水野美紀演じる母親に感じる“江戸と明治の明確な違い”、娘の夢を「恥を知りなさい」と全否定!〈風、薫る第17回〉

『風、薫る』第17回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて12年目の著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第17回(2026年4月21日放送)の「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

今度は環が発熱!

 主題歌「風と町」からはじまる、明けると、りん(見上愛)が帰宅して、美津(水野美紀)と1階で向き合っている。トレインドナースにならないかと誘われたと報告。

 りんは1度は断ったものの、内心迷っていた。

 ここで美津がボケる。

 まず「トレイン」と聞き間違えて蒸気機関車関連の仕事かと思う。

 違う。病人やけが人の看病をする訓練を受けたナースのことだ。

 今度は「なす」と何か関わりがあるのかと思い込む。違う。

 ナースの専門の養成所ができて、そこに通って2年間看病の勉強をすればナースになれるのだとりんは説明するが、美津にはさっぱり理解できない。給金の話になると声を荒らげた。

「恥を知りなさい。一ノ瀬家の娘が、お金欲しさに娘を置いて寮に入り、あげく病人の面倒を見る下女になるなど」

 りんは女性が自立する道に興味を持つが、美津は徳川の時代に戻りたいと思っているような人なので、お金を稼ぐために働くなんてことは考えられない。前作『ばけばけ』のタエ(北川景子)とさぞ気が合うことだろう。

 タエが働くくらいなら物乞いをしていたエピソードは強烈だった。

 美津の声があまりに大きくて、2階で環(宮島るか)の相手をしていた安(早坂美海)が心配して降りてくる。

 下女呼ばわり。命を金に替える仕事と偏見をもつ美津に、「看病してくれる人たちをさげすむ世の中、社会の方がおかしい」と反論するりん。

「社会」という言葉遣いに、慣れてない感じが出ている。

 りんは働いてお金を稼いで、環を女学校に行かせたい。だが美津は「ナースなどありえません」と頑固。

 話は平行線。この流れを変えたのは、環だった。

「かか」と呼ばれ、りんが2階に行くと、環は熱を出していた。

「私、あの時、何もできんかったから」

 第16回の少年の嘔吐(おうと)に続き、環の高熱。初週はコロリ。看護師ものだから、病気ネタが続く。

 不穏な鐘の音がして、美津が2階に上がってくる。これまでこんなに熱があがったことはないと心配するりん。あちこち慣れない場所に連れ回されて疲れてしまったのだろう。かわいそうに。

 美津は手ぬぐいにねぎをのせ、環の首に巻く。

 りんが子どもの頃、熱を出したときにはこれが効いたという。

「私はあなたを子どものころから看病してきました」と、他人の看護よりも家族の看護で十分だということを暗に示す美津。

 母と看病を交代し、1階に降りると、安がおにぎりを握っている。りんは沸いているおつゆをお椀に入れる。日常の生活動線が“それなりに”再現されているのは、『風、薫る』の良いところだ。湯気もふんわりといい感じ。

 りんは、父・信右衛門(北村一輝)のことを思い出していた。あのとき、自分が適切な看護の方法を知っていたら父は生きられたかもしれないと後悔する。

「私、あん時、なんもできんかったから」と『おかえりモネ』(21年度前期)のようなことを言う(主人公が東日本大震災のとき何もできなかったことを悔いていた)。

「今だって、環に何をしていいのか……」

 確かに、あのとき、捨松(多部未華子)のように、吐瀉(としゃ)物の処理の仕方や、口をゆすいでから水を飲ませる知識などがりんにあれば、少なくとも信右衛門の苦しみは軽減できたかもしれない。

 民間療法が理屈に合っていることもある。ねぎを首に巻いて熱を引かせるのも、殺菌成分が含まれているためだとは言われている。

 ただ、もっと、研究を進めて、医学という形に昇華していくことでより的確に病気を治すことができるわけだ。

 捨松の行いを見るに、まずは難しいことではなく、衛生面の徹底であろう。

 衛生面における時代の変化は興味深い。

 一晩中、環のそばに寄り添っていたりんだが、朝方、つい居眠りしてしまっていると、環の熱が下がっていた。

「おなかすいた」という環に、小魚の煮物を食べさせるりん。おいしそうに食べる環が愛らしい。ここで食べるものが小魚というのが渋い。質実剛健。

吉江はなぜ行李を開けたのか

 りんが環の熱を心配している頃、直美(上坂樹里)は鹿鳴館で仕事をしている。直美は髪に小日向(藤原季節)にもらったかんざしを挿して、階段を下りていく。それを見ているメイド仲間。

 1階で小日向が立ち往生している。少将に至急の用があって来たが通行証を忘れたと聞いて、直美は入館できるように図る。お嬢様だという触れ込みだからか、受付の人たちは簡単に通してしまうし、妙に恭しくお辞儀して道を開ける。

「小日向さんと私の仲ですから」とすっかり癒着している。

 途中、小日向に髪飾りを褒められて直美はほほ笑む。気づいてくれて、それはそれはうれしいことだろう。

 直美にはナースの仕事は必要ない。将来性のある夫候補をゲットしたから。

 だが仕事が終わって帰り道、直美は浮かない顔をしている。

 教会に立ち寄る直美。誰もいない礼拝堂にちょうど吉江(原田泰造)が入ってくる。行李を開けているのでたまたま何かを取りに来たようで。直美は吉江に話しかける。

 どうして牧師になろうと思ったのか。「人を救いたいからですか?」「(熱心に信仰していない)私にだって親切にしてくれて」と尋ねる直美に、「直美さんと話していると、そうやって正直な言葉が次々と出てきて楽しいからです」と穏やかに応える吉江。

 炊き出しをはじめとして誰かを助けて喜ばれることで「私が救われているのかもしれませんね」。

 こんな話をしながら、直美は結婚が決まりそうなことを報告し、吉江はそれを祝福する。

 それが「あなたの本当の幸せならば」と。Is this your life?

 このまま嘘(うそ)をついて結婚に持ち込んで、はたして幸せなのか(結婚したらお嬢様じゃないのは速攻バレるだろうし)と直美は迷っている。結婚以外の選択肢――トレインドナースの道も提示されたので、迷ってしまうのだろう。

 重要なシーンで吉江と語る必要性とそのため偶然、吉江が入ってくる意味を作るために行李を開けさせたのはわかる。だが、手ぶらで吉江は礼拝堂から出ていくのだ。なんのために行李を開けた! 探しものをしに来て見つからなかったというサブテキストだとしたら、なかなか細かすぎる。

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主なシーンより

第4週(4月20日〜24日)

「私たちのソサイエティ」あらすじ

直美(上坂樹里)が捨松(多部未華子)の炊き出しを手伝うため貧民街に向かうと、同じ場所で吉江(原田泰造)とりん(見上愛)も炊き出しに来ていた。気まずい空気が漂う中、男の子が体調不良に。直美とりんが迷わず男の子を助けようとする姿を見た捨松は、2人を見初め、トレインドナースにならないか、と声をかける。りんは興味を持つが、美津(水野美紀)は大反対。そんなある日、事件が起こる。

連続テレビ小説『風、薫る』

作品情報

連続テレビ小説「風、薫る」。主人公はそれぞれに生きづらさを抱えた2人の女性。当時まだ知られていなかった看護の世界に飛び込み、傷ついた人々を守るために奔走し、時に強き者と戦う——明治という激動の社会を舞台に、幸せを求め生きるちょっと型破りな2人のナースの冒険物語です。

【脚本】吉澤智子

【原案】田中ひかる「明治のナイチンゲール 大関和物語」

【音楽】野見祐ニ

【主題歌】Mrs. GREEN APPLE 「風と町」

【語り】研ナオコ

【出演】見上愛 上坂樹里 佐野晶哉 生田絵梨花 小林虎之介 早坂美海 藤原季節 三浦貴大 内田慈 菊池亜希子 丸山礼 根岸季衣 小林隆 高嶋政宏 片岡鶴太郎 多部未華子 原田泰造 水野美紀 坂東彌十郎 ほか

【放送】2026年3月30日(月)開始(全26週130回)