【特集】さみしく空腹だった幼少時代の経験もとに…ひとり親家庭を支援する元ヤンキー社長 家族を愛し愛される父親が届けたい温かい食事の時間
大阪にある食品加工会社『グローフーズ』の社長・井ノ元豊さん。今でこそ家族に愛される優しい父親ですが、少年時代は学校の給食1食で終わる日もあるなど、“さみしくひもじい”日々を過ごしていました。不良少年だった時期もあったといいますが、その経験が今、ひとり親の家庭に自社の食品を届ける取り組みにつながっています。“元ヤンキー”社長の熱い想いを取材しました。
■目玉商品は『とんこつプリン』従業員らと和気あいあい

大阪・泉大津市『グローフーズ』 ©ytv
大阪・泉大津市にある食品加工会社『グローフーズ』。こちらの会社では、おせちを年間19万6000個作っています。

従業員に気軽に声をかけていく ©ytv
ちょっと強面の社長・井ノ元豊さん(48)が、従業員に気軽に声をかけて行きます。
(『グローフーズ』社長・井ノ元豊さん)
「おつかれさま」
(従業員)
「おつかれさまです~」
(井ノ元さん)
「声が小さいな(笑)恥ずかしいんか?」
(従業員)
「からまんといて(笑)言うたやん、“事務所を通して”って」
(井ノ元さん)
「敬語を教えたってくれ(笑)」
(別の従業員)
「ちょっと難しいです(笑)」
従業員によると、井ノ元さんは人の心をつかむのがとても上手で、とにかく人のことを思ってくれる人物だといいます。

愛される『とんこつプリン』 ©ytv
(井ノ元さん)
「『おもしろいを食卓に』を企業理念に掲げている会社なので、面白いと思ってもらえる商品を一個作ろうと思ったときに、これになりました」
それが、牛乳と卵の他にとんこつスープが練りこまれている『とんこつプリン』です。この意外な組み合わせのスイーツは、自販機にまで置かれ、愛され続ける商品になりました。

ひとり親家庭に向け『商品モニター』を募集 ©ytv
そんな井ノ元さんが、2025年から取り組んできたことがあります。それは、一年間に6回、10家族にグローフーズの食品を送ることです。応募の条件としては『ひとり親家庭であること』『食べてアンケートに答えること』などです。全国から798件の応募があり、井ノ元さんはスタッフとともに選考を始めました。
(井ノ元さん)
「直感的に、家族構成と文章を読んで思い浮かべて、この人に食べてほしいなとか。途中で泣いてしまう場合もあるから、ハンカチを出しているほうがいいと思うわ(笑)」

応募理由を読み、涙が溢れる ©ytv
一つ一つ丁寧に、応募理由に目を通します。
(井ノ元さん)
「……これ、絶対に採用でいいですか?」
井ノ元さんが涙をこらえきれなくなった、その理由とは…?
■「家に母はいなくて、食事もなくて…」飢えていた少年時代

井ノ元さんの家族 ©ytv
4人きょうだいの長男として、大阪の下町に生まれた井ノ元さん。父親はトラックの運転手、母親は水商売をしていました。
(井ノ元さん)
「小学生の時に(両親が)離婚して、母親と一緒に暮らしている時が一番、貧しかったです。母親は夜に働きに行き、お酒を飲んで明け方に帰ってきて、お昼過ぎ・夕方前に起きて、用事して出ていく。その時は卵1個を(きょうだい)4人で分けて食べました。学校から帰ってきても家に母はいなくて、食事もなくて、食べるものがなかったら学校の給食1食だけ。さみしさと空腹のひもじさ…いろんなことに飢えていました」

一時は不良の道へ走ったことも… ©ytv
しかし、母は突然いなくなり、父親のもとへ行くことになりました。中学時代は不良少年になり、バイクの暴走行為に明け暮れていたといいます。
そんな中学の卒業間近…。
(井ノ元さん)
「家の裏に神社があって、そこのベンチで将来について考えました。いろいろ考えたんですけど、アホですから(笑)社長になることだけ決めよう、それだけ決めたらいいわ、と」

昔の井ノ元さん ©ytv
中学を出てすぐに働き始めましたが、その夢は捨てきれず、34歳の時に食肉を中心とした食品加工会社を立ち上げました。従業員80人・年商10億円にまで会社が成長した今、かねてから心に留めていた想いが『ひとり親支援』につながりました。
■応募の理由に涙…14家族にローストビーフを配送

スタッフらと丁寧に選考していく ©ytv
(2人の子どもの父親から応募/一部抜粋)
『妻が数年前に病で他界し、今は小学生と中学生の子ども2人を抱えている父親です。成長盛りの子どもたちにお弁当を毎日作り、日々奮闘しております』
(選考に参加したスタッフ)
「弁当を毎日作るとかね…」
(井ノ元さん)
「俺、お父さんに弁当を作ってもらった時があるから…めっちゃうまかったんですよ」

病気と闘う母親からの応募理由に涙 ©ytv
(3人の子どもの母親から応募/一部抜粋)
『去年しこりを見つけて検査すると、あれよあれよという間に脇リンパ転移も見つかり、即、抗がん剤開始。子どもたちは、冬休みも春休みも特に面白いこともなく過ごしていますが、文句は何も言いません。私自身、利き手のリンパをごそっと取ったので、調理もなかなかしんどいものがあります。子どもたちと、この先を笑って生き抜いていくために…』
(井ノ元さん)
「『もし企画に当選したら、子どもたち、きっとびっくりして、食いついてくれると思います』……これ、絶対に採用でいいですか?」

10家族の予定が14家族に ©ytv
そして、当初は10家族のつもりでしたが…。
(井ノ元さん)
「むちゃくちゃ困っているんだろうなと。病気になったお母さんの話とか、そういうのを見ると、10件だけでは絞れない。“どうしても”というのを増やしたら、14件に増えてしまいました」

食卓を囲む山田さん親子 ©ytv
まず1回目の食品として、主力商品の『ローストビーフ』を配送することにしました。受け取ったのは京都市に住む山田さん親子、お父さんと高校生の娘・優愛さんです。ローストビーフは早速サラダに添えて、食卓を彩ります。
(娘・優愛さん)
「おいしい!サラダと、めっちゃ相性が良い。味がちゃんとしていて、おいしい」
(お父さん)
「むちゃくちゃ柔らかい!」
■子ども食堂も支援 肉の端材などを自ら飲食店へ届ける

自ら運転して子ども食堂の支援へ ©ytv
井ノ元さんは、子ども食堂の支援にも力を注いでいます。加工の際に出た肉の端材などを届けるため、社長自ら運転して店に向かいます。今回向かったのは、大阪市西成区の飲食店『火の鳥』です。
(井ノ元さん)
「ロース・牛タン・角煮、お肉系いろいろ。料理アレンジして、またおいしく使ってください」
(『火の鳥』従業員)
「いつもありがとうございます、助かります~!」

肉の端材がおいしい弁当に ©ytv
店では、肉の端材を調理して、弁当にします。
(女の子)
「こんにちは~」
(『火の鳥』従業員)
「こんにちは~!偉いですね。はい、どうぞ」
(女の子)
「どうもありがとうございます!」
弁当を取りにやって来た礼儀正しい女の子に、話を聞いてみました。
Q.きょうだいは、いる?
(女の子)
「はい」
Q.一人で食べるの?分けるの?
(女の子)
「(頷いて)さようなら~」
家では、きょうだい3人で分けて食べるそうです。その後も、幼い子どもを連れた母親らが店を訪れていました。

『火の鳥』竹内秀樹代表 ©ytv
(『火の鳥』竹内秀樹代表)
「めちゃめちゃ助かります。おいしいし、子どもらも幸せじゃないですかね」
■子どもの頃にできなかった家族団らん…家族に愛される父親の一面も

長男・雄斗さん「欠点ない」 ©ytv
親になり、母の大変さがわかるようになった今、井ノ元さんは一家で食卓を囲む時間を何より大事にしています。
(長男・雄斗さん)
「仕事は、めっちゃ真面目で、めっちゃ本気。家にいるときは、ふざけて。欠点ある?ないんじゃないんですかね」

妻・由美子さん「めちゃくちゃ優しい」 ©ytv
(妻・由美子さん)
「めちゃくちゃ優しいです。見た目は、昔はめっちゃ怖かったんですけど(笑)今は優しい顔になって。一番楽しい時間かな、家族でいる時間が」
(井ノ元さん)
「マジで?ここ一番で、ディスられるんじゃないかと思っていた(笑)」
■「社会貢献というより…」やってみて気づいた過去への癒し

おせち作りに大忙し ©ytv
年末を控え、工場はおせち作りに大忙し。この中から14セットが、ひとり親家庭に送られます。

食卓を囲む田崎さん親子 ©ytv
包装されたおせちは、福岡市に住む田崎弘美さん親子のもとに届いていました。田崎さんは4人の子どものお母さんで、クリニックで看護師として働いているそうです。
(田崎弘美さん)
「うわ~、すごい!」
(娘・愛梨さん)
「豪華!」
(娘・優奈さん)
「お肉おいしいです」
(田崎さん)
「本当に、ありがたいです。次も楽しみです。家族みんなで楽しみにして、おいしくいただいています」
井ノ元さんの想いは、届いたようです。

あの頃の自分に届いているような… ©ytv
(井ノ元さん)
「やってみて気づいたんですけど、あの頃の自分を慰められているような気がしています。社会貢献というより、さみしくておなかがすいていた頃の自分に届いているような気が、今はしています」

支援の輪を広げたい…井ノ元さんの想い ©ytv
(井ノ元さん)
「どんな方法があるかわかりませんが、賛同してくれる仲間を集めて、もっと広く、いろんなところに支援ができたらと思います」
井ノ元さんの熱い想いに、支援の輪は広がっていくに違いありません。
(「かんさい情報ネットten.」2026年2月13日放送)