「シンプル・イズ・ベストを極めた軽快ネイキッド」ドゥカティ新型「モンスター」無駄を省いた先にある本質的価値

ドゥカティから新型「モンスター」が登場。最新のV2エンジンを搭載したスポーツネイキッドとして進化を遂げた。スペインで開催された国際メディア試乗会からケニー佐川がレポートする。

【写真を見る】第5世代に進化したドゥカティの新型「モンスター」のディテール(22枚)

【写真】第5世代に進化したドゥカティの新型「モンスター」のディテール(22枚)

パニガーレV2の心臓を得た第5世代

パニガーレV2の心臓を得た第5世代, 乾燥重量175kgの軽量ボディが生み出すフィーリング, ライダーが主役の時間を引き出してくれる, 無駄を省くことで見えるモンスターの価値

初代のスタイルを現代的に再解釈し、よりコンパクトでスポーティに進化。特徴的なタンク形状やヘッドライトまわり、短いテールなどでシンプルかつ力強い印象に仕上げられ、ひと目でモンスターとわかるデザインだ(写真:DUCATI)

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全体的なイメージは先代を踏襲するが、モノコックフレームはもはや外から見えず、テクノポリマー製のサブフレームもシートとほぼ一体化している(写真:DUCATI)

1992年に誕生したモンスターは、当時ドゥカティがスーパーバイク世界選手権を見据えて開発した851系フレームに、軽快なハンドリングで人気を博した900SSの空冷Lツインを搭載した、ドゥカティ初のネイキッドモデルとして登場した。以来、世代を重ねて空冷から水冷へ、さらには400ccから1200ccまで幅広い排気量を揃え、スーパーバイクシリーズと並ぶ“二枚看板”としてブランドを支えてきたのは周知のとおりだ。

そして今回の第5世代では、ついに昨年登場した「パニガーレV2」譲りの超軽量エンジンとモノコックフレームを採用するに至った。注目すべきは、長年ドゥカティの象徴でもあったデスモドロミック機構を廃し、一般的なバルブスプリング方式へと転換した点だ。これによりエンジンの軽量化とともにIVT(吸気可変バルブ機構)が組み込まれ、実用域から力強く伸びるドラマティックな出力特性を手に入れた。

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伝統のLツインエンジンはサイズ的にもよりコンパクト化され、マス集中した凝縮感のあるフォルムに進化。ホイールやスイングアームも軽量化されている(写真:DUCATI)

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上級仕様として、メーターバイザー形状のカウルとパッセンジャーシートカバーを装備した「モンスター+(プラス)」を設定(写真:DUCATI)

排気量は936ccから890ccへとスケールダウンしながらも最高出力は同等をキープ。加えて、機構的にシンプル化されたことでストリートユースにおける耐久性やメンテナンス性を高めている。外観こそ従来モデルのイメージを色濃く残すが、中身は完全に別物。数字以上に、その進化はたしかな手応えとして伝わってくる。

試乗インプレッション

削ぎ落とすことで磨かれた軽快な走り

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あいにくの雨天ではあったが、軽量な車体と扱いやすいエンジンにより、欧州の高速ワインディングでもストレスのない走りを楽しめた。ハンドルが高く上体が起きた自然なポジションは視界も良好。リラックスしてライディングに集中できる(写真:DUCATI)

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今回の国際試乗会はスペインの港町、マラガで開催された。雨の中、入り組んだ旧い市街地から高速道路、標高差のあるワインディングまで約160kmを走破した(写真:筆者撮影)

スペイン・マラガの郊外。朝の澄んだ空気の中で跨った新型モンスターは、第一印象からどこか“肩の力が抜けている”。スターターボタンを押すと、新世代のVツインが軽やかにまわり始めた。かつてのような荒々しい鼓動感は控えめで、耳に届くのは整ったリズムと、奥に潜む確かな力強さ。ずいぶんと洗練されたな、というのが正直な印象だ。

思えば92年、ケルンショーで衝撃のデビューを飾った初代モンスターは、「ネイキッドとは何か」という常識を根底から覆した存在だった。コンセプトはシンプルにして明快――“必要なものだけを残し、余計なものは削ぎ落とす”。その思想を現代の技術で再構築したのが、この新型である。見た目のアイコンである“バイソンバック”タンクやコンパクトなテールまわりはしっかり受け継ぎつつ、全体のフォルムはより引き締まり、現代的な精度で再定義されている。

乾燥重量175kgの軽量ボディが生み出すフィーリング

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標準装着タイヤのピレリ「ディアブロ・ロッソIV」はウェット路面でも確かなグリップ力で安心感のある走りを支えてくれた(写真:DUCATI)

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モダンな表情が印象的なフルLEDヘッドライト。ダブル“C”の発光シグネチャーとパニガーレV4を想起させるカットデザインが、ひと目でドゥカティと分かる存在感を放つ(写真:DUCATI)

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容量14Lの燃料タンクはモンスター伝統の“バイソンバック”形状を踏襲しつつ、現代的なデザインに刷新。第2世代で導入されたフロントエアインテークが再現されている(写真:DUCATI)

走り出してすぐに感じるのは、車体のコンパクトさと動きの軽さだ。乾燥重量175kg、従来比−4kgという数字以上に、実際のフィーリングとして“ひとまわり小さいバイク”のような扱いやすさがある。押し引きの軽さはもちろん、走行中も車体の存在が主張しすぎない。むしろスピードが乗るほど、ライダーの感覚と自然に同調してくる。

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ブレンボ製M4.32ラジアルキャリパー+φ320mmダブルディスクを装備。初期のタッチは穏やかで扱いやすく、奥ではしっかり利くコントロール性の高さが際立つ(写真:DUCATI)

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サスペンションは前後ともSHOWA製で、43mm倒立フォークとリンクレス式モノショックの組み合わせ。街乗りの快適性とスポーツ走行での安定感を両立。クイックシフターを標準装備(写真:DUCATI)

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パニガーレV4譲りの両持ち式スイングアームは、アルミ中空構造とすることで軽量化と高剛性を実現。トラクション性能を引き出しつつ、軽快でリニアなハンドリングに貢献する(写真:DUCATI)

その軽快さを支えているのが、構造そのものの進化だ。エンジンをストレスメンバーとしたモノコック構造に、「パニガーレV4」譲りの思想を取り入れたスイングアーム。そこにSHOWA製サスペンションを組み合わせ、剛性としなやかさのバランスを高い次元でまとめている。

足元はブレンボM4.32ラジアルキャリパーに320mmダブルディスク、タイヤはピレリ・ディアブロ ロッソIV。見た目以上に“ちゃんと止まって、ちゃんと曲がる”パッケージだ。

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スリムに絞り込まれたシートは足着き性を高めつつ、マシンとの一体感を強化。シート高は欧州仕様で815mm、日本仕様はローシート&ローサスペンションで775mmに設定(写真:DUCATI)

ライディングポジションも扱いやすさに貢献している。ハンドルとステップの位置関係が自然で、上体が軽く前傾したリラックスできる姿勢に収まる。ちなみに日本向けには、標準のシート高815mmに対し、最大で40mm低くなるローシート&ローサスペンション仕様(775mm)が用意されているのもポイントだ。

その日本仕様にも試乗してみたがハンドリングは自然で、ローダウンにありがちなサスペンションの動きのネガも感じられなかった。むしろ足着きが大幅に良くなることで安心感が増し、とくにストップ&ゴーが多い日本の市街地などでは大きなメリットになると思う。

ライダーが主役の時間を引き出してくれる

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新型パニガーレV2系エンジンの採用により従来型より単体で5.9kgも軽量化。最高出力111psは従来同等レベルだが、IVT(インテーク可変バルブ・タイミング)機構により4000〜10000rpmで最大トルクの80%以上を発生するなど、扱いやすさと高性能を両立(写真:DUCATI)

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縦2本出しマフラーは従来モデルを踏襲しつつデザインを刷新。主張しすぎないシンプルさが軽快なスタイルを引き立てる。Vツインらしい鼓動感と心地よいサウンドが魅力(写真:DUCATI)

エンジンは昨年鮮烈なデビューを果たしたパニガーレV2直系の新世代ユニット。吸気可変タイミング機構IVTを備え、9000rpmで111psを発揮する。だが、このエンジンの本質はピークパワーではない。4000〜10000rpmという広いレンジで最大トルクの80%以上を維持するその特性にこそ価値がある。どこからでもスッと力が立ち上がり、どこまでも自然にまわっていく。

市街地では、その恩恵がダイレクトに伝わってきた。発進から低中速域までのつながりが滑らかで、スロットル操作に対する反応もじつに穏やか。ギア選択に神経質になる必要もなく、自然体のまま流れに乗れる。ハイウェイに入ると、その“余裕”がさらに際立つ。111psというスペック以上に、実用域での厚みが利いていて、追い越し加速もスムーズ。エンジンは終始落ち着いていて振動も少ない。長距離でも疲れにくく、かつてのドゥカティにあった“扱いづらさ”はすでに過去のものだと実感する。

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路面をつかむトラクションに優れるLツインの特性に加え、コーナリングABSやトラクションコントロールなど最新電子制御のおかげで安心してアクセルを開けられる(写真:DUCATI)

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大型化された5インチTFTディスプレイを採用。4種類のライディングモード(アーバン/ロード/スポーツ/ウェット)のほか、6軸IMUによるコーナリングABS&トラコン、ウイリーコントロールなどを装備。状況に応じてキャラクターを最適化できる(写真:DUCATI)

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新設計のスイッチ類は花びら状ジョイスティックを採用し直感的な操作を実現。ライディングモードや各種電子制御の設定も手元でスムーズに行える(写真:DUCATI)

そして、ワインディングではまさに水を得た魚。マス集中した軽量な車体を生かした切れ味鋭い走りが自然にできてしまう。コーナー進入で軽くきっかけを与えると、車体はスッと向きを変え、そのまま軽やかに旋回していく。ハンドルをこじる必要はなく、下半身で軽く合図を送るだけでいい。セルフステアの出方がとにかく素直で、ライダーに余計な仕事をさせないのだ。

興味深いのは、操作している感覚の変化だ。従来のモンスターは、どこかでライダーに対して働きかけてくる存在だった。しかしこの新型は違う。性能はたしかに高いのに、それを誇示しないし、ライダーに“腕”を求めてこない。手強さは微塵もないのに、その気になればどこまでも応えてくれる。走っていて無用な緊張感が生まれないのがいい。

無駄を省くことで見えるモンスターの価値

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ハンドリングは穏やかで軽快、それでいてしっかりとした安定感も備える。サスペンションやブレーキなど足まわりも抜かりなく、ドゥカティらしい上質な走りを楽しめた(写真:DUCATI)

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カラー設定は「ドゥカティ・レッド」と「アイスバーグ・ホワイト」の2色が用意される。メーカー希望小売価格はスタンダード仕様が166万2000円~、モンスター+が169万円~(予定)(写真:DUCATI)

新型モンスターは、“速さ”や“凄さ”を誇示するためのバイクではない。ライダーが主役でいられる時間を、さりげなく引き出してくれる存在だ。削ぎ落とすことで見えてくる本質。その原点の思想を現代の解釈でここまで昇華させたことに、このモデルの価値がある。まさに“新世代モンスター”と呼ぶにふさわしい仕上がりだ。