米海軍長官、トランプ氏に解任撤回求めた内幕

米議会の公聴会に出席するフェラン氏(2025年5月)

ジョン・フェラン米海軍長官は22日夜、長年の友人であり隣人でもあるドナルド・トランプ大統領が自身の職を守ってくれると期待しながら、1時間以上ホワイトハウスのウエストウイング(大統領執務室のある西棟)のロビーに座り続けた。だが同氏は失望を胸に、その場を立ち去る結果となった。

その日の午後、フェラン氏は上司であるピート・ヘグセス国防長官から電話で辞任を求められた。フェラン氏は当日の大半を米議会で過ごし、海軍の造船計画や国防総省の予算要求について議員たちと協議を行っていた。

複数の米当局者によれば、議会から数マイル離れたホワイトハウスでは、フェラン氏の運命を決定づける会合が開かれていた。ヘグセス氏とスティーブン・ファインバーグ国防副長官は造船に関する優先課題、特に「ゴールデンフリート(黄金艦隊)」計画と蒸気動力への依存度拡大において、フェラン氏が十分な速度で動いていないとトランプ氏に主張。 海軍には新たな指導者が必要だと参加者たちは判断した。

フェラン氏はトランプ氏の秘書官を含む複数の関係者に電話をかけ、大統領と話す必要があると伝え、ホワイトハウスへ向かった。22日の夜にトランプ氏がわずかな時間を作ると、フェラン氏は自身が職にとどまることができるようその場で要求。だがトランプ氏はヘグセス氏の判断を支持したと、政権高官は明らかにしている。

フェラン氏の解任は、ここ数週間にわたり国防総省で幹部の交代が相次いでいるにもかかわらず、ヘグセス氏がトランプ氏からの支持を維持していることを示している。トランプ氏はフェラン氏の解任を承認したことで、自身の選挙運動のために数百万ドルを集めた個人的な友人であり隣人でもある人物よりも、ヘグセス氏につく形となった。トランプ氏はフェラン氏の解任に関する作業をヘグセス氏に指示したと、政権当局者たちは述べている。

トランプ氏は23日のホワイトハウスでの発言で、フェラン氏をたたえつつも、「彼は猛烈に仕事をする人物だが、他の人々と一部で対立があった。主に艦船の建造・調達を巡るものだ。私は新たな造船計画に非常に積極的だが、どういうわけか彼はうまくやっていけなかった」と述べた。

「トランプ級」戦艦の発表を行うヘグセス氏とフェラン氏(2025年12月)

フェラン氏やその側近にとって、解任は予想外のものだった。複数の米当局者によると、同氏は国防総省のショーン・パーネル報道官が22日のソーシャルメディアに投稿した発表文で解任の決定を把握。パーネル氏は同じ投稿の中で、海軍次官のフン・カオ氏が長官代行を務めると明らかにした。

複数の当局者によれば、米国がイラン港湾に対する海上封鎖を行うこの難しい局面において、ヘグセス氏がここ数週間に国防総省幹部を次々と入れ替えていることが懸念を引き起こしている。海軍長官はこうした作戦指揮系統には含まれないが、国防総省が史上最大規模の予算要求を行っている中、フェラン氏は重要な役割を担っていた。

また事情に詳しい関係者によると、政権内の一部当局者は、特に海軍がイラン港湾への複雑な封鎖作戦を実施している中での解任について、ヘグセス氏に不満を抱いている。

トランプ氏がフェラン氏の突然の解任を支持したため、ヘグセス氏の次の標的は誰かという疑問が関係者の間で広がっている。ヘグセス氏は今月、陸軍トップであるランディ・ジョージ参謀総長を解任。またJD・バンス副大統領の近しい盟友であるダン・ドリスコル陸軍長官とも対立している こうした動きはトランプ政権内で労働長官、司法長官、そして国土安全保障長官が短期間に相次いで交代し、人事の流動化が続く中で起きている。

フェラン氏は声明で、海軍長官を務めたことは「生涯の名誉」だったと述べた。さらに「このレベルのリーダーシップには課題がつきものだ。慎重さや競合する利害、内部の摩擦によって意思決定が遅れることもある。しかし、われわれの使命は明確さ、緊迫感、そして結果を求めるものであり、私はそれを決して見失わなかった」と付け加えた。

事情に詳しい複数の関係者によると、フェラン氏が解任を受け入れる前にトランプ氏と直接話そうとしたことは、フェラン氏が指揮系統を尊重しないことを示すもので、これこそが解任された理由の一つでもあった。関係者たちによると、トランプ氏はこれを容認しなかった。ホワイトハウスはまた、大統領が求めていた名誉勲章受章者リストを含むさまざまな問題でフェラン氏と対立していたという。

上院公聴会に出席するドリスコル陸軍長官とジョージ参謀総長(2025年6月)

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がこれまでに報じているように、フェラン氏の解任はヘグセス氏およびファインバーグ氏との数カ月にわたる緊張関係の末に起きた。 この緊張には、フェラン氏とトランプ氏が親密な関係にあることも影響した。ヘグセス氏とファインバーグ氏は、フェラン氏がヘグセス氏を介さず、現代的な戦艦に関する案を大統領に直接売り込んだ際に特に不快感を示した。

事情に詳しい関係者たちによると、ヘグセス氏とファインバーグ氏はここ数カ月にわたり、通常であれば海軍長官に属する権限を取り上げることでフェラン氏を脇に追いやろうと試みた。ファインバーグ氏は昨年、潜水艦調達担当の統括官ポストを新設し、自身への直属とした。この役目は通常の場合、海軍内に置かれるものだと関係者たちは述べている。

ファインバーグ氏はまた、造船大手幹部との頻繁な会合にフェラン氏を招待しないことが多かったと事情に詳しい関係者の1人は述べた。

トランプ氏はフェラン氏への対応とは異なり、ヘグセス氏が解任した他の幹部に対しては明示的に感謝の言葉を述べることはほとんどなく、これは2人の強い結びつきを示している。 フロリダ州にあるフェラン氏の自宅は、トランプ氏の私邸「マールアラーゴ」のすぐ近くにあり、2人は定期的に夕食を共にしている。

フェラン氏は昨年、複数の議員に対し、深夜にトランプ氏と造船について携帯メッセージをやり取りしていると語っていた。