「スニーカーローファー」が似合わない人の服装

(写真:takeuchi masato/PIXTA)
スニーカー通勤の新たな選択肢として、「スニーカーローファー」が注目されています。ローファー見えするきちんと感と、スニーカーならではの履き心地を両立できるのが魅力です。とはいえ、合わせ方を間違えると、手抜きのウォーキングシューズのように見えてしまうこともあります。
【写真】人気のローファースニーカーが似合う服装は?
ワークマンから「ハイバウンスバラストローファー」が3月20日に発売されると、すぐ品薄となり高価格で転売されるなど、その人気は想像以上です。
そこで今回は、スニーカーローファーで失敗しない「通勤スニーカーを品よく見せる」コツをお伝えします。
スニーカーローファーは従来の靴と何が違うのか
ニューバランスと日本を代表するデザイナーブランド(コムデギャルソンJUNYA WATANABE MAN)のコラボアイテムから人気に火がついたスニーカーローファーは、もはやスポーツブランドのみならず、セレクトショップやワークマンでも見かける定番シューズです。

ビジネスというよりスポーティでモードなローファースニーカー(写真:筆者撮影)
ところが、従来の通勤スニーカーとは似て非なるものです。だからこそ、代表的なNGポイントをクリアしていても、野暮ったくなるリスクを拭えません。ここで確認したいのが、「靴とパンツのバランス」です。
たとえば、通勤スニーカー選びで失敗しないコツといえば、「ランニングシューズのようなメッシュ素材はカジュアルすぎる」とか、「白・黒のレザー調でシンプルなものはビジネスでも浮かない」といったノウハウを見かけるのではないでしょうか。
上記のルールに当てはめるなら、「革靴系デザイン(ローファー)で、レザー調の黒いスニーカーローファーは、通勤のNG条件をすべてクリアしている」ということになります。にもかかわらず、従来の通勤スニーカーと同じ感覚で履くと、なぜか野暮ったく見えてしまうことがある。そこに、この靴の難しさがあります。
その理由は、デザインだけでなく、靴の成り立ちそのものが異なるからです。
スニーカーローファーは「カジュアルに寄せている」
従来のビジネススニーカーは、素材の質感を変えることでカジュアル要素を減らしてきました。つまり、方向としては「ドレスに寄せる」という成り立ちです。スニーカーを、できるだけ革靴の側に近づける発想と言ってもいいでしょう。

革靴の木型でつくられた従来のビジネススニーカー(写真:筆者撮影)
一方、スニーカーローファーは、ローファー風のアッパーをスニーカーソールで崩しています。言い換えれば、靴全体の印象を崩しすぎないようにしながら、「カジュアルに寄せている」シューズなのです。見た目はローファーでも、履きこなしのルールまで革靴と同一ではありません。
ここで陥りやすいのが、「足元がカジュアルだから、パンツはドレッシーにして引き締めよう」という発想です。人はつい、スッキリした細身のスラックスを合わせたくなります。ところが、そこで逆にスニーカーローファー特有の丸みやボリュームが悪目立ちしてしまうのです。結果として、革靴見えするウォーキングシューズのような野暮ったさが出てしまいます。
つまり、スニーカーローファーが野暮ったくなる人の盲点は、靴単体のデザインだけを見てしまい、全体最適の視点が抜け落ちていることにあります。では、どんなパンツを合わせればいいのでしょうか。
ワンタックのパンツを合わせよう
スニーカーローファーを履きこなす本質的なポイントは、靴が持つ「フォルム(丸みとボリューム)」を意識することです。
従来のビジネススニーカーは、細身のスラックスになじむよう、どちらかといえば革靴のようなスタイリッシュな木型が主流でした。一方、スニーカーローファーは、その構造上、どうしても足元にポテッとした特有の丸みやボリューム感が生まれます。

スニーカーローファーに合わせやすいワンタックのスラックス(写真:筆者撮影)
この靴に「細身でピシッとしたスラックス」を合わせると、シャープなパンツの裾から見えるポテッとした丸いフォルムがアンバランスです。スラックスの持つ緊張感(ドレス感)に対して、靴のボリューム(カジュアル感)が釣り合わず、足元だけが不自然に浮いてしまうのです。
では、スニーカーローファーをこなれて見せるには、どうすればいいのでしょうか。答えは、靴そのものではなく、「合わせるパンツのシルエット」を変えることです。靴の丸みとボリュームを調和させるには、パンツ側にも少しだけリラックスしたゆとりが必要なのです。具体的には、「ワンタック(1プリーツ)が入ったスラックス」がおすすめです。
とはいえ、ここでワイドパンツを勧めたいわけではありません。いまはワイドシルエットが主流とはいえ、ビジネスシーンでは「個性の主張」が強く見え、印象のノイズになりやすいからです。スニーカーローファーに必要なのは、極端な太さではなく、あくまで自然なゆとりです。
ワンタックのスラックスは、ウエストから太もも、ひざ周りにかけて適度な余裕がありつつ、上品さを保てるのが利点です。ノータックの細身スラックスでは靴の丸みが悪目立ちしてしまいますが、ワンタックのゆとりがあることで、スラックスの上品さを損なわずに、足元のボリューム感と無理なくつながります。
選ぶなら、腰回りにリラックス感を持たせつつ、裾に向かって細くなるテーパードシルエットがいいでしょう。たとえ裾幅が細めでも、腰からひざにかけて「今っぽいゆとり」があるだけで、スニーカーローファーのカジュアルさをしっかり受け止め、ウォーキングシューズのような野暮ったさを打ち消してくれます。
「おじさんっぽい」と避けられてきたが…
もちろん、00年代には「ワンタック=おじさんっぽい」と避けられてきたため、私のような40代以上の人は抵抗を覚えるかもしれません。実際、長らくビジネスウェアにおいては、「清潔感=細身のシルエット」と考えられてきました。
けれども、スニーカーローファーを通して見えてくるのは、清潔感とは単に細いことではなく、「アイテム同士が調和していること」だという事実です。靴の丸みとパンツのゆとりが噛み合っているほうが、無理に細く整えた装いよりも、結果として大人っぽく、きちんとして見えるのです。
ちなみに、この考え方は平日の通勤コーディネートにとどまりません。スニーカーローファーはビジネススニーカーという文脈だけでなく、もともと休日靴としても成立しやすいアイテムです。だからこそ、オンオフ兼用を考える人ほど、休日の合わせ方にも注意したいのです。
最も難易度が高いのは、休日ファッションの代名詞であるベージュのチノパンに、黒のローファースニーカーを合わせる着こなしです。
そもそも、靴の「黒(無彩色)」と、パンツの「ベージュ(明るい有彩色)」という色合わせは、水と油のように反発しやすく、大人っぽくまとめるのが難しい配色です。ツヤのないマットな黒スニーカーであれば、まだなじむ余地もありますが、ローファーデザイン特有のツヤ感がある黒は、ベージュのチノパンと色と質感の両面で摩擦が起きるため、靴だけが浮いてしまいます。
また、作業着としてのルーツを持つベージュチノに、実用的な黒のスニーカーローファーを合わせると、そもそも休日を楽しむ大人のリラックススタイルというより、「現場で働く職人さんの仕事着」のような印象に直結してしまう懸念もあります。アイテム同士のルーツや質感を無視して組み合わせることで、スニーカーローファーの良さを引き出すどころか、余計な印象を発信してしまうのです。
靴単体で考えない「全体最適」の思考
ローファー見えするきちんと感と、スニーカーの履き心地を両立するスニーカーローファーは、スニーカー通勤を格上げする新定番になりうる存在です。ですが、合わせるパンツとの相性をおろそかにすると、途端に野暮ったく見えてしまいます。
スニーカー通勤の本質とは、「ただ歩きやすい靴に履き替えること」ではありません。靴のフォルムと、ビジネスウェアのドレス感の間に生じる摩擦を、「シルエットの調和」で解決するところにあります。
比較が簡単ではないため、木型や靴のフォルムよりも、素材や色の話が独り歩きしがちです。ですが、春に足元をアップデートするなら、ぜひワンタックのスラックスも併せて試着してみてください。靴単体ではなく全体最適の視点で装いを考えることこそが、相手に信頼感と洗練された印象を与える、大人の身だしなみだからです。