25m²激狭ハウスに住んで知った「終の棲家」の条件

広い家が快適とは限らない理由, 我が家に必要なのは10畳分の空間, 老いじたくには、水回りの動線が重要, 今の家を「終の住処」と決めつけなくてもいい

結婚して3軒目、築50年・30m²の部屋のキッチン。築50年以上でボロボロすぎたので、業務用流し台とメタルラックを組み合わせて造作した(筆者撮影)

ロスジェネ世代で職歴ほぼなし。29歳で交通事故にあい、晩婚した夫はスキルス性胃がん(ステージ4)で闘病中。でも、私の人生はこんなにも楽しい。なぜなら、小さく暮らすコツを知っているから。
先が見えない時代でも、毎日を機嫌よく、好きなものにだけ囲まれたコンパクトライフを送る筆者の徒然日記です。

前編では、6畳1K・25m²というかなりコンパクトな住まいで、夫婦2人と中型犬が暮らしている我が家の実情をお伝えしました。そのうえで今回は、セカンドライフ(老後の住居)に必要な住まいの広さについて考えてみたいと思います。

【画像12枚】「この狭さで2人暮らしできるのか…?」 度々批判を集める、筆者の住まい(25㎡)はこんな感じ

いろいろ試行錯誤した結果、我が家としては「35〜40m²」が目安ではないかという結論にたどり着きました。50代の現在なら、がんばれば25m²でも生活は回るけれど、余白がありません。だからといって家が広すぎると、掃除や管理の手間が増えるだけでなく、部屋ごとの温度差も大きくなり、冬場はヒートショックのリスクも高まります。

広い家が快適とは限らない理由

広い家が快適とは限らない理由, 我が家に必要なのは10畳分の空間, 老いじたくには、水回りの動線が重要, 今の家を「終の住処」と決めつけなくてもいい

50m²の家を2DKから1Rにリノベーション。開放的で暮らしやすいが、寒くて暑い(光熱費がすごいことに)(筆者撮影)

広い家は一見ゆとりがあるようでいて、使いきれない空間が負担になることも。掃除やメンテナンスの手間がかかるだけでなく、冷暖房の効率も悪く、光熱費もかさみがち。移動距離が長くなることで、日々の動作ひとつひとつが負担になっていくのも見過ごせません。

2階建て3階建ての家に住んでいる人が年をとると、階段の上り下りが大変で、下の階だけで暮らしているとか、普段使っていない部屋は物置になってしまい、足の踏み場もないというのもよく聞く話です。

広さは本来、快適さの象徴だったはずです。しかしセカンドライフにおいては、逆に住みづらさに置き換わってしまう。そのため、広いほうがいいとも、狭いほうがいいとも言い切れない。無理なく動けて、きちんと手が回り、変化にも対応できること。そのバランスの中に、「ちょうどいい広さ」があるのだと思います。

我が家に必要なのは10畳分の空間

広い家が快適とは限らない理由, 我が家に必要なのは10畳分の空間, 老いじたくには、水回りの動線が重要, 今の家を「終の住処」と決めつけなくてもいい

85m²・4LDK退去時の1枚。完全に広さを持て余していた(筆者撮影)

我が家の場合「35m²〜40m²」が、無理なく暮らし続けられる現実的な広さだという結論にたどり着きました。リタイア済みの60代の夫と、在宅で仕事をする50代の妻。荷物は少なめで、12キロの中型犬が1匹。結婚10年で5回の引っ越しを経験する中でわかったのは、広すぎても狭すぎても負担が出てくるということ。

85m²・4LDKは明らかに持て余し、50m²・1ルームはゆとりはあるものの、空間が広いぶん冷暖房効率が悪く、夏は暑すぎて冬は寒すぎる。30m²は居室こそ快適でしたが、水回りの使い勝手に難がありました。そして現在の25m²は、暮らせなくはないものの、長く住むには窮屈です。

特に実感しているのが、「床に布団を敷く生活の限界」です。いまは問題なくても、上げ下ろしの動作は年齢とともに確実に負担になっていきます。ソファはなくても困りませんが、それぞれにベッドがあることは、これからの暮らしにおいて欠かせない要素だと感じています。あとは、食事も仕事も兼ねられる、大きめのテーブルが1つあれば十分です。

我が家の場合、部屋を細かく区切るよりも、ひと続きの空間として使える間取りが暮らしやすいため、1ルーム、もしくは1K・1DKがベスト。犬が遊んだり、体操をしたりするために、何もない床スペースとして10畳ほど余白を確保したいので、「キッチン6畳+居室8畳」といった構成なら、動線と居住性のバランスが取りやすく、無理なく暮らし続けられそうです。

どこにいても家族の気配が感じられ、エアコンの効きもよく、家賃の負担も大きすぎない。つまりは暮らしのバランスが取りやすい広さです。

老いじたくには、水回りの動線が重要

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結婚して4軒目の部屋。前回と同じマンション内での引っ越し。キッチンはDIYで使いやすく整えたが、風呂場はバス・トイレ・洗濯機置き場が同一で狭くて寒かった(筆者撮影)

さらにこだわりたいのが、使いやすい水回り動線。流し台は狭くても問題ないのですが、ガスではなくIHなら火事の心配がいりません。つい先日、夫が鍋底を焦がしてヒヤリとする場面がありました。年を取れば物忘れが増えるため、「消し忘れ」からの事故が怖い。60代のうちに、IHにしておくほうが安心だと感じています。

手すり付きのトイレと風呂場があれば、スキルス性胃がん(ステージ4)で闘病中で、手足に障害がある夫が1人でも無理なく用を足せて、入浴ができる。「トイレに1人で行ける」ということは、人間の尊厳を維持するために重要ですし、介助する側・される側、どちらにとっても肉体的・精神的な負担を大きく減らしてくれます。

さらに室内洗濯機置き場にドラム式洗濯乾燥機を置けば、うだるような真夏でも、ベランダで物干しすることなく、エアコンでキンキンに冷えた部屋でボタンひとつで洗濯から乾燥まで完結できる。年を取れば誰しも、動作はゆっくりになります。家事の労力は少しでも軽いに越したことはありません。

広い家が快適とは限らない理由, 我が家に必要なのは10畳分の空間, 老いじたくには、水回りの動線が重要, 今の家を「終の住処」と決めつけなくてもいい

現在の住居。6畳1Kのため、流し台をイケア製のミニキッチン(幅110cm)に交換して、生活スペースを確保した。かなり狭く、凝った料理はできない(筆者撮影)

今の家を「終の住処」と決めつけなくてもいい

引っ越しを繰り返すなかで学んだのは、今の家を「終の住処」と決めつけなくてもいい、ということ。ライフステージや体調に合わせて、住む家や場所を柔軟に選べばいいのです。そうすれば、よく語られる「定年後は田舎でゆっくり」という選択も夢ではありません。

セカンドライフで田舎暮らしに憧れる人は多いのではないでしょうか。自然に囲まれた生活は魅力的ですし、ゆったりとした暮らしと、豊かな時間を与えてくれることでしょう。私たち夫婦も夫の定年後は田舎暮らしを予定していて、日本全国のクラインガルテン(別荘付き貸農園)の資料を取り寄せていたところでした。

残念ながら夫にがんが見つかり、田舎暮らしの夢は叶いませんでしたが、当時は「まずは1年間クラインガルテンに通って、田舎暮らしが楽しめそうなら、5年を目処に移住してみよう」と話し合っていました。ここで「移住先をここで一生暮らす場所」と決めてしまうと、途端にハードルが上がるからです。

年をとると、近隣にスーパーや病院がない土地では、免許の返納後のライフラインの確保などが難しく、頼れる家族などもいなければ、行き詰まる可能性が高い。「免許を返納するまで」「体が元気なうちは」「大きな病気をしたら都市部に移る」というように、最初から線引きをしておく。

そうすれば、その先にかかるお金や住まいについても、あらかじめ見通しを立てられます。ちょこちょこ目にする「移住先で古民家のリフォームに退職金を注ぎ込んでしまい、引っ越したいのに身動きがとれない」というような記事を反面教師に、終わり方も考えておくことで、むしろ安心して始められる。そんな側面もあるのだと思います。

広い家が快適とは限らない理由, 我が家に必要なのは10畳分の空間, 老いじたくには、水回りの動線が重要, 今の家を「終の住処」と決めつけなくてもいい

30m²・1Rの部屋。12畳ほどの空間で、暮らしやすい間取りだった。次に引っ越す際は、広さは必要ないが、水回りを重視したい(筆者撮影)

都会での暮らしにも同じことが言えます。家賃が高すぎること。家が広すぎること。本当は引っ越したいのに、引っ越し費用が出せずに動けないこと。こうした状態は、少しずつ暮らしの自由を奪っていきます。

モノも同じです。所有物が少なければ、引っ越しはぐっと身軽になります。「動こう」と思ったときにすぐ動ける。その自由さは、何よりの安心につながります。

25m²の暮らしは、他の人に決しておすすめできるものではありませんが、それでもこの限られた空間で暮らしてきたからこそ、見えてきたものがあります。

持ちすぎないこと。縛られすぎないこと。必要なときに動けること。今の家に執着しすぎず、そのときどきのライフスタイルに合った場所で暮らしていく。そんな軽やかさこそが、これからのセカンドライフを支えてくれるのではないかと、いまは思っています。

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