テレビ業界辞めて「月10万自腹"実話怪談YouTuber"」に転身 人生を賭けて「登録53万人」を生んだ"異色キャリア"の裏側

世の中に「実話怪談」を届け続けるYouTubeチャンネル『ごまだんごの怪奇なチャンネル』を運営するのは、ショウタさん(38)だ。
ショウタさんが映像を作り、弟が語り手を務めるチャンネルの登録者数は53.3万人(2026年4月現在)を誇る。
かつては、テレビ番組制作会社に勤めて音楽番組『ミュージックステーション』などを担当
しかし一転、テレビ業界7年ほどでカナダへと留学し「月10万円」の自腹を切って全国各地で怪談を聞き続ける専業YouTuberとなった。
その背景にあった、紆余曲折のキャリアとは――。

弟と二人三脚で「月10万円」の怪談取材に

テレビ制作スタッフから、専業YouTuberに転身したショウタさん(38)。運営するYouTubeチャンネル『ごまだんごの怪奇なチャンネル』は、チャンネル登録者数53.3万人(2026年4月現在)を誇る。

【写真で見る】テレビ業界辞めて「月10万自腹"実話怪談YouTuber"」に転身 人生を賭けて「登録53万人」を生んだ"異色キャリア"で話題のショウタさん(38)、その素顔

扱うテーマは「実話怪談」だ。

全国各地のチャンネル視聴者から実際に体験した怪談エピソードを拾い集め、日夜、発信している。

ショウタさんが映像を作り、その弟が語り手を務める『ごまだんごの怪奇なチャンネル』で、ショウタさんは専業YouTuberとして「月10万円」の自腹を切っての「怪談取材」を続けている

現在は神奈川県に住み、地方へ行く場合は弟との宿泊費と交通費で7万円前後、取材の場となるレンタルスペースでは、飲み物やお菓子代も含めて2〜3万円前後かかる。関東圏でも宿泊が必要であれば6万円前後の自腹を切っている。

「年間でならせば『月10万円』を目安として、超えた月は別の月で安く抑えながら平均を保っています」

実際の「怪談取材」は、ショウタさんたちの呼びかけで集まったチャンネル視聴者の参加者5人ずつを集めて行われるという。

原則として日曜に2回と、月曜に1回。1回の取材では3時間を目安に、ショウタさんが進行役となり、弟が口火を切って参加者が順番に怪談を紹介していく。

「1人ずつ怪談エピソードを話してもらい、複数のエピソードがある人がいれば2周、3周……と、時間内でローテーションしていきます」

現地で人に聞き「話のカケラ」を拾う

53.3万人ものチャンネル登録者がいるなら、メールやメッセージで怪談エピソードを求めればテキストでも情報が集まってくるのではないか。

そう疑問をぶつけたが、会って話を聞く大切さを説くショウタさんは「恐怖体験をした本人ですら気づいていない怖さ、そうした“カケラ”がこぼれてくるので」と目を輝かせる。各地で怪談を拾い集めていると、地域ごとの特色も出る。

「例えば、沖縄では一度離れた魂を身体に戻す儀式『マブイグミ』を、現地のスーパーで半日かけて行ったという話もありました。関東に住む僕にとって、文化の違いを感じる話でした」

弟と二人三脚で「月10万円」の怪談取材に, 現地で人に聞き「話のカケラ」を拾う, Mステの現場で学んだ「取材の心得」, 迷っていた弟に「一緒にやろう」と持ちかけて

神奈川県で行われた「怪談取材」の様子(写真:ショウタさん提供)

チャンネルの動画では、現場で聞いたエピソードをもとにして台本を作る。しかし、聞いた話を誇張せずに「事実のみを伝える」と徹底している。

実際の「怪談取材」では時折、作り話を披露する参加者もいる。

しかし、ショウタさんは「もちろん話を掘り下げるうちにわかることですが、ボロを出させたいわけではなくて。時々で何を思ったのかなど、その場でしっかり聞いておこうとずっと貫いています」と実感する。

現場に赴き、生の声を拾う。現在、精を出す「怪談取材」の礎には、テレビ制作現場での経験があった。

中学時代に見たドラマ『TRICK』、バラエティ番組『銭形金太郎』に憧れ、ショウタさんが映像マンとなったのは2010年秋。

大学中退後、アルバイトで学費を稼いで入学した映像関連の専門学校を経て、就職先のテレビ番組制作会社で働きはじめた。

「履歴書を提出して、後日の30分ほどの面接で合格するほどゆるかったです。最初にADとして関わったのは大型スポーツ特番でした。コンプラ(イアンス)もゆるかった当時、怒られたり殴られたりも日常茶飯事でしたが、大学も中退していたし、辞める選択肢はなかったです」

Mステの現場で学んだ「取材の心得」

その後、ADからディレクターに。キャリアアップのきっかけとなった音楽番組『ミュージックステーション』では、番組内のランキング発表時に流れる街頭インタビューが仕事に。新宿や渋谷で多くて1日20組に「最近は何を聴いていますか?」と聞きまわり、取材の真髄を知った。

掘り下げれば心を開いてくださると知って。意外な出会いもあり、iPhoneではなくiPadで曲を探しはじめた人に『iPhoneは?』と聞いたら『ケータイをなくしてしまって』と説明されて、距離を一気に縮められたこともあります」

弟と二人三脚で「月10万円」の怪談取材に, 現地で人に聞き「話のカケラ」を拾う, Mステの現場で学んだ「取材の心得」, 迷っていた弟に「一緒にやろう」と持ちかけて

音楽番組『ミュージックステーション』の現場で働くショウタさん(写真:ショウタさん提供)

ディレクターへの昇格後には映像の構成、放送用に編集する作業にもかかわりはじめる。それでも、インタビューの現場には出た。

しかし、自身の責任は変わり、次第に上役である“演出”の目を気にするように。

「音楽番組以外にも幅を広げるべきでは」との思いから、バラエティ番組にも関わったが、ショウタさんの中には「自分のやりたいことなのか」という疑問が強くなった。

テレビとは別の進路はないか。コンプライアンスの強まりから、例えば「女優」ではなく「俳優」と表記するべきかなど、面白さを追求するための本質的な話題とは異なる、制作上での議論にもショウタさんは違和感を持ちはじめたという。

そして、映像制作業界へ入って7年ほど。業界から離れて、ワーキングホリデーの制度によってカナダへと渡った。

「テレビ朝日でお世話になっていた先輩スタッフは、僕の決断に驚いていました。ただ、ワーキングホリデーの制度を使える上限ギリギリの年齢でしたし、迷いはなかったです。カナダでは半年ほど、英語の勉強とアルバイトをして、帰国後は気持ちを新たにテレビの仕事へ復帰しました」

迷っていた弟に「一緒にやろう」と持ちかけて

現在のYouTubeチャンネル『ごまだんごの怪奇なチャンネル』は、もともとショウタさんの弟が単独で運営し、ネットの掲示板にあった怖い話を朗読していた。

しかし、弟の心中では活動に対する迷いも。さらに、知人にチャンネルの運営をまかせていたこともあり、第三者に頼り切るリスクを考えたショウタさんは救いの手を差し伸べた。

「弟がうつのような状態になりかけていたし、他の人に運営を任せるくらいなら、僕から『一緒にやろう』と提案したんです」

そして、テレビの仕事と並行しながら2021年10月、33歳で兼業YouTuberに。

弟と収益を半々で分け合いながら、2024年1月に36歳で専業YouTuberとなり、全国各地へ足を運ぶ『怪談取材』のスタイルの確立後にはチャンネル登録者数が「10万人から50万人」に伸びた。

弟と二人三脚で「月10万円」の怪談取材に, 現地で人に聞き「話のカケラ」を拾う, Mステの現場で学んだ「取材の心得」, 迷っていた弟に「一緒にやろう」と持ちかけて

いずれは全都道府県で「怪談を取材したい」とも意気込む(写真:ショウタさん提供)

怪談への執念と熱意は伝わり、年間の収益はテレビ番組制作会社時代の給与を上回った。

しかし、YouTubeのようなプラットフォームでは収益がついえる不安もつきまとう。妻や子も抱えている生活に「安心」はない。

それでも「何があっても『怪談』を軸にしていきたい」と、先を見据えるショウタさん。テキストプラットフォーム「note」での投稿も開始して、今日もまた、各地を飛び回っている。