「モバイルバッテリー」発火事故から守る鉄則6つ

年間約1000件の火災が発生, 「落とした・曲がった」は即アウト, 充電する場所にも気をつけて, 発火したら“水”をかけていいか?, 機内モバイルバッテリー禁止の真相, 「危険物を持っている」意識を

モバイルバッテリーを安全に使うためのポイントを紹介します(写真:NorGal/PIXTA)

モバイルバッテリーの火災事故が、連日報道されています。電車の中で火災が発生したり、ポケットに入れていたモバイルバッテリーが煙を吹いたりと、何かと物騒です。

【図で見る】スマホバッテリー火災の実態

年間約1000件の火災が発生

実際、モバイルバッテリーやスマホ、パソコン、ハンディファン(携帯扇風機)、ワイヤレスイヤホンなどに使われているリチウムイオン電池による火災は、急増しています。

2026年1月に発表された消防庁の報道資料によれば、2024年には全国で982件のリチウムイオン電池による火災が発生し、その数は2023年の1.3倍。そのうちモバイルバッテリーからの出火が、290件と事故の3割を占めています。

年間約1000件の火災が発生, 「落とした・曲がった」は即アウト, 充電する場所にも気をつけて, 発火したら“水”をかけていいか?, 機内モバイルバッテリー禁止の真相, 「危険物を持っている」意識を

消防庁の報道資料より

人によっても違いますが、スマホの使用頻度が増えて1回の充電だけでは半日と持たないなか、モバイルバッテリーに頼る人も多いと思います。

そこで本稿では、予防策や安全対策を紹介します。また、ここではモバイルバッテリーに言及していますが、スマホなどリチウムイオン電池が内蔵されている電気機器についても同様と考えてください。

「落とした・曲がった」は即アウト

まず、モバイルバッテリーを落とした場合、外側のケースが割れていたら即、使用中止です。落下の衝撃で内部に入っているリチウムイオン電池が変形したり、電池内部にある絶縁体が損傷したり、電池の制御用(保護や充電をする)回路が破損したりしているおそれがあるからです。

ズボンのポケットやカバンの中に入れて曲がってしまったモバイルバッテリーも同様、即使用を中止してください。

内部の電池や回路が曲がったり損傷したりしているモバイルバッテリーをそのまま使い続けると、内部の回路がショートして自然発火をもたらすほか、電極を分けている紙のように薄いセパレーターという部分が損傷すれば、充電や利用時に急激に異常発熱が生じたりするおそれがあります。

怖いのは、ショートした熱で発生したガスに引火することで、大規模火災の原因につながることです。

モバイルバッテリーを水没させてしまった場合も、使用はすぐに中止すべきです。速やかに自ら引き上げて、電源が入っているようならすぐに電源を切ります。

塩素を含んでいる水(水道水)は、電気を通します。そのためモバイルバッテリーの内部に水が入ると、本来、流れるはずの電気の通り道以外の場所で電気が流れ、正常な動作ができなくなってしまうのです。そのまま使い続ければ、発火したり異常発熱の原因となったりします。

長年使い続けているモバイルバッテリーにも要注意です。

昭和・平成生まれの人はガラケーの電池で経験されたこともあると思いますが、リチウムイオン電池は、経年劣化によって内部に水素などのガスが溜まり、膨らむことがあります。

モバイルバッテリーの使用期間のおおよその目安は3年ですが、そこまで時間が経っていなくても次のような場合は使用を中止してください。そのまま使い続けると、電池が破裂したり、破裂により回路ショートして発火・発煙したりするおそれがあります。

・机に置くとゆがんで安定しない

・一部が膨らんでいる

・ケースの一部に亀裂が入っている

モバイルバッテリーの劣化の原因の1つに、充電ケーブルの質の問題があります。

見分け方が非常に難しいので、購入前に「どのケーブルがダメ」とはっきり言えませんが、次のようなケーブルは即利用を中断したほうがいいでしょう。これらの問題があるケーブルを使い続けると、ケーブルやモバイルバッテリーのコネクタがショートしたり、ケーブルが発熱して異臭や発火の原因になったりします。

・スマホを充電するとケーブルが温かくなる(「熱い」は破棄)

・スマホを充電するとコネクタの根元が温くなる(「熱い」は破棄)

・コネクタの根元の被膜が切れて中のケーブルが見える

・微妙な角度でコネクタを差し込まないと充電できない

ケーブル選びは、まざに「ガチャ」です。少しでもハズレを引かないようにする一手は、信頼できる家電量販店や、家電量販店が運営しているネットショップで、店員のアドバイスを元に購入するしかありません。

充電する場所にも気をつけて

夜、ベッドサイド(あるいは布団の横)でモバイルバッテリーを充電しながら、またモバイルバッテリーでスマホを充電しなら就寝し、朝起きたら布団の中にモバイルバッテリーがあった……そんな“充電あるある”ですが、とても危険です。

布団の中でモバイルバッテリーを使うと、発生する熱がうまく放散されないため、異常高温になりやすく、発火しやすい環境となります。また、万が一、発火した場合も、燃えやすいものが近くにあると、火事の危険が出てきます。

放熱を妨げるのはなにも布団の中だけではありません。強い日光が当たる場所(窓際)や、暖房機器の近くなどの暖かい場所も同様です。こういった場所では、充電をしないようにしてください。同じく、モバイルバッテリーを放置するのも避けたいところです。

放置といえば、モバイルバッテリーを真夏の車内に置き忘れることだけは、絶対にやってはいけません。

モバイルバッテリーで使われているリチウムイオン電池の内部には、シンナーのような可燃性の液体が使われています。車内に放置しておくと、内部の温度が上昇するのとともに化学反応が加速して、液体が気化します。その結果、バッテリーが膨張して、暴発のおそれが出てきます。

これらをまとめると、モバイルバッテリーを安全に使う6つの鉄則は、以下のようになります。

・衝撃に注意(落とさない、ぶつけない)

・濡らさない

・曲げない

・布団の中や上、日光が当たるところ、冷房がきいていない夏の車内では充電しない、放置しない

・異常があったらすぐに使用をやめる

・ケーブルは信頼できるものを使用する

年間約1000件の火災が発生, 「落とした・曲がった」は即アウト, 充電する場所にも気をつけて, 発火したら“水”をかけていいか?, 機内モバイルバッテリー禁止の真相, 「危険物を持っている」意識を

消防庁の報道資料より

万が一、モバイルバッテリーから発熱・発火・発煙したら、どうしたらいいでしょうか。

発火したら“水”をかけていいか?

独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)や東京消防庁によると、まず、熱を持ったモバイルバッテリーは水を入れた鍋やバケツなどに水没させることを勧めています。熱すぎる場合は直接、触らず、厚手のタオルやトングなどでつかむとよいようです。

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NITEウェブサイトより

発火してしまったら、かなりの火の勢いになるので、まずは安全な場所に逃げて自身の安全を確保します。火の勢いが収まってきたら、先と同じように水没させるか、水道水をかけっぱなしにするなどして火を消し、熱を冷まします。

この際、有毒なガスも出るため、吸い込まないように注意してください。

落ち着いたら最寄りの消防に連絡したほうがいいでしょう。なお、発熱・発火したモバイルバッテリーはしばらくは熱を持っています。完全に熱がとれるまではそのままにしておいてください(燃えるものの近くに置いておくと、そこから火災が発生するおそれがあります)。

機内モバイルバッテリー禁止の真相

モバイルバッテリーは、衝撃や水に弱く、発火しやすい特性があります。航空機への持ち込み規制や手荷物預けの禁止、新幹線や通勤電車での発火事故など、多数が報告されています。

こうしたことを受けて、2026年4月中旬から国際的にモバイルバッテリーの機内持ち込み基準が改正されます。国土交通省の発表によれば、従来からのモバイルバッテリーやリチウムイオン電池を預け荷物にできないほか、次のような制限が追加されます。

・機内持ち込み可能なモバイルバッテリーは2個まで、合計で容量160Wh(4万3243mAh相当)以下に限る

・航空機内でモバイルバッテリーへの充電を行わない

・航空機内においてモバイルバッテリーから他の電子機器への充電をしない

アメリカやヨーロッパ便などの長距離便でパソコンを使う人は、特に注意が必要です。

パソコンのバッテリーが切れたら、持ち込んだモバイルバッテリーを使って充電するのは禁止となります。また最近は、機内エンターテインメントシステムを座席の前のディスプレイではなく、スマホで楽しめるようになっている場合もあります。スマホのバッテリー切れを起こしやすいですが、モバイルバッテリーで充電するのも禁止となります。

施行前なので、座席のコンセントからUSB ACアダプタを使ってパソコンやスマートフォンへの充電はできるのか? また座席のUSBコネクタから充電はOKか? など不明点も残ります。

エアラインによっても判断や運用が異なる場合もあるので、搭乗前に問い合わせてからにするといいでしょう。これは国内エアラインだけでなく、世界各国のエアラインに適用される点に注意してください。

あまり知られていませんが、モバイルバッテリーを普通ゴミとして廃棄してしまったために、ゴミ収集車の中や処理施設で発火した事故も多数報告されています。

電池寿命があるなしにかかわらず、使わなくなったモバイルバッテリーや、リチウムイオン電池を内蔵したハンディファンやワイヤレスイヤホン、デジタルデバイスなどは、絶対に普通ゴミとして処理せず、次のように対応してください。

充電残量がある場合は、可能な限りスマホなどを充電して残量なしにして廃棄します。

・地方自治体の指示がある場合は、優先してそれに従う

・家電量販店などの「小型充電式電池リサイクルボックス」に入れる

・スマートフォンのキャリア(ドコモやau、ソフトバンクなど)での回収サービスを利用する

・モバイルバッテリーメーカーの回収サービスを利用する

電気自動車や航空機では、発火や爆発を前提としてリチウムイオン電池を頑丈で密閉した金属ケースに入れています。モバイルバッテリーは容量が少ないので、そこまでする必要がありませんが、気になる方はモバイルバッテリー用の暴発防止ケースを利用するのもよいでしょう。

モバイルバッテリーは、必需品なので使わないわけにはいきません。

しかし、現在、モバイルバッテリーに使われているリチウムイオン電池は、軽くて大容量という便利さと裏腹に、エネルギー密度が高く小型の危険物といっても過言ではありません。

「危険物を持っている」意識を

あと数年もすれば、発火性の有機溶剤を使わない「全固体電池」が登場します。それまでモバイルバッテリーは、小型の危険物を持ち歩いているという意識でいたほうがよいでしょう。