【園遊会の名場面】三浦璃来の伝説級「ロケット柄」の綴れ帯 重さ6キロをふんわり羽根のように着こなした金メダリストの実力

 春の園遊会で注目を集めた招待者の装いといえば、ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケートのペアで日本代表初の金メダルを獲得した三浦璃来さん(24)と、木原龍一さん(33)の和装だろう。三浦さんの和装で興味深いのは、西陣織の最高峰ともいえる「綴れ織(つづれおり)」の帯。ロケット柄のユニークな帯は、著名な染織家による伝説級の逸品。ふたりにふさわしい夢と未来の詰まった柄行だった。

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 やわらかな春風のような空気が、ふんわりと周りを包んでいた。

 春の園遊会の招待者のなかでも、ひときわ目を惹いたのは、愛子さまと一緒に春風を運んできたような、三浦璃来さんの撫子色の振袖と、木原龍一さんの薄緑の羽織はかまだった。色紋付に染め上げられた五つ紋の「五三の桐」は、木原家の家紋だという。

 ふたりの和装をプロデユースしたのは、雑誌『家庭画報』を主体とするチーム。

 そして、三浦さんの振袖と帯は、神戸の老舗呉服店、「きもの百科イトカワ」が持つ大切な品だ。

 店主である糸川 英里(えり)さんによれば、この振袖と帯は、父である先代社長が孫(英里さんの娘)の成人式のために準備した品だという。

  実は、三浦さんは園遊会で、伝説級の逸品を身につけていた。

 「綴れ織(つづれおり)の全通帯」である。

 これは、横糸だけで織り上げる「綴れ織」で仕立てた帯で、西陣織のなかでも技術の高さと希少性から別格とされる。織だけでも素晴らしい品だが、その図案はなんとロケットであるという。

「この綴れ帯は、明治から昭和にかけて活躍した山鹿清華(やまがせいか)という有名な染織家の作品で、先代がコレクションとして購入したものです。山鹿氏は、日本画と西陣織の図案を学んだ人物で、この綴れ帯には、『噴華(ふんか)』とタイトルがついていました」(前出、糸川店主の英里さん)

 山鹿清華といえば、著名な染織家。京都市京セラ美術館では、この秋に生誕140年の回顧展『染織家 山鹿清華 宙翔ぶイマジネーション』を開催予定だ。

 

 同館の公式ウェブサイトには、同氏について、図案から糸を選び、織の工程までひとりで行うつづれ織り「手織錦」を考案したことで活躍の幅を広げたことや、作品のモチーフには天女や雲流から機関車やロケット、東京タワーまで扱ったように、主題選びはユニークで奇抜――と紹介されている。

 三浦さんのロケットの帯は、希少な逸品。名人の手による、「伝説級」の品である。

 園遊会で締めていたときはわかりづらかったが、帯の前の部分に、三角にとがったロケットの先端が見える。

 帯を広げてみると、紫や青、金色のカラフルな何基ものロケットが世界中の宙(そら)を飛翔するという構図だ。

『噴華』という帯のタイトルの通り、ロケットの煙は花や草の葉といった楽しげな意匠で彩られ、眺めるだけでワクワクさせてくれる。

 キラキラと輝くような空気をまとう「りくりゅう」のふたりにぴったりだが、この振袖と帯を着こなすことはそうたやすくなく、「さすが五輪アスリート」と感じたと英里さんは言う。

「実は、山鹿氏のロケットの綴れ織の帯は、いまはほぼ作られていない全通の綴れ帯なのです。芯を入れた重さは3キロにも及びます。さらに振袖も総刺繍ですから、両方合わせた重量は6キロにはなるかもしれません」

 

 丸帯は、織が密であるため、帯の結びはきれいに決まる。しかし、着崩れないようしっかりと締めると、重みや苦しさを感じる場合もある。

「それを、小柄な三浦さんが涼しげなお顔で羽を羽織るようにふんわりと着こなしていらっしゃった。さすがは五輪アスリートでいらっしゃると感じました」

 ちなみに、木原さんが三浦さんの帯を直していた仲睦まじいシーンが話題になった。

 イトカワ店主の糸川さんも、こうほほ笑む。

「サッと帯を整えることのできる木原さんの紳士ぶりは、素晴らしい。私も感動しました」

 園遊会での「りくりゅう」ペアは、両陛下や皇族方との爽やかな受け答えも話題になったが、帯に織り上げられたロケット柄も「夢と未来」を感じさせるものだった。まさに春風のような心地よさを、見る人に残した園遊会の名場面だった。

(AERA 編集部・永井貴子)

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