新作「どうぶつの森」のカギとなるのは“ユーザー生成コンテンツ”ではないか? マンネリを解消する「危険な銀の弾丸」
『トモダチコレクション わくわく生活』のインタビューを見て驚いたのは、任天堂がUGCに積極的な態度を示した部分である。
UGCはユーザー生成コンテンツのことで、「どうぶつの森」シリーズのマイデザインのようにユーザーがコンテンツを生成して共有できるシステムを指す。たしかに、『トモダチコレクション わくわく生活』を遊ぶとUGCの重要性がわかる。
ところでこれは筆者の思い込みかもしれないが、正直なところ任天堂はUGCをあまり好ましく思っていないのではないかと考えていた。にも関わらず、この言葉を使い、かつ推し進めることに驚いたのだ。
そしてこの方向性を見る限り、次に出る新作「どうぶつの森」にもさらにこれが必要になってくるのではないかと感じられたのである。
自由すぎるUGCと任天堂の相性の悪さ

『あつまれ どうぶつの森』(2020年)
なぜ筆者が「任天堂はUGCをあまり好ましく思っていない」と考えていたのかといえば、それはUGCの99%くらいはろくでもないものだからで、かつ任天堂と相性が悪すぎるからである。現実はスタージョンの法則よりも悲惨だ。
たとえばニンテンドー3DSの『どうぶつの森 ハッピーホームデザイナー』では、ラブホテルを作るユーザーがいるなど、問題あるコンテンツを作成・共有するケースが後を絶たなかった。
それらを管理するのにはかなり労力がかかるだろうし、安心・安全なイメージを持つ任天堂としては、そういうものが一瞬でもサーバー上にあることは避けたいだろう。実際、前出の問題コンテンツはかなり早い段階で削除されていたわけだが、監視するのにもコストがかかる。

『トモダチコレクション わくわく生活』のスクリーンショットは撮影自体は可能なものの、スマホへアップロード機能などが使えない。
そのためか、『トモダチコレクション わくわく生活』にはシェアに対する強い制約が課されている。しかしUGCは制限が強ければ強いほどつまらないのも事実。統制が強い場で発言したがる人は多くないだろう。
ただし、任天堂は遊びの自由を妨げてでも安心をとると明言しており、その気持ちも痛いほどわかる。UGCは自由すぎるのだ。
アルゴリズムを攻略する困ったコンテンツ

『ロブロックス』ではブレインロットのコンテンツがもぐらたたきのように無限に出てくる。
UGCを積極的に活用しているプラットフォームのひとつとして『ロブロックス』が挙げられる。というよりむしろここはUGCのゲームの集合体であり、それがなければ成り立たない。
『ロブロックス』を触ってみればすぐにわかるが、おもしろいといえるゲームは本当に一握りしかない。この場所には少なく見積もって約700万以上のゲームがあるそうだが、まともに遊びたくなるのはその0.001%くらいではないだろうか。
参入障壁が低いので困ったゲームが量産されるのもあるし、いまは生成AIのおかげで作品がさらに量産されやすい。おまけにブレインロットが流行っているせいで、『ロブロックス』は扱いやすいキャラクターまで手に入れてしまった。
こうなるとユーザーに何をおすすめするかのアルゴリズムが重要になり、同時にアルゴリズムを攻略しようとするクリエイターが現れ、結果としてアルゴリズム受けする似たようなゲームが量産される結果となる。

『ブレインロットを盗む』は『ロブロックス』や『フォートナイト』でものすごい人気コンテンツになっており、同時にすごい勢いで類似作品が出続けている。
ゆえに現在の『ロブロックス』では、ブレインロットを集める(ゲームシステムはちょっと違うがそれ以外は全部同じ)放置ゲーが無限に生み出されている。悲惨の一言に尽きる。
もちろん『ロブロックス』のなかにもおもしろくオリジナリティがあるゲームを生み出しているクリエイターもいるわけだが、同時に大量の電子スクラップも生み出されているし、ユーザーが犯罪に巻き込まれるようなスラムすら作られるわけだ。
『ロブロックス』のような場所はあってもよい。しかし、任天堂がそういう場所を目指したいかは話が別だろう。
「安心・安全かつ刺激的なUGC」が実現すれば名作になる

家具の組み合わせだけでもかなり遊べるので、家具自体を作れるようになると遊びの幅が爆発的に広がるだろう。『あつまれ どうぶつの森』(2020年)
このようにUGCはリスクも抱え込むわけだが、それでも魅力的なのは変わらない。なぜならユーザーが自発的に作ってくれれば、ゲームの魅力がどんどん増していくからだ。
『ロブロックス』経済圏もかなり膨れ上がっているようで、上位1000人の開発者は平均約2億円を稼ぐほどにもなっているという。仮にそこまでいかなかったとしても、ぼちぼちの人気が出ればそれなりの収入を得られる可能性もあるだろう。そうなれば皆こぞってゲームを作るのも当然である。
昨今のゲーム、特にマルチプレイを重視するものはアップデートで変化し続けるのが常である。とはいえ、会社の従業員が動くとなるとコストもかかるし制限も多い。ユーザーが一緒に盛り上げてくれれば、と考えるのも必然だろう。
実際、「どうぶつの森」シリーズでもUGCは重要だ。ゲーム内に道のシステムがなかったころ、筆者はほかのユーザーが作ったマイデザインで道路を作らせてもらったし、誰かが作ってくれたしずえの服が流行るようなこともあり、遊びの幅を広げるのに貢献を果たしていた。

『あつまれ どうぶつの森』(2020年)
そもそも初代『どうぶつの森』は、もともとオンラインゲームのようなものを想定されて作られており、根底にはユーザー同士のコミュニケーションを重視する姿勢がある。ゆえに、UGCによる新しい遊びの提案・共有は非常に相性がよいのである。
あやしいネコの顔を描くように新しいどうぶつを生み出したり、あるいは家具をユーザーがある程度自由に作成できるようにしたり、もしくは食べ物のテクスチャを変えて新たなもの作り出せたり、マップやミニゲームそのものを作れるようにすれば、「どうぶつの森」はもっと盛り上がるゲームになるだろう。
「どうぶつの森」シリーズは基本的なシステムがすでに完成しているため、新しい遊びを付け加えるのは容易ではない。しかしより幅広いUGCが実装されたのならば、これは今までの作品を超える名作になる可能性もあるだろう。
そして当然ながら、任天堂の倫理観がそのおもしろさにストップをかけるはずだ。『トモダチコレクション わくわく生活』の共有が容易でない現状を見れば、それがわかるだろう。IGN USのレビューが指摘するように、安全性を確保しながら共有を実現するための仕組みを用意すべきである。
たとえるならばUGCは「危険な銀の弾丸」だ。「どうぶつの森」シリーズのマンネリを打破してより優れたゲームに昇華してくれると同時に、危険なコンテンツも出かねないリスクある代物だ。ただ、とても魅力的な要素であることは『トモダチコレクション わくわく生活』を遊んでいればイヤでもわかる。