ラーメン290円で49年「変わらぬ価格と味」の凄さ

49年変わらぬ価格を守る「博多ラーメン はかたや」, 1分32秒で出てくるラーメン, 軽やかなスープと、止まらない細麺, 替え玉と、多様な客層, 「しっかりしてよ、毎日食べに行きたいんやけん」, 変わらない一杯が、ここにある

49年もの間守り継がれ、地元民に愛され続けてきた「290円ラーメン」とは…!?(筆者撮影)

※読者の反響が大きかった記事を再配信します。本稿は2025年12月12日に公開した記事を再配信したものです。

49年変わらぬ価格を守る「博多ラーメン はかたや」

ラーメン一杯290円(税込)。300円でお釣りがくる。

お昼にサクッと、仕事帰りも飲んだ後も、朝の出勤前にも、いつでも迎えてくれるラーメン店がある。

福岡への出張が決まったら、ぜひ立ち寄ってほしい。1976年創業、福岡県内に9店舗を展開する「博多ラーメン はかたや」だ。

物価高が叫ばれるなか、創業から49年変わらぬ価格を守り続けてきたこのラーメンは、博多民のソウルフード。子どもからお年寄りまで、誰もが気軽に食べられる日常の一杯だ。

国道3号線沿いに立つ「博多ラーメン はかたや 堅粕店」は、今日も変わらず24時間営業中。

車を降りると、ふわっと豚骨スープの匂いがした。

遅めの昼食を終えたタクシー運転手、常連のご夫婦、自転車で現れた外国人、制服姿の学生。14台停められる駐車場には、ひっきりなしに車が出入りする。平日15時前、客足が途切れる気配はない。「やっと仕事が落ち着いたから」と店から出てきたスーツ姿の男性は、昔から仕事の合間に通っているという。転勤で福岡を離れていたが、戻ってきてまた通うようになった。「いつ来ても多いです。変わらないですね、ここは」。

【画像を見る】一杯290円で食べられる博多ラーメンはこんな感じ。
※外部配信先では画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください
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年中無休の24時間営業は堅粕店と川端店の2店舗(筆者撮影)

1分32秒で出てくるラーメン

引き戸を引いて店に入ると「いらっしゃいませー」と元気な声が響く。横に長い店内は、厨房から真っ直ぐに伸びる通路を囲むコの字型のカウンター席が26席並ぶ。お昼のピークを過ぎた15時過ぎの店内にも、10名ほどの客がいた。

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細長いコの字型のカウンター席(筆者撮影)

入り口の券売機に1000円札を入れる。堅粕店の店長・山中さんによると、人気のトッピングは「煮たまご(120円)」や「チャーシュー(100円)」とのこと。

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入り口すぐにある券売機(筆者撮影)

博多ラーメン290円のボタンを押し、トッピングにきくらげ具50円、おつまみに酢もやし130円を追加。全部で470円。ワンコインで遅めのランチだ。

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財布に小銭しかなくても食べられる手軽さがありがたい(筆者撮影)

セルフの水とレンゲを準備して席に着くとスタッフが食券を取りに来てくれる。「麺の硬さは?」と聞かれ、「普通で」と答える。水を飲んでひと息つくと、酢もやしときくらげ具が運ばれてきた。

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シャキシャキと食べ応えのある「酢もやし(130円)」でお口さっぱり(筆者撮影)

そして1分32秒後、「ラーメンです」。

ハンバーガー店で呼び出しを待つより速い。ファストフードより、ファスト。その圧倒的な速さに驚く。

席に着いてレンゲや水を取りに行く時間は、出来立てラーメンを食べるうえでのタイムロスとなる。食券を買ったら、レンゲと水を準備してから席に着こう。

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一杯290円の「博多ラーメン」(筆者撮影)

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別皿で出してもらったトッピングのきくらげ具(50円)をのせる。コリコリ食感が細麺に合う(筆者撮影)

軽やかなスープと、止まらない細麺

青ネギとチャーシュー2枚がのったシンプルな一杯をいただく。透明感のある豚骨スープに、自社工場で作られた1.28mmの細麺がゆったりと浸かっている。

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澄んだスープ(筆者撮影)

さらっとしているスープは口に含むと、すっと喉元を通る。「濃厚」ではなく「軽やか」な口当たり。臭みはなく、豚骨スープのうまみを感じる。


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自社工場で作られた1.28mmの細麺(筆者撮影)

麺をすくい上げ、ズズズッ、ズズズッとすする。豚骨の香りがふわっと鼻に抜ける。まるで、そうめんをすする感覚だ。スープの絡んだ細麺をサッと噛んで飲み込んでいく。喉越しの良い細麺はリズムを生み出す。

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薄切りのチャーシュー(筆者撮影)

薄切りの柔らかなチャーシューは、麺やスープを邪魔しない。豚のうまみを感じて、また麺に向かう。ほどよく盛られた青ネギは、スープと麺のアクセント。多くの客が添えていた紅生姜と白ごまを加えると、味に奥行きが生まれる。

シンプルな一杯だからこそ、自分好みの食べ方を探究することができそうだ。止まることなく、一気に食べ終えた。

替え玉と、多様な客層

静かな店内のあちらこちらから、ズズズッ、ズズズッと音が聞こえてくる。
BGMのない店内に響くのは、スタッフの元気な声とカウンターに肩を並べる客たちが、黙々とラーメンに向かう音。ここなら遠慮することなく、思いっきり麺をすすれる。

ラーメンに続き、チャーシュー麺やラーメン定食を頼む客もいた。


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ライス・餃子4つ・ラーメンがセットになった「ラーメン定食」は580円(筆者撮影)

一番驚いたのは、ほとんどの客が替え玉を注文していたことだ。100円で追加できる替え玉は、大盛りではなく「麺が伸びる前に美味しい状態で食べられる」スタイルとして定着している。

ささっと一杯目を食べ終え、「替え玉」という声が上がる。

もうひとつ気になったのは、多くのひとが「カタで」と硬めの麺を希望していたことだ。硬めに茹で上げた麺「カタ」は、15秒で茹で上がるそうだ。

出張や仕事の隙間時間にサッと立ち寄れるのもうれしい。


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食べ盛りの学生は替え玉を3杯。調味料棚に立てかけたスマホで動画を見ながら、ラーメンをすすっていた(筆者撮影)

黙々とラーメンを食べて出ていくひと、スマホを見ながら一杯を味わうひと。通路を挟んで向かいのカウンターに座ったおばあちゃんと目が合うとニコッと笑ってくれた。食券を受け取りに来たスタッフに慣れた感じで「やわで」と声をかけている。


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隣に並んだ外国人ふたりは慣れた手つきで、紅生姜と白ごまをたっぷりかけていた(筆者撮影)

学校帰りの学生、遅めの昼食をとるビジネスマン、カップル、夫婦、外国人、ひとりで来るおばあちゃん、おじいちゃん。客層は実に幅広い。

はかたやのラーメンは特別な食事ではなく、地域の人々の日常に溶け込む一杯なのだ。


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はかたやのメニュー(筆者撮影)

「しっかりしてよ、毎日食べに行きたいんやけん」

営業統括部長の野村一美さんは言う。

「社員である私もびっくりするんです。290円ってすごいなって。コーヒーより、ケーキより安くラーメンが食べられる」

多くのラーメン店が値上げするなか、創業以来の価格を維持していることが、根強い人気につながっているという。

「お客様から『ありがとう』と感謝の電話をいただくこともあります。一方で、『しっかりしてよ、毎日食べに行きたいんやけん』と愛情のこもった厳しいご意見もいただきます。そう言っていただけるのが、ありがたいですよね」

「子どもたちも300円握りしめて食べに来てくれますよ。波はあるけれど、一日平均で1200人のお客様に利用していただいているんです」

カウンター26席のコンパクトなお店で、1200人もの客をどのように迎えているのだろうか。

「調理工程がシンプルなので、専門的な技術を持つ職人でなくても調理が可能なんです。それが価格を抑えることにもつながっています。麺を茹でてる間にどんぶりの準備もして、お客さんにすぐ提供できるようにコの字カウンターにするなど、オペレーションを効率化しています」と野村さん。

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注文を受けると同時に麺を茹で始める。硬麺は15秒、普通麺は1分と決まっている(筆者撮影)

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湯切りは湯の自重に任せて効率化。その間にどんぶりにスープの調味料を入れる。調味料は計量スプーン1杯ずつ、スープもお玉一杯と、ラーメンを作る工程はとてもシンプル(筆者撮影)

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調味料の入ったどんぶりに茹で上がった麺を入れスープを注ぎ、麺を整えたら、青ネギとチャーシューを盛り付ける。スタッフが一度に運べるラーメンは2杯。出来立てのおいしい状態をすぐに届けられるよう2杯ずつ作る(筆者撮影)

さらっとした軽めの豚骨スープは、早朝は仕事終わりのドライバーや「朝ラー」を楽しむ客、夜間は飲んだ後の締めに利用する客、「おやつ感覚」で気軽に立ち寄る客と、時間を問わず愛されている。


変わらない一杯が、ここにある

17時を過ぎた頃、子どもの手を引くお母さんが店に入ってきた。厨房の向かいのカウンターに肩を並べ、餃子とラーメンを食べる。

変わらぬ一杯を求める人々の一日が交差する場所、「博多ラーメン はかたや」。

街が変わり、時代が変わっても、今日も変わらずここにある。

49年変わらぬ価格を守る「博多ラーメン はかたや」, 1分32秒で出てくるラーメン, 軽やかなスープと、止まらない細麺, 替え玉と、多様な客層, 「しっかりしてよ、毎日食べに行きたいんやけん」, 変わらない一杯が、ここにある

(筆者撮影)

49年変わらないラーメン一杯290円は、どのように実現されているのか。

後編では、「博多ラーメン はかたや」を経営する昭和食品工業の澄川社長に、創業から守り抜いてきた価格の裏側、そこにかける想いを伺う。

後編:「49年ずっと290円」激安ラーメンチェーンが値上げしないのに「売上は右肩上がり」の訳→社長が語る《味は引き、手間は足す》驚きの経営論