「なんとなく大学」はなぜ許されにくい? 女子が男子より“理由”を求められやすいワケ

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大学進学は本人の自由な選択のように見える。しかし実際には、誰もが同じように進路を選べているわけではない。とりわけ女子の場合、「なんとなく大学へ行く」という選択は許されにくく、将来の職業や資格と結びついた明確な理由が求められがちだ。なぜ女子の進路には、これほどの「説明」が必要とされるのか。※本稿は、教育社会学者の寺町晋哉『なぜ「地方女子」は呪縛になるのか』(集英社新書)の一部を抜粋・編集したものです。
なぜ女子は短大や
専門学校を目指す?
図3は、2024年度の短大進学率(*注1)を都道府県別・性別であらわしたものである。短大への進学は、圧倒的に女子で占められていることがわかる(*注2)。図4は、四年制大学と短期大学の進学率を合計したものである。

同書より転載

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*注1 短大進学率は大学進学率と同様、「出身高校の所在地別短期大学進学者数/3年前の中学等卒業者数(中学校+義務教育学校+特別支援学校中学部+中等教育学校前期課程)」で算出している。
*注2 全国合計は、男子0.8%、女子6.0%である。
四年制大学進学率(図1)と比較すると、多くの都道府県が点線の対角線付近から左上に移動している。つまり、短大を含めた進学率は、女子が高くなる都県も出てくる(*注3)。専門学校へ目を向けても、全ての都道府県で女子の進学率が高い(*注4)(図5)。専門学校と短大・大学では進学率の算出方法が異なるため、単純な合算は避けなければならないが、それでも専門学校を含めた高等教育進学率は、大半の都道府県で女子が高くなる。

同書より転載

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女子は高卒後すぐに就労する選択肢をとりづらい。そのため、次の教育機関へ進学する傾向にある。確かに、私的内部収益率を考えると、女性のキャリアに限って言えば、短大や専門学校は「合理的」ではあるものの、多くの女子高校生がそのような計算をふまえた上で進路選択をしているとは考えにくい。むしろ、インターネットなどで簡単に調べられるような情報では、女性であっても大卒の生涯賃金の方が高く、進路指導などでも大学進学の方が将来の選択肢が広がるといった情報が伝達されているように思われる。
それでも女子の一定割合が、大学ではなく短大や専門学校へ進学するのはなぜだろうか?
*注3 全国の短大・大学進学率の合計は、男子61.2%、女子59.8%である。
*注4 専門学校は大学を卒業後や就労後も入学できるため、高校卒業後すぐに入学しやすい短大や大学と同じような算出ができない。そこで、2023年度の高等学校(全日・定時制・通信制)の「卒業後の状況調査」における「専修学校(専門課程)進学者」を3年前の中学等卒業者数で除して算出しており、短大・大学進学率とは計算方法が異なる点に注意してほしい。
女子のほうが進学以降の
将来展望が明確
「子どもの生活と学びに関する親子調査」を参照しよう(*注5)。高校3年生が進路決定において「参考にしたこと」の中で、「とても参考にした」「参考にした」を合わせた割合が70%以上のものは、「卒業後の進学・就職の実績」が男子80.7%/女子86.2%、「自分の成績」が男子83.9%/女子81.7%、「将来就きたい仕事」が男子77.5%/女子81.3%、「カリキュラムや授業の内容」が男子72.3%/女子83.4%となっている。その他で男女差が5ポイント以上あったものは、「資格や免許が取れること」が男子59.1%/女子70.6%、「通学のしやすさ」が男子59.6%/女子65.1%、「建学の理念や校風」が男子50.0%/女子62.1%であった。
「将来展望」についても尋ねられているが、「とてもあてはまる」「まああてはまる」の回答で男女差が5ポイント以上あったものは、「社会のために貢献したい」が男子71.7%/女子78.5%、「資格を生かした仕事をしたい」が男子71.3%/女子78.7%、「将来就きたい仕事がはっきりしている」が男子54.2%/女子64.9%、「地元で仕事や生活をしたい」が男子51.2%/女子57.4%、「出世して高い地位につきたい」が男子56.1%/女子46.2%となっている。
「進路決定の参考」「将来展望」ともに男女で重なる部分はあるが、女子の方が資格と関連した進路選択や将来展望を抱くこと、就職に関心が高いこと、将来の職業が明確であること、「地元」志向の傾向をもっていることがわかる。豊永耕平の『学歴獲得の不平等』も、高校生の「大学進学の考え方」において、男子よりも女子の方が「将来の職業や資格取得を重視」しやすいことを指摘している。
*注5 野﨑友花「高校生活の振り返りと進路選択――『卒業時サーベイ』の主な結果から」、東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所(編著)『子どもの学びと成長を追う――2万組の親子パネル調査から』(勁草書房、2020年)。
「なんとなく」は少ない
女子の大学への進路選択
保護者はどうであろうか。同じく『学歴獲得の不平等』によれば、子の「大学進学の考え方」において、母親が「将来の職業や資格取得を重視」するかどうかは、母親の高等教育経験の有無による差はあるが(*注6)、子どもの性別による違いはないという。ただし、調査対象が大都市圏の家庭のため、非大都市圏も同様の結果になるかはわからない。
一方、母親は息子よりも娘に対して「なんとなく進学することに反対」する傾向にあることがわかっている。これまでみてきたように、男子と比較して女子が進路選択に対して「明確な意志」や行動を示していたのは、「何のために進学するのか」について、母親を含めた周囲の人々から尋ねられやすかったことも影響しているかもしれない。

『なぜ「地方女子」は呪縛になるのか』 (寺町晋哉、集英社新書)
もう1つ、興味深いことがある。息子よりも娘に対して、母親が「子どもが将来なりたい職業についての話」をよくする傾向にあるのだ(*注7)。よく話をするからといって、娘の「将来なりたい職業」に干渉していたかどうかはわからないが、少なくとも母親の意向が娘に伝わっている影響はあるだろう。
こうしてみると、大学という進路選択をするにあたり、男子と比べて女子は、将来展望や将来就きたい職業が明確な傾向にあり、「何のために進学するのか」を周囲の大人たちに示すことが多いと考えられる。「大学へ行ってから将来のことを決める」「なんとなく」という理由で大学進学する女子は、それほど多くないのかもしれない。
*注6 「高等教育経験なし」の母親の方が「経験あり」の母親と比べ、「将来の職業や資格取得」を重視しやすい(豊永耕平『学歴獲得の不平等―親子の進路選択と社会階層』勁草書房、2023年)。
*注7 「中学校の頃」のみ男女差はみられない。