ホルムズ海峡再開、「軍事的圧倒」が鍵 ウクライナが米の教訓に学ぶ

ウクライナの海上ドローンは、黒海を通じた輸出再開で重要な役割を果たした
【キーウ(ウクライナ)】トランプ米政権が地上部隊を投入せずにホルムズ海峡を再開させようとする中、重要な穀物輸出の再開を目指し、2022年に国連の支援のもとでウクライナとロシアの間で締結された合意に注目が集まっている。
数カ月にわたる交渉の末に締結されたこの合意は、重要な海上輸出航路を一時的に開放したが、最終的にはそれを維持するには軍事力が必要となった。その後、ウクライナの海上ドローンは2024年にロシア海軍を輸送航路から撤退させ、現在の農産物輸出は戦争前の水準近くにまで回復している。
この出来事は戦時における外交の限界を露呈し、こうした対立において軍事力を通じた局面打開の必要性を示している。ドナルド・トランプ大統領にとって、戦争の早期終結を目指す上で教訓となる。
ウクライナのアンドリー・シビハ外相は2日、ホルムズ海峡に関する国際会合に参加し、「テロリストの体制は成功事例を共有する。イランが現在ホルムズ海峡でやっていることを、ロシアは先日まで黒海でやっていた」と述べた。その上で「問題はイランがロシアの失敗を研究し、そこから学んだことだ」とした。
ホルムズ海峡は戦争前、世界の原油供給量の5分の1が通過する要衝だった。イランはドローン、ミサイル、そして小型高速艇による脅威を通じて海峡を事実上封鎖し、世界経済に打撃を与えている。
欧州連合(EU)のカーヤ・カラス外交安全保障上級代表は、黒海での対応をホルムズ海峡にも適用することについて、合意の仲介を支えた国連のアントニオ・グテーレス事務総長と協議したと述べた。イランはこれまでのところ、ペルシャ湾から非友好国を排除し、海峡を通過する船舶に通航料を課すことを目指す立場を堅持している。
トランプ氏は他国に対し、イランからホルムズ海峡の支配権を奪い返すよう呼びかけている。同氏は先週、「勇気を振り絞り、海峡に向かい、そのまま奪取せよ」と自身のトゥルース・ソーシャルに投稿。また3日の別の投稿では、「もう少し時間があれば」米国は容易に海峡を再開でき、「石油を奪取して莫大(ばくだい)な富を得られる」と述べた。

カタールのタミーム・ビン・ハマド・アール・サーニ首長とゼレンスキー大統領(ドーハで3月下旬)
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、中東地域を先週訪問した際に、黒海の航路を構築した自国の経験についてさらに詳しく知りたいとの意見が地域の国からあったと述べた。またウクライナ政府はホルムズ海峡の封鎖解除に直接関与していないとした上で、外交的解決策は、相手側に交渉力を残すことになると指摘した。
ゼレンスキー氏は「ロシアとの経緯を覚えているだろう。合意に達し、封鎖を解除し、1年間は機能したが、その後は機能しなくなった。問題は封鎖解除だけでなく、それを維持し、ルールを設定し、保護を確保することだ」と述べた。
ロシアが2022年に全面侵攻を開始すると、ロシア海軍はウクライナの主要港オデーサを脅かし、ウクライナ経済を支える穀物などの輸出の流れを遮断。ウクライナ政府は代替手段を早急に見つける必要に迫られ、西部の近隣諸国を経由するより高コストの陸上輸送に切り替えるとともに、一部の輸出を水深の浅い河川港に振り向けた。
その際にウクライナのインフラ担当副大臣を務めていたユーリ・バスコフ氏は、「重要な分野を機能させ続け、経済の崩壊を防がなければならなかった」と述べた。
だがこうした応急措置にもかかわらず、影響はウクライナのオデーサ地域にある港湾のまひにつながり、その余波は発展途上国にまで及んだ。発展途上国はウクライナ産穀物に依存しており、価格高騰で食糧不足が悪化した。

ウクライナのオデーサ港は穀物輸出の主要拠点となっている
2022年4月には、国連のグテーレス氏がウクライナ、ロシア、そしてトルコを訪問。これを契機に全ての当事者が納得できる「黒海穀物イニシアチブ」を通じ、海上での穀物輸出再開を可能にする文言を模索する3カ月間の工程が始まった。国連が仲介した合意が各当事国と締結された際、その対象は農産物に限られ、その他の物資は引き続き合意の対象外となっていた河川港から輸送された。
当初は輸出が再開された。だがバスコフ氏によると、合意に基づき検査を実施する権限が与えられていたロシアが、これを遅らせ始めた。さらにロシアが2023年に合意の延長を拒否すると、船舶の安全を保証できる外部機関が存在しないため、海上輸出は再び停滞した。
その後、ウクライナの海上ドローンが効果を発揮した。英国防省によると、ドローンはロシアの黒海艦隊を標的とし、艦艇の5分の1を撃沈または損傷させ、ロシアに艦隊の後退を余儀なくさせた。
8月には最初の船舶が黒海航路を通過し、輸送の流れが徐々に再開された。ウクライナ海港当局によると、ウクライナの港を通過する物資の総量は2023年の6200万トンから2024年には9720万トンに急増した。
ロシアは爆発物を搭載したドローンとミサイルを使用し、ウクライナの輸出拠点への長距離攻撃を続けている。だがウクライナ政府によると、現在同国の農産物の約90%が海上輸送されており、戦争前の94%という水準に近づいている。
地理的条件や双方の軍事力の違いがあるため、黒海での教訓を全てホルムズ海峡に適用できるわけではない。専門家や当局者は、戦争地域のホルムズ海峡でタンカーに海軍の護衛を付けることはほぼ不可能だと指摘。ホルムズ海峡が狭いためイランは使用できる兵器の種類が多く、これに対応することは困難だとしている。
ウクライナは輸出封鎖に対応するため、ロシアの黒海艦隊を標的とした。これに対してイランは米国とイスラエルから海軍資産への攻撃を受けた後、陸上配備の対艦ミサイル、ドローン、そして複数の小型攻撃艇を投入している。
それでもウクライナのシビハ外相は、自国が力で封鎖を打ち破ったことは、中東地域にとっても戦略的な教訓だと指摘。「われわれが成功したのは、断固として行動したからだ。それこそが今の世界に必要な姿勢だ」と語った。