシーア派宗教の枠組みを持たない、より通常の軍事体制だ。ただし、宗教的な外観を完全に排除することは想像しにくい」とも付け加えた。
■「正規軍」
英国のシンクタンク国際戦略研究所による「ミリタリーバランス2026」によれば、イラン軍の兵力は35万人だ。この正規軍についてネンチーニ氏は「現在は政治的な影響力を持っていないが、革命防衛隊とは異なる政治的な方向性を選択すれば、将来的にはその役割を果たす可能性がある」と指摘した。
こうした意見にラズー氏も、イラン軍が「鍵の一つを握っている可能性があり、その立場は国民、指導部、革命防衛隊に対して重要になる」と述べた。
ただ「その意図を示す兆候はない。現時点では国を防衛し、損害を最小限に抑えることに忙殺されている」とも付け加えた。
■分裂した反体制派
イラン国内の反体制派は抑圧され、投獄されている。2023年ノーベル平和賞受賞者ナルゲス・モハンマディさんの拘束がその例だ。また、亡命中の反体制運動は長い間分裂している。
ネンチーニ氏は、1979年のイラン革命(イスラム革命)で退位に追い込まれた故パーレビ国王の息子で、米国で亡命生活を続けるレザ・パーレビ元皇太子について「西側メディアによって推進されている」が、イラン国内におけるパーレビ氏への信頼性は不明と指摘した。
しかし、国内には将来的に行動を起こし得る広範な反対勢力が存在するとキアン氏は言う。あわせて、クルド人やバルチ人といった少数民族の間で権利主張や自治を求める動きが表面化している点にも言及した。
一方、これらのグループが実際に影響力を持つには「連合を形成する必要がある」と強調し、また少数民族がパーレビ氏への従属を受け入れることもないとの見方を示した。
さらにパーレビ氏には「政権を掌握するために必要な組織基盤や統治機構が欠落している」とも付け加えた。(c)AFP/Fabien Zamora
【翻訳編集】AFPBB News