3連休の高速道路で「悲惨な事故」が続いた背景

3台が炎上、6名が死亡した深夜の事故, 同じトンネル内でほぼ同時に3カ所で追突事故が, 「安全環境」がいとも簡単に破られている?, 安全装置は活用されているか?, 自動運転になる未来を期待する前に

重大な死傷事故を含む交通事故のニュースが相次いだ(写真はイメージ、写真:heisj / PIXTA)

春分の日から始まった3月20日からの3連休、国内各地の高速道路で死亡事故や10台を超える多重事故など、全国ニュースになるような事故が多数、発生した。

【写真】高速道路を走るとき、特にトンネル内の走行には注意したい

原因も背景もさまざまだが、これだけ道路が整備され、クルマの安全性が向上している中で、なぜ悲惨な事故は頻繁に起こるのか。

日常的に高速道路を利用する自身への自戒も込めて、連休に流れた3つの重大事故のニュースを改めて確認しておきたい。

3台が炎上、6名が死亡した深夜の事故

この3連休の事故で最も大きく報道されたのは、連休初日の午前2時20分ごろに発生した、渋滞の車列に大型トラックが突っ込み、追突された乗用車の乗員6人が死亡した事故である。

場所は、三重県亀山市の新名神高速道路の下り線、「野登(ののぼり)トンネル:長さ4137m」の出口付近。名古屋方面からだと、「菰野IC(こものインターチェンジ)」「鈴鹿PA(パーキングエリア)」を過ぎ、東名阪道からの連絡道が合流する直前のトンネルである。

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日中の「野登トンネル」(写真:Hiroko / PIXTA)

午前2時という時間は、通行料金が安くなる深夜に疾走する大型車が多い時間帯だが、3連休初日のため、渋滞を避けて観光や帰省のために走る一般の乗用車も一定数いたことだろう。

この事故では、運送会社に所属する50代の女性が運転していたトラックが、前方の乗用車に衝突、計3台が炎上し、乗用車に乗っていた6人の命が失われた。

この事故が大きく扱われたのは、亡くなった6人のうち3人がまだ小さな子どもだったこと、そして身元の発表がなかなかなされなかったことが大きいだろう。

被害者の身元については、事故後1週間が経った現時点でもまったく発表されておらず、それだけ特定が難しい状況であることが推察される。

加害者が前方不注意であったことや、当日は渋滞の先で工事が行われており、時速50kmの速度規制が行われていたところをそれより速いスピードで走行していたことなどが、事故後しばらくして伝えられるようになった。

加害者はもちろんプロのドライバーであり、会社からの信頼の厚い方だったようだが、東京から広島まで約1000kmを走行するスケジュールだったことを考えると、午前2時という時間は、運転手にとっては集中力を欠きやすい状況だったのかもしれないとの思いも浮かぶ。

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物流を支える大型トラックは深夜早朝にわたり長距離を走る(写真はイメージ、写真:まちゃー / PIXTA)

仮に「東京IC」から「広島IC」との距離を算出すると、およそ780km。休憩を入れて走ることを考えると10時間、あるいはそれを超える時間を運転することになる距離だ。

この事故は、「3連休」「深夜」「工事中の渋滞」「トンネル内」という悪条件が重なって起きたと推察される。

もちろん、ドライバーはどんな条件であろうと、前方をしっかり見て運転に集中し、安全義務を怠らないことは当然だが、それでも起きてしまう事故をどう防いだらよいのかを、改めて考えさせられた。

同じトンネル内でほぼ同時に3カ所で追突事故が

2つ目のニュースは、それからおよそ6時間後に起きた事故だ。三重県の隣、愛知県の新東名「稲木トンネル」下り線で、ほぼ同時に3カ所で別々の追突事故が発生、4人が損傷を負ったというものである。

このトンネルは、東京方面から走行すると、静岡県から愛知県に入り「長篠設楽原(ながしのしたらがはら)PA」を過ぎて4つ目、長さ700mあまりのトンネルである。

東名よりも内陸部を走る新東名はトンネルが多く、特に「新城(しんしろ)IC」から「岡崎東IC」までは短いトンネルが11本連続する区間である。

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日本にはトンネルが連続する地域も多い。写真は筆者が走った紀伊半島の湯浅御坊道路「湯浅トンネル」(筆者撮影)

報道によれば、この事故は出口付近で3台、トンネル内で6台、入り口付近でも3台が追突事故に絡んだという。偶然とはいえ、連休を利用して高速道路を利用するサンデードライバーや、トンネルの構造自体に何らかの原因を求めてしまいたくなるような事故であった。

実はこの連休中、筆者も東海地方に滞在してクルマを運転しており、ラジオの交通情報ではこの2件による通行止めのほかにも、東海3県の高速道路でいくつもの追突事故が発生していたことが聞き取れた。

3つ目は、3連休最終日となる22日の午前5時ごろ、宮城県大崎市の東北道上り線で、乗用車が中央分離帯などに衝突し、運転者と同乗者が車外に投げ出され死亡したという事故だ。

東北地方とはいえ路面に雪はまったくなく、好天で見通しの良い片側2車線の道路であり一見すると、事故など起きようがないような状況での事故である。

「安全環境」がいとも簡単に破られている?

これら3つの事故現場付近は、筆者自身も何度も走ったことがあるものの、事故の情報源は発表された報道だけであり、知りえない事実も多いので迂闊な断定はできない。

しかし、高速道路で最も重要な「安全環境」がいとも簡単に破られているような気がして、高速道路の愛好家としては、気分がすぐれないニュースの連続であった。

東北道の自損事故と思われる例は別にして、前の2件はトンネルの中での追突である。トンネルだから事故が起きたというつもりはないが、それでもトンネルは事故を引き起こしやすい構造を持つ。

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景色が単調で視界も様子も異なるトンネル内(写真はイメージ、写真:みやすん / PIXTA)

まずトンネルの出入り口では、明るさが極度に変わるため前方が見にくくなる。そして、トンネル内では、景色が単調なのでスピードが出やすくなったり集中力を欠きやすくなったりすることや、カーブの先の状況がわりづらいこと、上りや下りの傾斜も感じにくくなるといったことがある。

ちなみに山岳国ニッポンは、世界でも稀に見る「トンネル大国」である。国土交通省道路局の資料(2023年)によれば、日本の道路トンネルは全部でおよそ1万2000カ所、うち高速道路には1800あまりのトンネルが存在するという。

トンネルの長さも、首都高中央環状線の1万8597mを筆頭に、関越トンネルの1万926m、飛騨トンネルの1万712m、東京湾アクアトンネル9607m、栗子トンネル8972m……と、長大トンネルが目白押しである。

筆者はこれまで40ほどの国で高速道路を走行してきたが、多くの国でトンネルを走行すること自体が稀である経験に照らすと、本当に日本の高速道路建設はトンネルとの戦いの歴史であったと思えるほどだ。

3台が炎上、6名が死亡した深夜の事故, 同じトンネル内でほぼ同時に3カ所で追突事故が, 「安全環境」がいとも簡単に破られている?, 安全装置は活用されているか?, 自動運転になる未来を期待する前に

山岳トンネルでは日本最長の「関越トンネル」(筆者撮影)

もちろん、今からトンネルを減らすことはできないから、検討すべきは、トンネルの圧迫感や明るさをどのように安全につなげていくかだろう。ここには、まだまだ検討の余地があるようにも思う。

「トンネルは事故を引き起こしやすい」という仮説については、実はこれまでもさまざまな論考が発表されている。

その中には、首都高速道路では明らかにトンネル内での事故率が高く、特に追突事故が高いという内容もあるし、40年以上も前に国際交通安全学会に投稿された論文(「高速道路のトンネルと交通事故」松原洋1984年)では、高速道路の事故率はトンネル内外で差はないが、人身事故率はトンネル内の方が有意に高いということがデータで示されている。

3台が炎上、6名が死亡した深夜の事故, 同じトンネル内でほぼ同時に3カ所で追突事故が, 「安全環境」がいとも簡単に破られている?, 安全装置は活用されているか?, 自動運転になる未来を期待する前に

首都高速は合流や分岐、カーブが多い(写真はイメージ、写真:shuu / PIXTA)

火災をともなう重大事故も多いという指摘も記述されており、こうした警鐘が発せられて久しいにもかかわらず、40年を経た今も重大事故が起きやすい状況は変わっていないともいえるだろう。

なお、もちろん海外の高速道路にも長大トンネルはある。オーストラリアのシドニーには、市の中心部から西郊までを地下で結ぶ長さ22kmの「ウエストコネックストンネル」があって、2024年に走行した際にはその規模に驚いた経験がある。

安全装置は活用されているか?

別の視点でも考えてみよう。昨今のクルマには、先行車との安全な距離を維持するために速度を調整する「アダプティブ・クルーズコントロール(ACC)」や「衝突被害軽減ブレーキ」が搭載されている。

特に衝突被害軽減ブレーキは、商用車を含め段階的に義務化が進められているが、まだこれらは全車に整備されているわけでもなく、またACCがあっても機能させていないケースも少なくない。ACCを搭載しているクルマならば、積極的に利用すべきだろう。

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車間距離を適切に保ってくれるACCは疲労低減にもつながるため積極的に活用したい(写真はイメージ、写真: adigosts / PIXTA)

ただし、もちろんこれらは補助装置であり装置の有無にかかわらず、最終的には運転者がすべての責任を負うことはいうまでもない。

また、渋滞などで停止しそうになった場合、後続車が近づくまで前のクルマとの車間を空けるとともに、ハザードランプで後続の車に渋滞を知らせるなどの配慮も欠かせないだろう。

自動運転になる未来を期待する前に

いつかの未来には、クルマの完全自動運転化が実現し、運転者がハンドルを持たなくても安全に走行できる社会が到来するかもしれない。とはいえ、その夢物語の実現に期待して、現実の安全対策を疎かにしてよいということにはならない。

この一連の事故に巻き込まれた方々に哀悼の思いをはせつつ、どうしたら悲劇が起きない道路の通行が実現されるのか、道路の運営者、警察、ドライバー、あるいはドライバーを雇う企業など、あらゆる関係者が多くの教訓を得る必要があろう。