空港5分・坂なし・食の宝庫「地元民」語る福岡の実力

福岡に来てくれる観光客に、地元民が抱く“微かな申し訳なさ”, 日常を楽しむなら、「リヤカー部隊」と豊富な飲食店が魅力の西新へ, 福岡市内から1時間。移住者が急増する「糸島」の魅力, 博多から新幹線で15分。福岡市と異なる風情が楽しめる小倉, 近海の鮮魚も!活気あふれる「旦過市場」, 地元民もあまり知らない「若冲」の贅沢と、平尾台の雄大な自然,  異なる3つの海に育まれた「魚介の聖地」・北九州 , 「コンビニより焼鳥屋が多い」久留米に、水郷ならではの情緒が楽しめる柳川, 福岡市を「ハブ」として、福岡県を丸っと満喫

太宰府天満宮の仮本殿(写真:cameralove/PIXTA)

ある町を観光で訪れたとき、地元の人にとっては「当たり前」のことが、自分には驚きだった……という経験はないだろうか。「ジモトのアタリマエ」では、そんな地元民ならではの「価値観」や「街歩きの知恵」にスポットを当て、その土地の本当の楽しみ方を提案する。第2回は福岡。

福岡市内に約20年、北九州市の小倉に約15年。なんだかんだ人生の大半を福岡県内で過ごしてきた筆者が、観光客に伝えたい地元民の声を前後編でお届けする。後編は前編「福岡の食」に続き、「福岡の観光名所」について。

【写真を見る】小倉城は、福岡県で唯一の天守閣を持つ城だ(写真:福岡県観光連盟提供)

【前編はこちら】

福岡市民が「屋台に行かない」本当の理由。290円ラーメン、うどん文化……“食の街”ジモト民の食の「常識」は観光客とまったく違う

福岡に来てくれる観光客に、地元民が抱く“微かな申し訳なさ”

県外の友人知人は口をそろえて「福岡、いいところだよね」と言ってくれる。もちろん、福岡市民は福岡が大好きだ。筆者も20年福岡市に住んだ経験から心底そう思うが、一つだけ残念に思うことがある。それは、福岡市内には、とことん「観光名所がない」ことだ。友人たちに「ここに行くといいよ」と紹介してあげられる場所が、実は驚くほど少ない。

観光スポットといえば、「太宰府天満宮」一強だが、これも正確には太宰府市であり、福岡市ではない。福岡タワーや大濠公園などもあるが、観光客が期待するような目玉があるかと言われると、地元民としては楽しんでもらえるかどうか怪しく思う。食に関しては「胃袋3つ持ってきて」と友人たちには伝えているくらいの自信があるのだが、遊びに来てもらった際の「行き先」には頭を悩ませるのが常なのだ。

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いつ来ても人が多い太宰府天満宮。本殿を改修中のため、現在は「仮殿」が建てられている(写真:筆者撮影)

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大濠公園。公園内にはカフェやレストラン、美術館などもあり、ゆったりとした時間を楽しめるし、レンタルボートもある(写真:福岡県観光連盟提供)

一方で、福岡市は「住む」には最高な街だ。その理由は、食が充実しているだけでなく、コンパクトシティとしての圧倒的な利便性にある。福岡空港の国内線ターミナルから主要駅である博多駅までは、地下鉄でわずか5分。これほど空港と都心が直結している都市は、世界的に見ても極めて稀だ。

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福岡空港は、地下鉄の駅の目の前から、国内線のカウンターや保安検査場に向かうエスカレーターが延びていて便利だ(写真:KAZE/PIXTA)

また、街中に坂が少ないので自転車で気軽に移動できる。観光客にも、シェアサイクルの「チャリチャリ」をフル活用することをおすすめしたい。観光客も、事前にアプリを登録しておくとすぐに使えて便利だ。博多から天神は自転車で15分、天神から大濠公園は10分も漕げば着く。この「暮らし」の延長線上にある快適さこそが、福岡市の真の価値だと感じている。

日常を楽しむなら、「リヤカー部隊」と豊富な飲食店が魅力の西新へ

もし、「福岡の日常」を楽しみたいなら、西新(にしじん)中央商店街まで足を延ばしてみてほしい。天神駅から地下鉄でわずか7分。ここには、平日や土曜日の昼間、5〜10台ほどのリヤカーが並ぶ。地元民からは「リヤカー部隊」と呼ばれており、産地直送の安くて新鮮な野菜や魚介類、花などが売られる「出店」になっているのだ。その光景は、地元民であっても「今日は何が手に入るかな」とテンションが上がる。以前近くに住んでいた筆者も、通るたびに必ずチェックしていたものだ。

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地下鉄西新駅を出ると、目の前にある西新中央商店街(写真:ayu/PIXTA)

西新エリアは食の穴場でもある。例えば、天神にある福岡パルコで連日長蛇の列ができている「極味や(きわみや)」のハンバーグ。表面のみを焼いた状態で提供されたハンバーグを、焼き石で自分好みの焼き具合に仕上げるというこのお店は、実は西新にも店舗がある。こちらはサクッと入れることが多い。また、西新駅そばの「西新オレンジ通り」には個性豊かな居酒屋やレストランが集合しているので、店選びに困ることはないだろう。

福岡市内から1時間。移住者が急増する「糸島」の魅力

福岡市を拠点に少し足を延ばせば、福岡県内にはさまざまな観光地がある。ここ20年ほどで定番の観光スポットになったのは「糸島」だ。レンタカーを借りれば、約1時間で到着する。山と海が近く、お洒落なカフェやレストラン、アートスポットなどが点在するこのエリアは、関東からの移住者も多い。近年は、素敵なホテルやキャンプ場もできて、1泊して帰る人も多いようだ。

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糸島にある「唐泊VILLAGE(カラドマリヴィレッジ)」(写真:筆者撮影)

筆者が特におすすめしたいのは、冬限定の「牡蠣小屋」だ。糸島エリアには多数の牡蠣小屋があり、その多くがお酒の持ち込み無料という太っ腹なシステムを採用している。店によっては、「野菜や網の上で焼かないもの(ご飯など)はOK」というところまである。筆者も友人たちとワインや日本酒を抱え、電車で通っていた時期があった。牡蠣以外にもホタテやサザエ、イカ、エビといった魚介類も豊富で、旬の味覚を炭火で焼きながらいただくのは、非常に幸せな時間だ。

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牡蠣小屋によって持ち込みのルールなどは異なるので事前に確認しておきたい(写真:Nori/PIXTA)

博多から新幹線で15分。福岡市と異なる風情が楽しめる小倉

もう一つ、ぜひ訪れてほしいのが福岡県第2の都市「小倉」だ。博多駅から新幹線でわずか15分。駅で降りれば、徒歩圏内にさまざまな観光スポットが凝縮されている。

まずは「小倉城」。2019年にリニューアルされた内部は、侍気分を味わえる体験コーナーや流鏑馬ゲームなどが用意されている。また、天守閣最上階の「キャッスルカフェ」では、街並みを眺めつつのんびり過ごすことができる。そして、ここは土曜日の夜にはバーにもなるという(冬季は休業)。

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小倉城は、福岡県で唯一の天守閣を持つ城(写真:福岡県観光連盟提供)

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小倉城ではさまざまなイベントも開催される。写真は秋に開催される「小倉城 竹あかり」(写真:筆者撮影)

隣接する「小倉城庭園」では、美しい庭を眺めながらアフタヌーンティーを楽しむこともできる(不定期開催)。筆者も一度体験したが、江戸時代の武家屋敷を忠実に再現した歴史ある建物のお座敷で、観光客に見られつつアフタヌーンティーをいただくのは非日常感たっぷりで満足度が高く、印象にも残っている。

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小倉城に隣接する小倉城庭園(写真:撮るねっと/PIXTA)

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通常は入れない「小倉城庭園」の座敷で、アフタヌーンティーをいただいた(写真:筆者撮影)

近海の鮮魚も!活気あふれる「旦過市場」

小倉城から10分ほど歩けば、「旦過(たんが)市場」がある。歴史を感じる古い市場だが、いつも大勢の人で賑わっている。オリジナリティのある店が立ち並んでいるため、歩いているだけでも実に楽しい。昔ながらの魚屋や八百屋の他に、小倉名物「ぬか炊き」の専門店、ブルワリーなどもある。2022年に2度の大規模火災が起きたため、一部はプレハブの建物で営業されているが、その活気は失われてはいない。

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地元民にも人気のスポット「旦過市場」(写真:筆者撮影)

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「旦過市場」には、新鮮な食材やおいしそうな惣菜が並ぶ(写真:筆者撮影)

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近海であがった鮮魚も(写真:筆者撮影)

また、北九州市は「フィルム・コミッション」に力を入れており、過去にはドラマ『MOZU』や映画『図書館戦争』など、さまざまな作品の舞台にもなった。筆者も『図書館戦争』のファンだったため、映画化の際に北九州市立美術館や北九州市立中央図書館が撮影に使われたと知り、あらためて見に行った。ちなみに、どちらも磯崎新氏の設計で、とても素敵な建築なのでぜひ足を運んでみていただきたい。

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北九州市立美術館には、響灘と市街を一望できるカフェもあり、ゆったりとした時間を過ごせる(写真:w_stock/PIXTA)

地元民もあまり知らない「若冲」の贅沢と、平尾台の雄大な自然

さらに足を延ばしてJRで3駅行けば、門司港もすぐだ。「門司港レトロ」と銘打った街並みは、散策するのにぴったりのエリアとなっている。

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1988年に鉄道駅として日本で初めて重要文化財に指定された門司港駅舎もレトロで風情がある(写真:筆者撮影)

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「もじこう」のフォントもレトロ感があってかわいらしい(写真:筆者撮影)

その中でも筆者がおすすめしたいのは、「出光美術館(門司)」だ。都会の美術館では大混雑になる伊藤若冲の名作が、驚くほど静かに鑑賞できることがある。出光美術館が日本美術コレクターで知られる「プライス財団」からその一部を購入したことにより、常設展示ではないが、企画展によっては門司でも見ることができるのだ。2025年夏にも若冲の「鳥獣花木図屏風」が展示されていたが、過去に大行列の中見たのが嘘のような、静謐で贅沢な時間を過ごすことができた。地元民にもあまり知られていない、隠れた名所だと筆者は思っている。

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こぢんまりとしているが、満足度が高い「出光美術館(門司)」(写真:筆者撮影)

北九州市もレンタカーを借りれば、活動範囲はさらに広がる。自然を満喫したいなら、小倉駅エリアから車で30~40分の日本三大カルスト「平尾台」へ。気軽に雄大な自然を感じられるほか、夏には鍾乳洞探検や沢登りなども楽しめる。夜は、皿倉山から夜景を楽しんだり、工場地帯の夜景クルージングツアーに参加したりするのも、福岡市内とはまた違った楽しみだ。

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平尾台は、草原に白い石灰岩が羊の群れのように点在する「羊群原(ようぐんばる)」が特徴の絶景スポット(写真:TOSHI.K/PIXTA)

異なる3つの海に育まれた「魚介の聖地」・北九州

北九州市の最大の強みは、なんといってもその豊かな海にある。西側の「玄界灘」、北側の「響灘」、東側の「周防灘」、そしてその間を走る「関門海峡」という、個性の異なる海に面した地勢は、驚くほど多様な魚介類を供給してくれる。

現在、北九州市は「すしの都」として打ち出しており、「天寿し」や「照寿司」といった全国的な有名店から、リーズナブルでおいしい回転寿司「京寿司」まで、その層は極めて厚い。特に「京寿司」は、2000円も出せば新鮮な寿司をお腹いっぱい楽しめるため、常に賑わっている。

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「京寿司」は鮮度のいいお寿司がお手頃価格で楽しめるので、地元民からも人気が高い(写真:筆者撮影)

「コンビニより焼鳥屋が多い」久留米に、水郷ならではの情緒が楽しめる柳川

久留米市や柳川市、うきは市といった県南エリアも見逃せない。久留米市内はB級グルメを楽しむにはうってつけだ。久留米はラーメンが有名だが、焼き鳥もぜひ食べていただきたい。久留米市は「コンビニよりも焼き鳥屋が多い」と言われている、焼き鳥屋密集地帯なのだ。

久留米の焼き鳥は種類が多く、中でも「ダルム(豚の腸)」や「センポコ(牛の大動脈)」といった豚・牛内臓部位が食べられるのが特徴だ。なお、これらの名称は、久留米大学医学部(旧・九州医学専門学校)の学生が使っていたドイツ語の医学用語から由来しているらしい。久留米はリーズナブルで、1000円でベロベロになれる「せんべろ」の店が多い。飲み歩きが好きな人にはたまらないだろう。

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写真右がダルム。外はカリッ、中はモチッとした食感が特徴(写真:akebi / PIXTA)

柳川市は昔からの観光スポット。柳川下りをして、柳川藩主立花邸「御花」を見学して、うなぎの蒸籠蒸しを食べて……というお決まりのコースも楽しい。2月初旬から4月頭にかけて行われる「柳川雛祭り さげもんめぐり」の時期が特におすすめだ。「さげもん」とは、縁起の良い鶴やウサギなどの布細工と、鮮やかな糸で巻き上げた「柳川まり」とを組み合わせたもので、ひな人形と一緒に飾られる。まちのそこここに飾られており、「おひな様水上パレード」などのイベントも開催されるので、より一層楽しめるのではないだろうか。

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「さげもんめぐり」の時期には、北原白秋生家や御花などの観光施設や商店街の各店舗に、色鮮やかなさげもんが飾られる(写真:KT88 / PIXTA)

うきは市は、江戸時代の面影を残す「白壁の街並み」をはじめとするおしゃれなカフェや雑貨屋、本屋などが2010年代後半から増え始め、現在は女子旅にぴったりな場所としてもよく雑誌やWebで紹介されている。「cafe たねの隣り」や「gallery&cafe空のいろ」、「MINOU BOOKS」などが有名だ。「フルーツ王国」としても有名で、福岡市民もドライブがてらフルーツ狩りやカフェ巡りに訪れる人は多い。

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伝統的建造物群保存地区として江戸期の姿を色濃く残す白壁通り(写真:papa88/PIXTA)

福岡市を「ハブ」として、福岡県を丸っと満喫

「福岡旅」を満喫するなら、利便性の高い福岡市を「最高のハブ」として使い、そこから放射状に足を延ばす合理性を知ってほしい。

たとえば、博多から新幹線で15分の小倉に宿を取れば、福岡市内よりリーズナブルに滞在しながら、門司港の夜景や平尾台の雄大な自然、そして類まれな魚介文化を楽しめる。あるいは、西鉄電車の特急で久留米や柳川に向かい、情緒あふれる川下りや独特の焼き鳥文化に酔いしれるのもいいだろう。

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季節ごとに美しい景色を見せてくれる柳川(写真:line/PIXTA)

西鉄電車の特急に乗れば、久留米は西鉄福岡(天神)駅から約30分、柳川も約50分で着く。しかも、西鉄電車の特急は特急料金がかからず普通料金で乗れるので、実に便利だ。レンタカーを借りて1時間も車を走らせて、糸島やうきは市へと行動範囲を広げれば、自然豊かな景色とおしゃれなカフェなどを楽しめる。

福岡市で食に舌鼓を打つ旅も大いにおすすめするが、ぜひこの多層的な「福岡県」を回遊する旅も体験してみてほしい。きっと地域ごとの特色を楽しんでもらえるはずだ。福岡県のさまざまな表情を知ってもらえると、地元民としてもとてもうれしい。

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糸島市を代表する景勝地の一つである「桜井二見ヶ浦」。周囲にはカフェやレストランが多数立ち並んでいる、人気の観光スポットだ(写真:TOSHI.K/PIXTA)