新幹線・特急・私鉄、調べてわかった「トイレの充実度」 多数派は「2両に1両」だが8両編成に1両だけの例も
ゴールデンウィークをはじめ、夏休み期間や年末など長期休暇の期間は長距離の列車移動が増える時期だ。長時間の乗車の際に気になることの1つがトイレだろう。頻繁に行くという人はもちろん、子どもやお年寄りと一緒の旅行の場合、揺れる車内でトイレを探して歩くのは苦労することも多い。
【図と表でわかる】▶新幹線や特急など長距離列車には必要不可欠なトイレ▶列車によって「トイレ付き車両」の数はどのくらい違う?▶JR在来線や大手私鉄の主な特急列車を調査▶なかなか見比べることのない新幹線や新型特急列車のトイレの数々も
新幹線やJR在来線特急、私鉄の有料特急列車は基本的にトイレを備えている。だが、その数や配置は列車によって異なり、とくに私鉄特急は編成が長くてもトイレ付き車両が少ない列車もある。そこで、全国の主要な新幹線・JR特急・私鉄特急の編成中にあるトイレ付き車両の数を調べてみた。
新幹線は「2両に1両はトイレ付き」
JRの新幹線や在来線特急は、だいたい2両に1両の割合でトイレ付きの車両を連結している。国鉄時代の車両は1両に1カ所トイレがあるケースが多かったが、新幹線は開業時の0系から1両おきを基本とし、その代わり個室2つ、男性小用1つと複数のトイレを設けるようにした。
現在も新幹線は基本的にこの配置を踏襲しており、東海道・山陽新幹線のN700AやN700S(16両編成)もそうだ。設置しているのは奇数号車(1・3・5・7・9・11・13・15号車)で、設置位置は上り側(東京寄り)の車両端。基本的に個室2つ(男女兼用と女性用)と男性小用1つで、11号車は男女兼用個室1つと多目的トイレが1つだ。
山陽新幹線と直通する九州新幹線も、8両編成のN700系、6両編成の800系ともに奇数号車の上り側にトイレを設置している。「離れ小島」の西九州新幹線も同様だ。
東海道・山陽・九州新幹線の座席の番号は、各車両とも下り側、つまり東海道・山陽なら博多寄り、九州なら鹿児島中央寄りが1番で、東京側に向かって増えていく。トイレがあるのは奇数号車の上り側なので、トイレに近い席がいい人は座席を選ぶとき、奇数号車なら数字の大きい座席、偶数号車なら若い番号の座席を選べばいいわけだ。
JR東日本の新幹線も、東北新幹線のE5系(北海道新幹線H5系)・E2系(どちらも10両編成)は奇数号車にトイレを配置している。設置位置は新青森・新函館北斗寄りの車両端だ。E2系は車いす対応トイレは9号車の1カ所だが、E5系は5号車にもある。その分女性用個室は1つ少ない。

H5系の多目的トイレ。E5系と基本的に同じ構造だ(撮影:尾形文繁)
上越新幹線・北陸新幹線のE7系・W7系(12両編成)も基本的に奇数号車の新潟・敦賀寄りにトイレを設置しているが、11号車にはなく、代わりに12号車の東京寄りにある。もっとも、隣の車両であり実際の使用時に気にすることはないだろう。
「ミニ新幹線」はちょっと違う
一方、「ミニ新幹線」である秋田新幹線のE6系、山形新幹線のE8系は配置がやや異なる。どちらも7両編成で、号車番号は11~17号車。個室はいずれも男女兼用だ。E6系は12・13・14・16号車、E8系は12・14・15・16号車にトイレがあり、7両中4両と設置割合は多い。

E6系の多目的トイレ。車体が小さい在来線規格の「ミニ新幹線」だが広いスペースを確保している(撮影:梅谷秀司)
基本的に、新幹線は2両に1両の割合でトイレ付き車両を連結していることになる。
JRの在来線特急は、同じ列車名でもダイヤによって編成が異なるケースが多いため一概には言えないが、ほとんどは2両に1両かそれ以上の割合でトイレ付きの車両を連結している。
例えば、JR東日本の中央本線特急「あずさ」は12両編成の列車の場合7両と半数以上の車両にトイレがあり、しかも車いす対応も2カ所ある。大阪―敦賀間を結ぶJR西日本の特急「サンダーバード」も9両のうちトイレ付きが6両だ。この程度の数があれば、混雑時もトイレが埋まっていて困ることはほぼないだろう。
一方で少ない列車もある。成田空港アクセスの特急「成田エクスプレス」のE259系は、編成両端の運転台のある車両(先頭車)にしかトイレがない。E259系は6両編成で、これを2本つなげて12両編成で運転しているので、12両中トイレ付きの車両は1・6・7・12号車の4両のみだ。
普通車の座席の前後間隔(シートピッチ)がJR在来線特急の中でもとくに広く、ゆったりした車内で知られるE259系だが、同時にJRの特急としてはトイレが少ない列車でもある。もっとも、空港アクセス列車なので乗車時間は短めだ。

JR在来線トイレ付き車両 NEX あずさ 比較
私鉄特急はトイレが少ない?
私鉄の特急は、JRに比べてトイレ付き車両の両数が少ないケースが目立つ。運行距離がJRの特急より短く、所要時間も短いのがほとんどだからであろう。
大手私鉄の有料特急列車を比較してみると、もっともトイレ付き車両が少ないのは、京成電鉄の成田空港アクセス列車「スカイライナー」で、8両編成中1両のみだ。JRも私鉄も成田空港アクセスの特急はトイレが少ないということになる。
ただ、「スカイライナー」は在来線最速の時速160km運転で、全区間乗っても最長45分程度の列車であり、トイレは乗車前か後に済ませる人がほとんどであろう。トイレ付きの車両は編成中間の5号車で、一般の個室と多機能トイレ、男性小用トイレを備えており設備は充実している。
私鉄特急の多くは所要時間が1時間程度であり、後述する近畿日本鉄道(近鉄)を除けばトイレ付き車両は3両~4両あたり1両といった割合が多い。
例えば、西武鉄道の池袋線・西武秩父線を走る特急「Laview(ラビュー)」は8両中2両、新宿線の特急「小江戸」に使われる「ニューレッドアロー」10000系は7両中2両。前者は池袋―西武秩父間で約1時間20分、後者は西武新宿―本川越間で50分程度だ。

西武鉄道の特急「Laview(ラビュー)」(撮影:尾形文繁)

西武の特急「Laview(ラビュー)」は黄色いシートだがトイレのインテリアも黄色が基調だ(撮影:尾形文繁)
南海電気鉄道も、関西国際空港のアクセス特急「ラピート」は3両あたり1両、「サザン」などの和歌山方面特急や「こうや」などの高野線特急は4両に1両の割合だ(和歌山方面特急は指定席車両のみで算出)。
観光特急は多く、通勤特急は少ない
また、観光利用が多い列車は比較的多く、通勤など日常利用客の多い特急は少ないという傾向もある。
小田急電鉄は、看板列車の特急「ロマンスカー」を観光と通勤の「二刀流」で活用している。展望席がある観光主体の70000形「GSE」は、7両のうち3両にトイレを設けている。
一方、通勤利用を主眼とした30000形「EXE」「EXEα」や、地下鉄千代田線乗り入れ特急などに使われる60000形「MSE」は、10両編成のうちトイレ付きは3両と少なめだ。これらの車両は切り離して6両編成(一部4両編成)でも運転するため、6両編成の場合はトイレ付きは2両、4両編成のときは1両のみとなる。
小田急の特徴は、特急車両の全車種に女性用個室を設けている点だ。

私鉄トイレ付き車両の比較
広大な路線網にさまざまな特急が走る東武鉄道は、観光要素の強い100系「スペーシア」や長距離走行する200系「りょうもう」は6両中にトイレ付きが3両とJR在来線特急並みだ。だが、新型特急のN100系「スペーシアX」は6両中2両に減った。
一見後退したかのようにも見えるが、スペーシアXは個室やプレミアムシート、ラウンジなど車内スペースをぜいたくに使っており、同じ6両編成でも定員は212人と、100系スペーシアの284人より減っている。定員との比較でいえば、トイレの数はほとんど変わっていないといえる。

東武鉄道の特急「スペーシアX」(撮影:尾形文繁)

東武特急「スペーシアX」の多目的トイレ。重厚なイメージのインテリアだ(撮影:尾形文繁)
トイレ数充実の近鉄特急
私鉄でトイレが充実しているのは前述した近鉄の特急である。観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」以外、基本的に2両に1両はトイレ付き車両となっている。

近畿日本鉄道(近鉄)の特急「ひのとり」(撮影:ヒラオカスタジオ)

近鉄特急「ひのとり」の多目的トイレ(撮影:ヒラオカスタジオ)
近鉄特急は車種が多いが、名古屋―大阪間を結ぶ看板特急「ひのとり」や観光特急「しまかぜ」のように運行区間が決まっている列車だけではなく、さまざまな特急に使用される汎用性の高い車両でもこの割合は変わらない。路線延長が私鉄最長で広大な特急列車網を運行するだけあり、JRの在来線に近い性格があるといえるだろう。
長時間の乗車には不可欠な列車のトイレ。近年は清潔に保たれた列車が増え、快適に使えるようになってきた。数が多ければ便利ではあるが、車内スペースとの兼ね合いや水の供給、車両基地での汚物処理装置の都合など設置にはさまざまな制約がある。トイレ設置車両が少ない列車でも、極端に遠い車両がないようその連結位置には工夫がみられる。
特急列車にトイレがどのくらい設けられているかは、その車両や列車の性格を示すものでもある。列車のトイレを利用する際、そんなことを考えてみるのも悪くないだろう。

JR在来線主要特急 トイレ付き車両の数

私鉄特急のトイレ付き車両数