【波紋】「青切符」同じ違反でも場所によって処分に差が…ルールのあいまいさに市民も困惑 さらに新制度の影響で「傘スタンド」が消滅の危機?
4月に導入された自転車の違反行為に対する“青切符”制度ですが、市民への周知不足やルールのあいまいさなどもあり、取り締まりも手探り状態が続いています。さらに、傘さし運転が禁止になり、大阪で根付く『傘スタンド』が、生産や販売を中止する動きまで…。様々な課題が見えてきた“青切符”の実態を、徹底取材しました。(読売テレビ 報道局=神谷 果歩)
■“青切符”制度スタートも「全く知らない」認知も少なく制度もあいまい?

“青切符”制度スタート ©ytv
2026年4月1日、自転車の“青切符”制度が全国でスタートしました。制度開始初日となるこの日、雨の中行われていたのは、大阪府警による布施駅前での自転車利用者の取り締まりです。
(警察)
「(自転車を)押していくか、これ(傘)外してください」
(違反者)
「なんで?」
(警察)
「積載方法の違反です。これを運転することによって、風が吹くと危ないですし、事故を起こす可能性が高まっているんです」
傘さし運転(手持ちの片手運転)は、警告を無視したり、悪質な運転をしたりした場合、反則金5000円が科されます。導入初日は雨だったこともあり、傘さし運転で多くの警告が行われました。

子どもを乗せた自転車が転倒! ©ytv
そんな中、傘をさしながら運転していた女性が転倒。前と後ろに子どもを乗せていて、重大な事故につながりかねない危険な運転です。
“青切符”制度では、警察が違反した16歳以上に、原則として指導・警告を行い、悪質・危険な違反については “青切符”を交付します。反則金を納めれば、刑事手続きは免除されるということです。

“青切符”対象の違反行為 ©ytv
スマートフォンの『ながら運転』には、反則金1万2000円。『信号無視』や『逆走』には、反則金6000円など、原付バイクと同じ金額の支払いが科されます。違反行為の種類は、なんと113もあるということです。

交通事故に占める自転車事故の推移 ©ytv
“青切符”制度の導入は、自動車事故が全国的に大きく減っている一方で、自転車事故は高止まり傾向にあることが背景にあります。また、大阪府内では2026年に入ってから自転車事故による死者が急増。泉佐野市では1月に、自転車に乗っていた男性が信号無視をして車にはねられ、死亡しました。自転車での交通違反は命にかかわる重大な事故につながりかねません。

「全く知らないです」 ©ytv
しかし取材を進めると、“青切符”制度についての課題は山積の様子で、その一つが市民への周知不足です。
(違反者)
「全く知らないです。きのう(3月31日)友達から初めて聞いて、『そうなんだ』と思った」
警察は制度開始前から繰り返し、啓発活動を行ってきたものの、113もある具体的な違反内容が十分に伝わっているとは言い難い状況です。

8時間取り締まり 合計112件の警告 ©ytv
では実際、“青切符”はどの程度交付されているのでしょうか。
取材班は、4月上旬、関西の4つの警察署で合わせて8時間にわたり取り締まりに密着しました。その間、行われた警告は112件。しかし、青切符が交付される場面を現認することはありませんでした。

ヘッドホンを付けて自転車に乗る女性 ©ytv
Q.イヤホン(ヘッドホン)をつけた違反者に対して、指導・警告にとどまった理由は?
(大阪府警 布施署・野村友一 交通課長)
「今回は指導・警告してすぐに取り外してくれました。状況が改善したので、指導・警告にとどめました。命令に従わない場合は、切符を切る場合があります。あくまで今回の改正は、取り締まりの強化が目的ではなく、自転車利用者の安全意識の向上が目的です」

制度のルールはあいまい… ©ytv
“自転車は車と同じ”という意識を持ってもらうために始めた制度ですが、ルールには、あいまいさもあります。
東大阪市内で信号無視をした女性。警察から注意を受けたものの、青切符は交付されませんでした。

札幌市内では青切符を交付 ©ytv
一方で札幌市内では…
(警察)
「警察官が『止まってください』と言って、車の信号機で止まらず左折したので、信号無視の違反になります。点数はないが反則金6000円がかかってしまう」
こちらの男性は“青切符”を交付されました。

大阪府警 自転車対策室・橋本鎮彦室長 ©ytv
同じ交通違反でも異なる処分をされているのは、なぜなのでしょうか?
(大阪府警 自転車対策室・橋本鎮彦 室長)
「同じ交通状況というのはありませんので、その時の状況がどうだったのかが一つの判断になります」
Q.違う場所で同じ違反をしても、“青切符”を切られる時と切られない時があるんですか?
(橋本室長)
「状況としては、あり得ると思います」
取り締まる側の警察も、手探りの状況が続いていました。

“御堂筋”では自転車の歩道通行は可能だが“千日前通”は不可 ©ytv
また、こんな複雑なルールも…。
大阪の中心を南北に走る“御堂筋”では歩道通行が可能になっている一方、東西に走る“千日前通”の一部では自転車の歩道通行は原則不可となっています。(※13歳未満・70歳以上・一部の障害者は除く。道路工事などで車道の通行が危ない場合は歩道の中の車道寄りを通行可)
そのため、難波交差点では“御堂筋”から“千日前通”に曲がる場合、歩道ではなく車道に出る必要がありますが、歩道を通行して警告を受ける人が相次いでいました。

自転車が車道に大きくはみ出す場面も… ©ytv
一方で、片側3車線で交通量の多い谷町筋では、路上駐車している車の横を、自転車が車道に大きくはみ出して走行するようすもみられました。自転車がルールを守って車道を走っていても、路上駐車がその行く手を阻む…車の取り締まりも喫緊の課題といえそうです。
■傘さし運転禁止で大阪に根付く『傘スタンド』文化が消滅の危機!?

傘ではなく雨具着用を推奨 ©ytv
“青切符”制度の導入で、生活にも大きな影響が出ています。自転車の傘さし運転は、視野を遮ったり風にあおられたりする危険があるとして、大阪府警は、代わりに雨具の着用を勧めています。

傘スタンドを生産・販売 木田久雄社長 ©ytv
その影響で、大阪に根付いている『傘スタンド』の文化が消滅の危機にあるといいます。傘スタンドを生産・販売する大阪の会社に聞いてみると…。
(傘スタンドを生産・販売 木田久雄 社長)
「『手放し運転(片手運転)がダメだったら、傘スタンドはまだ許されるんじゃないか』と思っている消費者の方が多いのではないですか。私も困惑しているんです。売っていいものか、だめなのか…」

実際の取り締まりの様子 ©ytv
実際の取り締まりでは…
(警察)
「大阪の規定で、傘が出ていいのは傘スタンドから左右15cm以下と決まっています。そのサイズに当てはまる傘は、大人用の傘には『ない』です」

「自転車店も何も言わなかった」 ©ytv
(違反者)
「これ(傘スタンド)ならいいって聞いたから…。自転車店も何も言わなかったからいいかなと思って」

以前に大阪府警が公表していた資料 ©ytv
多くの人が困惑していた理由の1つが、大阪府警が以前公表していた資料です。この資料では「ハンドルの左右から傘が15cm出てもいい」と読み取ることができます。しかし、取材班が確かめたところ、大阪府警は、その後、資料は「間違い」だとして、取り下げていたことがわかりました。

正しくは『傘スタンドの左右15㎝』 ©ytv
正しくは、傘スタンドの左右15cm、つまり『直径約30cmを超える傘は違反になる』ということです。(※近畿2府4県の場合)
(傘スタンドを生産・販売 木田久雄社長)
「直径30㎝の傘って、一般の傘では、まず見かけないですよね。30cmといったら、ヤクルトスワローズの応援グッズのような傘しか、自転車に取り付けることはできないということなんです。実質的に『傘スタンドに傘を取り付けることは不可』という大阪府警の認識でいいのでしょうか?そうなったら我々は販売できないです」

傘スタンドの新規生産が一時停止… ©ytv
大阪府警は、「傘スタンドの取り付け自体は止めていないが、スタンドに傘をつけることは“事実上禁止”との認識」だということです。取材した会社は、4月10日、“傘スタンド”の新規生産を一時停止したと発表しました。今後、生産も販売もやめる方向で調整しているといいます。
自転車事故を減らすために始まった“青切符”制度。利用者の意識は少しずつ高まっていますが、その効果を出していくためには、誰でも迷わず走れる環境と、誰に対しても公平な運用が必要です。
(「かんさい情報ネットten.」2026年4月14日放送内容を一部再編集)