シニア世代の夫妻が満喫する「都心の別荘」。建築家・永山祐子が叶えた第2の豊かな暮らしの舞台

シニア世代の夫妻が満喫する「都心の別荘」。建築家・永山祐子が叶えた第2の豊かな暮らしの舞台
一般的に都市部の住宅は、プライバシーの確保を最優先とし、外部に対して閉鎖的になりがちです。しかし、この住まいはあえて大胆な開口部を設けた結果、住まいにも街並みにも明るい表情が生まれました。住み手が夢を託した建築家がつくり上げた空間は、驚きと喜びの仕掛けにあふれています。
都心に構えた別荘的住居

3層になった建物。1階はダイニングとキッチン、2階にリビング、3階は書斎。階が上がるごとに床面を小さくし、居室を奥に配することでプライバシーを確保。 Ikunori Yamamoto
都心とは思えない大開口部が印象的な邸宅。この大胆なプランを楽しんで暮らしているのは、シニア世代のSさん夫妻です。それまで至近のマンションに住んでいた夫妻は、アクセスやメンテナンスが大変そうな郊外の別荘よりも、生活圏内の都心に別宅を建てるという選択をしました。
永山祐子さんの手掛けたビルを見かけたことがきっかけに

外観。建物は2ブロックに分けられる。大開口にした鉄骨造の部分には、LDKと書斎を配置。右手RC造のエリアはプライベートなスペース。前面の開口は、スクリーンで開閉可能。 Ikunori Yamamoto
「どうせなら、ありきたりではないおもしろい家をつくりたかったんです。ちょうど散歩中に見かけたビルのデザインに興味をもち、調べてみたら設計者が永山祐子さんでした。そこで思い切って依頼をしました」とSさん。

3階の書斎部分からの眺め。対面のマンション裏の植栽が、ほどよく前面の借景になっている。 Ikunori Yamamoto
設計を手掛けた永山さんは、住宅街で路地に面した敷地に好印象を抱いたといいます。
「約30坪でコンパクトながら、隣接するマンションの借景は白い壁と植栽。前の道も人通りが少なく静かで、とても条件がいいなと思いました」
ガラス箱のような建物半分に、棚田状の吹き抜け空間が広がる

ガラス越しに室内を見る。 Ikunori Yamamoto
住宅が立ち並び、路地に壁が連なる閉じた街並みに対して、この建物の半分は、ガラス箱のような路地と空に対して大きく開いた鉄骨造となっています。ここにはLDKなど比較的パブリックなスペースを棚田状に配置しました。
もう一方のコンクリートの箱は、ほどよく閉じたプライベート空間

2階のリビング。 Ikunori Yamamoto
もう半分の建物はRC造とし、寝室やバスルームなどのプライベートゾーンを配置。窓のような壁面は、家の中にさらに家があるようなユニークで魅力的なデザインになっています。

RC造の部分に設置されたパウダールーム。壁で囲まれているだけで、リビング側とはまったく異なる雰囲気。 Ikunori Yamamoto
日差しや空気もコントロールできるよう配慮

トップライトから光が降り注ぎ、まるで家の外にいるかのような清々しい空間。 Ikunori Yamamoto
また、この家はガラス張りの天井も圧巻ですが、日光の透過率を調整できる調光ガラスが使われています。これは、ご主人が飛行機に搭乗した際に体験したスイッチ1つで調光ができるガラスを採り入れたもの。コスト面から住宅で用いるのはレアケースですが、常に外の景色が楽しめるうえに、自動もしくは簡単な操作で99%の遮光ができるという大きなメリットがあります。
さらに、吹き抜けの高低差を生かした空気の循環システムも採用。空調はシンプルな配管と換気扇による煙突効果を利用したサーキュレーションシステムによって、高低差のある建物自体の構造で空気が循環する仕組みとなっています。夏も冬も室内は快適な環境に保たれ、居住性も十分に配慮されています。
グランドピアノとハープでゲストをおもてなし

キッチンからの眺め。ダイニングテーブルとチェア、ペンダントライトは、永山さんがこの空間に合わせてジェルバゾーニを提案した。右手にある造作の壁面収納には、グラスのコレクションなどが収められている。 Ikunori Yamamoto
奥さまがピアノやハープの演奏家であり、人を招くことが好きな夫妻。主にこの1階のダイニングスペースが、音楽や食事、お酒でゲストをもてなす場です。
人生をさらに楽しく健やかに過ごすためにつくられた“都市の別荘”は、完成後、日常生活の拠点となりました。

アイランド側にシンクを配し、キッチンはミニマルかつ機能的にデザインされている。右手奥には冷蔵庫などの家電や食器・食材収納のスペースが。 Ikunori Yamamoto

「都心なのに自然を感じられて、刺激的で楽しい家。でもお友達は皆、最初はビックリしていますね(笑)」とSさん夫妻。家の中にいても、さまざまなシーンが魅力的に存在する。 Ikunori Yamamoto

グランドピアノも奥さまの手にかかれば、ゲストをもてなす素敵なスペースとなる。 Ikunori Yamamoto

「1階でゆっくり食事を楽しんだ後、このリビングへ移動するんです」と奥さま。夫妻のライフスタイルがプランにも反映されている。ソファはスペイン・サンカルのもの。クヴァドラのファブリックのクッションが置かれている。永山さんはSさん夫妻の理解のもと、手すりも借景を邪魔しないようになるべく繊細に、極限までシンプルに徹したデザインに挑戦したという。同じフロアにバスルーム、パウダールーム、予備室もある。 Ikunori Yamamoto

昼と夜で異なる顔を見せるファサードも魅力的。 Ikunori Yamamoto
DATA□ 設計/永山祐子建築設計 永山祐子
□ 敷地面積/91.79㎡
□ 延床面積/116.26㎡
□ 1階/48.52㎡
□ 2階/41.31㎡
□ 3階/26.43㎡
□ 家族構成/夫婦
□ 用途地域/第一種中高層住居専用地域
□ 構造/鉄筋コンクリート造+鉄骨造
□ 構造設計/江尻建築構造設計事務所
□ 工事期間/2016年6月~2017年2月
□ 施工/日南鉄構
□ キッチン製作/ベイシス
□ 造園デザイン/荻野寿也景観設計
MATERIALS
●外部仕上げ
□ 屋根/タケイ式コンクリート防水
□ 外壁/コンクリート打ち放し 撥水剤
●内部仕上げ
□ LDK
床/複合フローリング アッシュ(IOC)
壁/モルタル薄塗り仕上げ+PB
天井/鉄板 フッ素樹脂塗装
INSTRUMENTS
●厨房機器/
IHコンロ:AEG
食洗機:リンナイ
水栓金具:GROHE
レンジフード:グリーンハイキ
シンク:造作 コーリアン ミルキーホワイト
●衛生機器/
水栓:三栄水栓製作所
洗面ボウル:Tform
(ML241号掲載)
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