日高屋「炎上」が鎮火しない本当のワケ、「日本人をとるしかない」発言より問題だった「謝罪文」の中身
中華チェーン店「日高屋」の運営企業、ハイデイ日高の社長発言が物議を醸している。外国人の在留資格制度「特定技能」において、外食業界での新規受け入れが停止された。これを受けて自社の方針を示したのだが、その言い回しに「日本人に対する差別ではないか」といった批判が相次いだのだ。
【写真を見る】日高屋の看板メニューである中華そばは、ベトナム人の従業員にも人気が高いという(写真:美紀 悠子撮影)
その後、ハイデイ日高は謝罪文を投稿したが、SNSでの炎上はとどまるところを知らない。なぜここまで燃え上がっているのか。経緯を振り返ると、本来の論点とは離れた「説明の仕方」が抱える問題が見えてきた。
発端は「WBS」の社長発言、「とるしかない」への猛反発
特定技能制度は2019年、人手不足を解消するために導入された。業種ごとに「1号」と「2号」に分かれており、外食を含む1号は、在留期間が原則5年。外食は上限5万人と定められているが、まもなくそれを超える見込みとなったため、今回の受け入れ停止に至った。
2026年4月13日放送のテレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』では、この日から外食分野において、特定技能人材の受け入れが停止されたと伝えた。番組では、東京都内の日高屋で、ベトナム出身の従業員を取材していた。
そして、「日高屋を運営しているハイデイ日高では、新入社員の約3割(約30〜40人)が特定技能1号の外国人材」だとして、青野敬成社長の「今まで4割ぐらいは外国人でやろうと考えていたところが、今年はもう手の打ちようがない」「外国人の特定技能は駄目となると、日本人の高校卒業生や大学卒業生、専門卒を中心にとるしかない」というコメントとともに現状を紹介した。
しかし、この発言をめぐって、SNS上では批判が相次いだ。特に「とるしかない」という言い回しに対しては、「日本人は代替品なのか」といった反発が続出。外国人の労働力を確保できなくなったから、“仕方なく日本人を雇う”とも解釈できることから、怒りを覚えた視聴者も多かったようだ。
こうした事態を受けて、日高屋公式サイトやXは、放送2日後(4月15日)に「一部テレビ報道に対するご説明」と題する文章を発表。「一部に日本人労働者を軽視しているかのように受け取られかねない表現」によって、「ご不快な思いをされた方やご懸念をお持ちになった方」がいたとして謝罪した。

ハイデイ日高のXに掲載掲載された謝罪文(画像:ハイデイ日高Xより)
加えて、「人材確保においてより広い視野で考える必要性についてお伝えする意図によるものでしたが、結果として配慮を欠いた表現となりましたことを重く受け止めております」と言及。
「当社におきまして、外国人雇用による助成金を受け取った事実はございません。加えて、外国人労働者(特定技能取得者を含む)の給与額や福利厚生、昇給・昇格等につきましても、新卒・中途の通常社員(日本人)と同じ条件にて待遇しております」といった表現で、遠回しに「安価な労働力を手に入れるための採用」ではないことを示した。
ただ、これを出してもなお、「同待遇なのであれば、なぜ外国人を優先したのか」「『広い視野』に日本人は含まれていなかったのか」「トップが語った言葉にもかかわらず、説明責任が足りていないのではないか」といった手厳しい声が相次いでいる。
実は「分かち合う」優良企業
そもそも、ハイデイ日高とはどんな会社なのか。1973年創業で、現在、直営店舗は455(以下、2025年2月期時点)、従業員数は約1万2000人いる巨大企業だ。創業の地である埼玉県は110店、東京都が206店と、関東の駅前を中心としたドミナント戦略を展開していることから、それ以外の地域に住む読者には、あまりなじみがないかもしれない。
しかし、メインブランドとなる日高屋は、首都圏で一定勢力を持つチェーン店である。420円の中華そばをはじめ、「1日分の野菜350グラム」を摂取できるという野菜たっぷりタンメン(620円)などの安価な商品ラインアップで、“ちょい飲み”の追い風も受けながら拡大している。

日曜夕方、行列ができていたキュービックプラザ新横浜店(写真:美紀 悠子撮影)
そんなハイデイ日高は、従業員への手厚さでも知られる。25年12月に掲載された東洋経済オンラインの記事「日高屋の『分かち合う資本主義』徹底解剖。『家でつくるより安い!』ギリギリ価格で提供し地域に貢献+社員には赤字でも『3回目のボーナス』支給」によると、年2回のボーナスに加えて、毎年2月に「成長分配金」なる賞与を支給しているという。また、アルバイトに対しても、経営陣が会社の方向性を説明する機会を定期的に設けているとも書かれていた。
「公平」な企業が誤解された理由
これらの背景から考えると、どちらかと言えばハイデイ日高は、「日本人も外国人も分け隔てなく扱っている」と捉えられる。ただし、近年ナショナリズムが高まりつつあることを考えると、青野氏の発言が曲解されたことには、一定の理解を示せる。
昨今のSNS上では、「日本人も外国人も公平に扱っている」という姿勢が、相対的に「外国人を優遇している」と判断され、批判の材料になることが多い。加えて、「(日本人中心に採用する)しかない」との語尾から、あくまで日本人が妥協策だと解釈され、「外国人優先で、日本人が二の次の企業だ」との印象を与えてしまったのだろう。
おそらく青野氏は、現状の採用方針を紹介しつつ、それを変えざるを得ないと説明したかっただけだ。しかし、そこに「日本人と外国人」という、センシティブな軸が加わってしまったことにより、一部からのバッシングを受けることとなったのだ。
なお筆者個人の感想としては、青野氏の発言そのものには、「もっと慎重な言い回しもあっただろう」と感じる一方で、猛攻撃を受けるほどのものではなかったと感じる。問題視すべきは、むしろ謝罪文のほうではないか。
先ほど紹介した文面のような「○○と受け取られる表現だった」「不快に思った人が〜」といった言い回しは、最近の謝罪投稿によく見られる。ただ、これらは、あくまで「表現に対する印象」についての見解でしかない。
炎上が起きた際、ネットユーザーが求めている説明は、“言動”のような表面的なものではなく、その根っこにある“価値観”だ。つまり今回で言えば、求められているのは「なぜ日本人と外国人を平等に扱っているのか」といった理念的な部分である。
ハイデイ日高は、すでにその答えを持っているはずだ。実際に公式サイトの「人権・従業員の尊重」ページには、性別や年齢、国籍などを問わず、採用や管理職への登用を行っていると書かれている。そこでは、「同一労働同一賃金」の順守や、特定技能外国人の積極採用にも触れられている。
また、労働組合についても、非正規従業員も加入しているとしつつ、「組合メンバーの約3割は外国人従業員で構成されており、国籍や文化の違いを尊重した対話と協働を大切にしています」と紹介されていた。

日高屋の看板メニューである中華そばは、ベトナム人の従業員にも人気が高いという(写真:美紀 悠子撮影)
「おわび」でなく「ご説明」の罪
結局の所、「国籍を超えて、労使が互いに納得のうえで成り立っている」のであれば、社外の第三者が、とやかく言う話ではない。さすがに全従業員の総意はわかりかねるが、公式サイトの記述は、ひとまずの判断基準にはなるはずだ。
だからこそ、なぜこうした社内環境面を紹介しなかったのか不思議だ。その代わりに、見解では“助成金受給の有無”に触れたが、これでは「ムキになってみずからの正当性を主張している」と感じさせてしまい、かえって火に油を注ぐだけだ。
安価な商品展開で差別化を図る外食チェーンにとって、人件費の問題は避けては通れない。また、日本人を採用したくても、なかなか人数が集まらない現実もある。本来であれば、「安価な労働力」ではなく、「必要な人材」だから採用している――。そうした姿勢こそを、謝罪文で示すべきだったのではないか。
ところが実際の文書は、タイトルが「おわび」ではなく「ご説明」だったこともあり、批判的な消費者からは「悪いと思っていない」「言い訳ではないか」と受け取られた。理念を語るべき場面で言葉を選び損ね、これらの要因が絡み合った結果、いまなお火種がくすぶり続けているのだろう。