高市政権を「新軍国主義」「新戦前」と猛烈批判! 中国はなぜエキセントリックな「反日攻勢」を強めるのか

中国の「口撃」が止まらない

俗に、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」と言うが、中国は日本の高市早苗政権のことが、とことんお嫌いらしい。ホルムズ海峡が封鎖されようが、ホワイトハウスで爆発事件が起ころうが、激しい日本批判の「口撃」が止まることはない。

中国は、一体何をそんなに怒っているのか?

中国は日々、対外的な主張を、主に二つのルートで発信している。一つは、平日に毎日午後3時から20分間行う中国外交部の定例会見で、もう一つは日曜日以外の毎日発行している中国共産党系の国際紙『環球時報』(党中央委員会機関紙『人民日報』の姉妹紙)である。

前者は、内外の記者から質問された内容について外交部報道官が答えるというスタイルだが、後者は直接的に「言いたいこと」を長文で主張する。そこで今回は、『環球時報』が4月15日から始めた「ますます危険になる日本に警鐘を鳴らす」という不定期の評論シリーズを取り上げる。26日現在で、3回出ている。

中国の「口撃」が止まらない, 「新軍国主義の4つの兆候」, 中国が警戒する日本の動向, タモリ発の「新戦前」に反応, 「新戦前に警戒せよ」と主張, 「日本がレッドラインに挑戦」, 軍事力で日本を圧倒する中国

Photo by iStock

1回目のタイトルは、「日本の『新軍国主義』はいままさに現実の脅威と化した」。筆者は、国際問題研究学者の李大光氏(国防大学教授の同姓同名の人物?)。かなりの長文だが、冒頭でこう警鐘を鳴らす。

<高市早苗政権は先日、憲法改正を目指す意向を示したことに加えて、日本の武器輸出に関する数々の規制を撤廃する見通しだ。こうした背景のもと、日本の「新軍国主義」が勢いを増し、脅威となっている。「新軍国主義」とは、旧来の軍国主義の単純な復活を指すのではなく、現代の国際的・国内的な法的枠組みの中で、「正常化」や「積極的平和主義」を口実に、戦後体制の制約を徐々に打破し、軍事力を継続的に強化していく体系的な動向である。 

日本の「新軍国主義」はもはや危険な兆候にとどまらず、周辺国ひいては地域全体に対して現実的な脅威となっている。国際社会はこれに非常に警戒しており、日本の「新軍国主義」が地域および周辺国に新たな、より大きな危害をもたらすことをしっかり防がなければならない>

「新軍国主義の4つの兆候」

その上で、次の「新軍国主義の4つの兆候」が見られると述べている。

① 既存の法律・政策に対する根本的な突破

・集団的自衛権の行使

・安保3文書の改正

② 軍事力の持続的な拡大と対外化

・防衛費がGDPの2%突破

・攻撃能力の整備

・防衛装備品の共同開発や輸出

③ 日米同盟と安保協力の攻撃的指向

・アメリカ軍のグローバル戦略システムの部分化

・「小多国間」(豪・印・英・比など)と準軍事同盟ネットワークの形成

④ 国内政治と意思決定メカニズムの集中化

・国家安全保障会議の設置

・首相官邸の中核的地位強化

中国の「口撃」が止まらない, 「新軍国主義の4つの兆候」, 中国が警戒する日本の動向, タモリ発の「新戦前」に反応, 「新戦前に警戒せよ」と主張, 「日本がレッドラインに挑戦」, 軍事力で日本を圧倒する中国

Photo by iStock

そうした中、「新軍国主義は中国を標的とした全面的な軍事展開である」として、以下の「前線要塞+不沈空母の二つの動向を強く警戒する必要がある」と説く。

① 西南諸島への兵力強化

② 陸・海・空の「三位一体」長距離打撃システムの構築

中国が警戒する日本の動向

具体的には、以下のような動向だ。

・数兆円規模の資金を投じ、九州島南部から沖縄諸島に至る一線において、偵察・監視、長距離打撃、 防空・ミサイル防衛、掃海・対艦戦を一体化した「前線要塞+不沈空母」群を構築し、同地域を要塞化・軍事化している。

・陸上においては、すでに奄美大島、宮古島、石垣島などの島嶼に03式中距離地対空ミサイルを配備済み、あるいは配備を進めている。さらに熊本、静岡を起点とし、2028年までに北海道、宮崎、沖縄南西諸島など各地に2種類のミサイルを追加配備し、分散型の陸上打撃ネットワークを形成する。

・海上においては、「鳥海」型イージス艦の「トマホーク」巡航ミサイル発射改修を完了させ、改良型12式ミサイル(射程1000km以上)の艦載型の開発を並行して推進し、2027年に艦載長距離打撃能力を確立する。

・航空機搭載型については、F-35A、F-15J戦闘機用の空対地巡航ミサイルに加え、改良型12式空対地ミサイルの航空機搭載型の開発を並行して進め、2027年に航空機による遠距離攻撃能力を確立する。

・軍事施設に関しては、馬毛島に軍用飛行場を建設し、北大東島に可搬式レーダーを配備している。また、宮古島、石垣島、沖縄島などの西南諸島に約130カ所の弾薬庫を新設する計画であり、40カ所の民間空港や港湾を「特定使用空港・港湾」に指定し、「突発事態」に自衛隊が使用する。

中国の「口撃」が止まらない, 「新軍国主義の4つの兆候」, 中国が警戒する日本の動向, タモリ発の「新戦前」に反応, 「新戦前に警戒せよ」と主張, 「日本がレッドラインに挑戦」, 軍事力で日本を圧倒する中国

Photo by iStock

そして、こうした動向は、次の目標を達成するために行なっていると結論づけている(記事では「三つの目標」と記しているが、第二と第三はほぼ同意なので二つにまとめた)。

① 将来的に台湾海峡情勢に介入し、両岸の統一を阻止する

・第一列島線内での中国封じ込め維持

② アメリカの「インド太平洋戦略」に協力し、組み込む

・日米軍事同盟の目標の高度な統一、作戦の深い融合、領域の全面的な拡大

このように、中国にとって日本は「台湾統一の障害」であり、「アメリカ軍の延長としての障害」だというのだ。

タモリ発の「新戦前」に反応

「ますます危険になる日本に警鐘を鳴らす」評論シリーズの2回目は、4月20日の同紙に掲載された。タイトルは「日本が『新戦前』を討論していることがもたらす警鐘」。筆者は、中国国際問題研究院の姚錦祥氏という学者である。テーマは「新戦前」で、まずはこう切り出す。

<ここ最近、「新戦前」という表現が日本で注目を集めており、当初はメディア用語として使われていたものが、次第に学界での議論のテーマになっている。その重要性は、日本社会に存在するある種の現実的な不安感を捉えている点にある。すなわち、安全保障環境が緊張し続け、国家戦略が絶えず調整される中、日本は「徐々に戦前の状態へと滑り落ちている」過程にあるという懸念である>

実際には周知のように、「新戦前」なる言葉は、日本で特に注目を集めていない。おそらく私のような「中国ウォッチャー」が、中国メディアで日々目にする機会が一番多いだろう。ちなみに、ネットで調べてみると確かにあるが、ウィキペディアによれば語源はお笑いタレントのタモリである。

中国の「口撃」が止まらない, 「新軍国主義の4つの兆候」, 中国が警戒する日本の動向, タモリ発の「新戦前」に反応, 「新戦前に警戒せよ」と主張, 「日本がレッドラインに挑戦」, 軍事力で日本を圧倒する中国

Photo by iStock

<2022年12月28日に『徹子の部屋』(テレビ朝日)の番組内で、司会の黒柳徹子から「来年はどんな年になりますかね?」と尋ねられ、タモリが「誰も予測できないですよね。これはね。でもなんて言うかな。新しい戦前になるんじゃないですかね」と発言したことによる>

ともあれこの『環球時報』の記事によると、日本国内で「新戦前」を巡って、「慎重派」と「警鐘派」が起こっているという。

「新戦前に警戒せよ」と主張

「慎重派」の主張……現在の日本は民主制度が安定しており、軍は文官統制が厳格に守られ、経済はグローバルシステムに深く組み込まれているため、かつて全面戦争を開始した当時の現実的な条件はまだ整っていない。

「警鐘派」の主張……日本の防衛政策の境界線が絶えず再解釈され、安全保障問題が日本の政治アジェンダにおける優先順位を上昇させ続け、戦争関連の問題が徐々に「タブー視されなくなっている」。

だが、筆者はやはり「警鐘派」の主張に傾いているようで、次のような実例を列挙している。

・防衛費のGDP比2%という目標を前倒しで達成した。

・「敵基地攻撃能力」を備えた長距離ミサイルの配備を加速している。

・「平和憲法」である憲法第9条の改正を、差し迫った現実の課題と見なしている。

・現役自衛隊員による中国駐日大使館への不法侵入事件で、適切な処理結果を出していない。

・2026年版『日本の外交青書』で中国の位置づけが、「最も重要な二国間関係の一つ」から「重要な隣国」に変更された。

中国の「口撃」が止まらない, 「新軍国主義の4つの兆候」, 中国が警戒する日本の動向, タモリ発の「新戦前」に反応, 「新戦前に警戒せよ」と主張, 「日本がレッドラインに挑戦」, 軍事力で日本を圧倒する中国

Photo by iStock

その上で、次のように結論づける。

<「新戦前」という概念が警鐘を鳴らす意義を持つのは、「戦争の現実」と「戦争に対する認識」の間に一定の時間差が存在するためでもある。1930年代を振り返ると、当時の日本社会には「大戦が迫っている」という明確な共通認識は存在しなかった。満州事変の初期、多くの日本人はこれを資源獲得や経済的苦境からの脱出の機会と捉え、国内での支持率は一時的に高まった。日中戦争勃発後も、日本社会の主流の認識は依然として「短期決戦」「局地的な衝突」という枠組みにとどまっており、戦場は中国に限定されると考えられ、楽観的な見通しが広く存在した。

その後、戦線が拡大し「物資統制」が強化されても、一般の日本国民は日記の中で「戦争は恐ろしいが止めようがない」という無念さを、より多く綴っていた。第二次世界大戦(太平洋戦争)が全面的に勃発する直前まで、多くの国民は依然として「外交で解決できる」「本当に戦争にはならない」という希望を抱いていた。

この「歴史の遅延感」こそが、「新戦前」の論議において最も警戒すべき部分である。リスクは必ずしも明確な形で現れるわけではなく、多くの場合、漸進的な変化の中で見過ごされ、合理化されてしまう。歴史の転換点において、多くの人々は実際にはその瞬間の重大な意義に気づいていないのだ。(以下略)>

このように、1930年代も日本国民は気づかないまま、ひたひたと「戦争の道」を歩んでいった。そのためいまも危ないと説いているのだ。

「日本がレッドラインに挑戦」

続いて、「ますます危険になる日本に警鐘を鳴らす」評論シリーズの3回目は、4月22日の同紙に掲載された。タイトルは「二つの危険な動向、日本は平和のレッドラインに挑戦する」。筆者は、『環球時報』で「反日記事」「反日コメント」を出しまくっている項昊宇・中国国際問題研究院アジア太平洋研究所特別招聘研究員で、私は「反日論客のエース」と(皮肉を込めて)呼んでいる。

同記事は、こんな書き出しで始まる。

<4月21日、日本政府は閣議決定を行い、「防衛装備品移転三原則」およびその運用指針の改正を完了し、原則として殺傷性兵器の対外輸出を認めることとした。同日、高市早苗首相は「内閣総理大臣」の名義で、第二次世界大戦のA級戦犯を祀る靖国神社に「真榊」(まさかき)の供物を捧げた。中国側は、日本による「防衛装備移転三原則」の改正に対し深刻な懸念を表明するとともに、靖国神社に関する日本側の消極的な動きに断固反対し、厳しく非難しており、すでに日本側に厳正な抗議を行った。

日本側のこれら二つの危険な動きは、一見独立しているように見えるが、実は表裏一体である。日本の「再軍事化」が猛スピードで進む危険性を、改めて浮き彫りにしているのだ>

中国の「口撃」が止まらない, 「新軍国主義の4つの兆候」, 中国が警戒する日本の動向, タモリ発の「新戦前」に反応, 「新戦前に警戒せよ」と主張, 「日本がレッドラインに挑戦」, 軍事力で日本を圧倒する中国

Photo by iStock

その上で、こうした日本の動きの目標は、「大国としての地位の獲得」と「憲法改正」にあると説く。

<日本国内には、この規制緩和(「防衛装備品移転三原則」およびその運用指針の改正)は国内の低迷する防衛産業を活性化させ、大規模な輸出を通じて研究開発コストを削減し、ひいては自衛隊の高度な武器装備の更新に還元することを目的としていると主張する世論もある。しかし言及されていないのは、日本が「武器外交」を通じてアメリカ、イギリス、オーストラリアなどの防衛パートナーとの同盟関係を強化し、自国を西側の軍事体制にさらに深く組み込むことで、いわゆる「大国としての地位」を獲得しようとしているという点だ。

殺傷性兵器の輸出というタブーが破られた現在、日本の軍事安全保障政策における「専守防衛」の原則は、もはや体裁を保つための隠れ蓑(みの)に過ぎない。こうした法律上の「サラミ戦術」(少しずつ前へ出ていく戦術)の最終目標は、まさに「平和憲法」の抜本的な改正にあるのだ>

軍事力で日本を圧倒する中国

続いて、高市首相の「靖国神社志向」を舌鋒鋭く批判しているが、こちらは省略する。結論は、以下の通りだ。

<日本側のこれら二つの危険な動きは、日本軍国主義の遺伝子が再燃する論理的な循環を、共に形成するものだ。安全保障政策が戦後のタブーを段階的に突破していくにつれ、日本はますます戦争のリスクに近づいている。

日本国民の戦争に対する自発的な拒否感を思想的に排除するため、政権当局は長年にわたって、「自主防衛」や「周辺の安全保障上の脅威への対応」を掲げ、不安を煽り、憲法改正や軍備増強の正当化の口実としてきた。さらに、単なる危機のストーリーだけでは長期的な軍事化への転換を支えきれず、内部の価値観の再構築が不可欠である。そこで靖国神社の正当化こそが、軍国主義の思想を現代的な「愛国主義」として包装する道具となっているのだ。

こうした物理的な武装と精神的な洗脳の同時進行は、日本が戦後の平和的発展の軌道から積極的に逸脱しつつあることを意味している。日本が標榜する「普通の国」とは、実質的には敗戦国の身分から脱却し、「平和憲法」の制約を受けない「戦える国」にすることである。(中略)

残念なことに、現在でも多くの国が、日本の変貌がもたらす危険を認識していないか、あるいは十分に重視していない。日本の軍国主義によって最も深刻な被害を受けた国として、中国が発する警告は、決して誇張されたものではない。日本の「靖国史観」と軍事的な暴走はすでに共鳴し始めており、国際社会はそこから危険な気配を嗅ぎ取るべきである。(以下略)>

中国の「口撃」が止まらない, 「新軍国主義の4つの兆候」, 中国が警戒する日本の動向, タモリ発の「新戦前」に反応, 「新戦前に警戒せよ」と主張, 「日本がレッドラインに挑戦」, 軍事力で日本を圧倒する中国

Photo by iStock

たしかに、「世界で日本の軍国主義に警鐘を鳴らしている国」は中国くらいだが、「中国の警鐘は誇張されたものではない」として、国際社会に広く呼びかけているのである。実際、『環球時報』は『Global Times』という英語版でも発行しているので、世界の「中国ウォッチャー」の中には英語版を読んでいる人も多い。

以上、3本の記事について見てきたが、私のような「中国ウォッチャー」は、むしろ中国がこれほどまでに日本の「新型軍国主義」や「新戦前」を煽る意図は何なのかと勘繰ってしまう。

日本が「普通の国」に脱皮しようとしているのは、第一に周知のように、「中国の脅威」が日増しに抜き差しならないものになってきているからだ。そして第二に、「アメリカ軍の新たな戦略」ということがあるのだろうが、いまの米ドナルド・トランプ政権を見ていると、「アメリカが信頼できなくなってきたから、自国は自国で守る」ということも大きいのではないか。

そして現在の日中の軍事力を比較した場合、残念ながら中国が日本を圧倒している。日本には空母も核兵器もない。そのため、1930年代のように日本が中国を襲う確率よりも、中国が日本の領土(特に尖閣諸島)を襲う確率の方が、はるかに高いと言えるだろう。

いずれにしても、日本と中国は1972年に国交正常化し、1978年に平和友好条約を結んだが、これからは「平和」でも「友好」でもない状態が常態化していくのかもしれない。その意味では、中国側の主張に同意できるところがあるとしたら、「多くの日本人が現実に気づいていない」という点だろう。

【こちらも読む】『60兆円規模の投資がムダ金に…稼働率は3割程度しかない中国国家戦略「データセンター建設」の厳しい実情』