小田急「多摩線開業で誕生」新百合ヶ丘駅の将来性

2026年3月まで新百合ヶ丘駅長だった嘉山昌弘さんに在任2年間を振り返ってもらった。4月からは藤沢管区の管区長兼藤沢駅長を務める(記者撮影)
東京都心のターミナル・新宿から小田急電鉄小田原線の快速急行に乗ると、15分ほどで多摩川を渡り、神奈川県川崎市に入る。
【貴重な写真はこちらから】▶小田急電鉄・多摩線の開業前後、まだ周りに“何もなかった”頃の新百合ヶ丘駅▶日本最大のニュータウンの足、多摩線の起点となる駅は50年でどう変わった?
代々木上原駅から10km以上続いてきた複々線区間も多摩川右岸の登戸駅まで。その先は起伏ある地形が目立つようになり、高度経済成長期に開発が進んだベッドタウンらしい沿線風景が広がる。
快速急行が次に停車するのは新百合ヶ丘駅だ。
小田急で唯一の特徴
新百合ヶ丘駅は1974年6月1日、同駅から分岐する多摩線と同時に誕生した。地上のホームは3面6線で小田急の中間駅としては最も規模が大きい。
基本的には1・2番ホームが小田原方面、3・4番ホームが多摩線、5・6番ホームが新宿方面だが、多摩線直通の一部下り列車は2番ホーム、小田原線の一部下り列車は3番ホームを使用する。
駅の名は、隣の駅名でもある「百合ヶ丘の名がニュータウンの町名として定着していたところからこれをとった」(『小田急五十年史』)。沿線利用者は「しんゆり」と略すことが多い。
快速急行、急行、準急、各駅停車のほか、一部の特急ロマンスカー、平日朝の通勤急行と通勤準急も停車する。小田急全70駅の中ですべての種別が発着するのは新百合ヶ丘駅だけだ。2024年度の1日平均乗降人員は11万4816人で同社線で10位に位置する。
新百合ヶ丘駅から延びる多摩線は、五月台、栗平、黒川の各駅を経て、はるひ野駅までが神奈川県内。京王電鉄の相模原線と並行しながら東京都多摩市に入ると小田急永山駅で、1974年の開通当初の多摩線は同駅までだった。
翌1975年、現在は多摩都市モノレール線とも乗り換えができる小田急多摩センターまで延伸。終点の唐木田駅が開業したのは90年のことだった。途中のはるひ野は2004年になって誕生した小田急でいちばん若い駅だ。

新百合ヶ丘駅の南口。周辺の商業施設とはペデストリアンデッキで行き来できる(記者撮影)
「多摩ニュータウン」の玄関口
新百合ヶ丘―唐木田間10.6kmの多摩線は、かつては線内折り返しの列車がほとんどだったが、2000年代以降は小田原線との直通列車が増加。平日の日中時間帯は新宿・千代田線方面からの急行が直通し、平日朝の通勤急行はすべて多摩線内が始発だ。
新百合ヶ丘駅は日本最大規模のニュータウン「多摩ニュータウン」の玄関口でもある。

多摩線から来た急行新宿行き(手前)と快速急行新宿行きが並ぶ(記者撮影)
2026年3月まで2年間、町田管区新百合ヶ丘駅長を務めた嘉山昌弘さんは「着任した24年が多摩線の開業50周年。イベントなどで地元の方から『おめでとうございます』と言ってもらえたのがすごくうれしく、沿線に根付いた駅だということを実感した」と話す。
「乗り換えのお客さまも多く、定期券うりばも入学シーズンにはいちばん混む駅なのでは。駅長としてもやりがいのある駅です」
多摩線全駅を管理しているため、所属員は90人を超え、アルバイトも含めると約120人の大所帯になる。そうした中で嘉山さんは「絵が上手、歌がうまい、楽器が弾けるなど駅員の趣味や特技を活用してモチベーション向上や集客につなげられないか、取り組みました」という。
その一例が小田急町田管区と京王電鉄相模原管区が合同で企画した「方向幕カードスタンプラリー」(2月21日~3月22日実施)。台紙デザインなどにも所属員の特技が生かされた。
「子供のころから身近な存在」
嘉山さんは新松田駅がある神奈川県西部の松田町出身。「自宅からも小学校からも電車が見える場所だったので、子供のころから小田急は身近な存在。両親に連れられてロマンスカーで新宿に行き、そこから上野動物園や東京タワーに行ったのはよく覚えています」。
1987年に入社して1年ほど大和駅と中央林間駅を担当する大和管内に勤務した後、地下鉄千代田線も乗り入れる代々木上原駅に異動した。「地下鉄に関するご案内が多いのですが、県西地区出身なのであまりよくわからなくて。駅名を覚えるのにすごく苦労しました」。

小田原線と多摩線で3面6線ある新百合ヶ丘駅の信号所。嘉山さん自身も信号関係の経験を積んできた(記者撮影)
そんな嘉山さんの若手時代には想像もつかなかっただろうが、新百合ヶ丘駅が所属する町田管区では現在、新入社員などの家族が「職場見学」をする機会が設けられている。
この日は若手駅員の秋葉涼さんの母・千恵子さんが新百合ヶ丘駅を訪れ、改札口で利用客に応対しているところを見守り、駅員が詰めるバックヤードなどを見て回った。千恵子さんは「バックヤードの駅員の人数の多さにびっくりしましたが、広くてきれいで、息子にもよく対応してくれていて、すごく安心しました。来てよかったです」と話していた。
涼さんも「ちょっと気恥ずかしかったですが、ホームで放送しているところなど、親が知らない一面を見せることができました」と満足した様子だった。今後は車掌見習いとして新たな一歩を踏み出すという。

秋葉涼さん(奥)の窓口での仕事ぶりを母・千恵子さんが見守る(記者撮影)
地下鉄延伸計画「地元は期待」
多摩線との接続駅として、丘を切り開いて開業した当時は雑木林が広がっていた駅周辺は、現在は麻生区役所、昭和音楽大学や日本映画大学の校舎、「アコルデ」「オーパ」「エルミロード」「イオンスタイル」などの商業施設が集積している。
南口のバスターミナルは、横浜市青葉区にある東急田園都市線たまプラーザ・あざみ野方面などへの路線バスの拠点で、羽田空港と結ぶリムジンバスも出ている。
現在は小田急だけが乗り入れる新百合ヶ丘駅だが、近い将来、その存在感をさらに増すことになりそうだ。横浜市営地下鉄ブルーラインのあざみ野駅から新百合ヶ丘駅まで約6.5kmの延伸計画がある。
駅長を2年間務めた嘉山さんは4月から藤沢管区の管区長兼藤沢駅長に就く。新百合ヶ丘については「地元の方と話をしているとみなさんが地下鉄延伸にすごく期待しているのがわかりました。開業から50年で多摩線の乗降は増え、駅前もどんどん変わってきたのでこれからも可能性のあるエリアだと思います」と話していた。