「1年着なかったら捨てる」は無理! 92歳インフルエンサーが明かす、誰でもできる〈片づけのルール〉「処分できないこともある」「効率さえ下がらなければOKです」
テキスタイルデザイナーの粟辻早重さん(92)は一人暮らしを謳歌中。「ムダなものは持たない」ことはとてもできないと語る彼女が行き着いた整理方法は「ところてん式」。新しいものを買ったら、その分古いものは捨てたり譲ったりするのです。
エッセイ『92歳、好き放題で幸せづくし』(粟辻早重著/KADOKAWA)より一部を抜粋・転載します。

粟辻早重さん(エッセイ『92歳、好き放題で幸せづくし』より)
着ないけれどとっておきたい服もある
洋服を整理する場合、手放すかどうかを決める際に難しいのは、着心地と見た目のバランスを見極めることです。たとえばTシャツは少しくたっとしてきた頃が着心地がいいため、つい長く着続けてしまうけれど……。
今年の夏、外出先で何気なく鏡を見たら、だらしない服を着たおばあさんが映っていました。よく見たら、それは私! 着るものを選ぶときは自分を客観視することも忘れちゃいけないな、と反省しました。
「ところてん方式」で、今好きなものを持つことにしてはいるけれど、「古いから」「使わないから」と割り切れるとは限りません。片付け上手な人は「1年着なかったものは捨てる」などとルールを決めていたりしますが、私には無理。「今もこれからも使わないけれど持っていたいもの」もあるからです。
たとえば、真っ赤なジャケット。何十年も着ていないので、本来は処分するべきでしょう。でも、私のクローゼットにある服は、黒、白、グレーがほとんど。赤いジャケットを捨ててしまったら、ここから光がなくなってしまう! だから、この先も着ることがないのはわかっていても持ち続けているんです。

古い真っ赤なジャケットは、クローゼットを明るくしてくれる存在。(エッセイ『92歳、好き放題で幸せづくし』より)
もうひとつが、夫のカシミヤのセーター。他の衣類は処分したけれど、夫が特に好きだった3枚は手元に置いています。
私には大きすぎるけれど、風邪をひいてパジャマで過ごすときのガウンがわりにぴったり。腰まで覆われるから温かいし、なつかしいセーターにくるまっていると、夫に抱きしめられているような気分になれるんです。
出したものは元の場所へ。片付けのルールはアバウトに
暮らしやすさをキープするコツのひとつが、何がどこにあるのかわかるようにしておくこと。そのための基本が、出したものは元の場所に戻すことです。
このルールは、若い頃からの仕事を通して身についたものです。たとえば筆などの画材。集中して描いているとき、決まったものが決まった場所にないとなんだか気持ちが悪いし、効率も下がってしまいます。必要なものをさっと手に取れるよう、それぞれのものの置き場を決めていたことが、生活全体の習慣になっているのかもしれません。
ただし、私がきっちり片付けているのは仕事をするデスクの周りぐらい。あとはアバウトに、「だいたい元の場所」に戻せばいいことにしています。

ダイニングで作業中。(エッセイ『92歳、好き放題で幸せづくし』より)
たとえば洋服なら、たたんだTシャツはこの引き出し、靴下はこの箱、とざっくり置き場を決めてその場所へ。「このTシャツは、右端の列の手前から3番目に……」なんてところまではこだわりません。
また日頃から心がけているのが、片付けを「ついでの作業」にすることです。たとえば中2階の洗面所に行くときは、持っていくものはないかな? と周りをチェック。ひとつずつ完璧にこなしていくのではなく、まとめられることはまとめて、効率よくすませるようにしています。
自分なりに家を心地よく整えているつもりですが、娘に言わせると、私はぜんぜん片付け上手じゃないんだとか。まあ私は、娘たちが几帳面すぎるんだと思っています。
食器が大好き! これからもまだまだ増えていく
自宅のキッチンは、壁一面が作り付けの食器棚になっています。収納スペースはたっぷりあるのに、扉を開けると器がぎっしり。使わないものは処分しているはずなのに……。どうやら私は、スペースに合わせて物を増やしてしまうタイプみたいです。
夫と暮らしていた頃は、自宅に人が集まることがよくありました。来客に備えて洋皿は10枚単位でそろえていたし、大きな器も必要でした。生活スタイルが変わった今、手元に置いているのは、普段からそれなりに使うものや、お気に入りのものが中心。食事のたびに、どの食器に盛り付けようかな? と考えるのも、楽しみのひとつです。

趣味で集めているというやかんのコレクション。(エッセイ『92歳、好き放題で幸せづくし』より)
そして、実は食器を買うことも大好き。ひとりでは絶対に使いきれないほどの器を持っているのに、まだまだほしいものが出てくるんです。
食器は、デザインだけでなくサイズ感も大事。家族との食卓には似合う器も、ひとり分の料理を盛り付けたのでは、スカスカでさまになりません。だから、頃合いの大きさで気に入るものを見つけると、ついお財布のひもが緩んでしまうんです。
娘たちと旅行したときは、午前中にのぞいたお店で食器を買い込んでしまって。その後ずっと重い荷物を持たされることになった娘は、ちょっと大変だったみたいです。
1枚ずつ買い集めた食器には、思い出が詰まっています。日々、器選びをしながら「これを買ったときは、娘に怒られたっけ」なんてニヤニヤするのもよいものです。
粟辻早重(あわつじ・さなえ)
カネボウ意匠室にてテキスタイルデザイナーとして勤務後、テキスタイルデザイナーの故・粟辻博と結婚。1958年に粟辻博デザイン室を共同設立。娘の出産を機に人形作りを始め、デザイナーの田中一光や剣持勇に人形作家として見いだされ、個展をしつつ広告も手掛ける。本を執筆するほか近年は世界のヤカンを蒐集。2024年に松屋銀座・デザインギャラリー1953にて「粟辻早重とやかんたち」を開催。