「オープン8カ月で運営会社が破綻」「フードコートは銀だこ、丸亀、すき家などが撤退」…千葉の「やや廃墟なモール」盛衰の訳

ガラガラで人がいない。空き区画だらけ。BGMだけが虚しく響いている――。日本各地に、そんな「廃墟モール」が存在する。
かつて繁栄した商業施設は、なぜ廃墟になってしまったのか? 理由を探ると、7つの要因が見えてきた――この連載では、大手ショッピングモール会社での勤務歴を持ち、プライベートでも500以上のモールを巡ったライターの坪川うたさんが現地を実際に訪れてリポート。廃墟モールが生まれる理由をひもといていく。

閑散とするエリア、空き区画、賑わうエリアが混在

千葉県印西市は住みやすさに定評があり、東洋経済が発表している「子育てしやすい自治体ランキング2025」で千葉県1位となった。そんな人気の街、千葉県印西市に、一時「廃墟モール」と話題になった大型モールがある。「BIG HOPガーデンモール印西」だ。

【画像17枚】横長で回遊性悪め、屋根がないから夏冬は大変…千葉にある「やや廃墟なモール」の様子

北総線を降りて印西牧の原駅を出ると、カラフルな外観と大きな観覧車が見え、どんなモールなのだろうとわくわくする雰囲気を醸し出している。

閑散とするエリア、空き区画、賑わうエリアが混在, 回遊性が生まれていない, 最初から空き区画が存在した, オープンから1年足らずで運営会社が破綻, 廃墟化した4つの要因

北総線印西牧の原駅(写真:筆者撮影)

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印西牧の原駅前から見える「BIG HOPガーデンモール印西」(写真:筆者撮影)

「BIG HOPガーデンモール印西」は大きく2つのゾーンがあり、駅側からモールへ入るとまず「駅前ビレッジ」が現れる。まるで海外のようなデザインになっており、歩いていて楽しい。

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駅前ビレッジの入り口。海外のような雰囲気である(写真:筆者撮影)

ところが「駅前ビレッジ」は27区画中物販店舗が1つもなく、市役所の出張所やクリニックが並んでいる。巨大な空き区画も存在しており、唯一営業していた飲食店も閉店してしまった。限られた人しか利用しないテナントがほとんどのため、駅から通り抜ける人はいてもモールとしての賑わいは感じられず閑散としている。

「駅前ビレッジ」を通り抜けた先にある「バリューモール」の2階にあるフードコートも半分近くの区画が空いている。営業している6店舗のうち3店舗がラーメンや中華というカオスぶりだ。モールのオープン当時は、築地銀だこ、丸亀製麺、リンガーハット、すき家とお馴染みのチェーン店が並んでいたが、今その姿はない。

筆者が2021年に訪問した際は「バリューモール」2階に大きな空き区画がいくつか存在したが、今回の26年4月訪問時にはオフィスが入居していた。以前より区画は埋まったものの、2階を歩いていても人とすれ違うことは少ない。

しかし「バリューモール」1階にはスーパーのロピア、セリア、TSUTAYA、西松屋をはじめとし、馴染みのチェーン店や日常生活にあるとうれしいテナントが並んでいる。筆者が訪れたのは平日のため人がごった返すような様子ではなかったものの、まったくもってガラガラではなく、特に無料の遊具や噴水はファミリーで賑わっていた。

回遊性が生まれていない

廃墟モールから復活しつつある「BIG HOPガーデンモール印西」だが、まだ大きな課題がある。施設の動線と形態だ。

「駅前ビレッジ」から「バリューモール」にかけて通路が長く、目的の店舗に行きづらい。たとえば駅からスーパーのロピアに行こうとすると、徒歩5分以上かかる。

また北総線の線路と国道464号を挟んで対面に、約40店舗を構える「牧の原モア」があるが、「牧の原モア」も長い通路が続く造りになっているため、両モールをブラブラと歩いてショッピングする気にはならない。

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「BIG HOPガーデンモール印西」は横に長い(写真:筆者撮影)

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対面にある「牧の原モア」も同じく横長である(写真:筆者撮影)

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「BIG HOPガーデンモール印西」から、線路と国道の上を通るデッキを渡った先に「牧の原モア」がある(写真:筆者撮影)

これが屋内型であれば良いのだが、「BIG HOPガーデンモール印西」も「牧の原モア」も大部分の通路に屋根のないオープンモールである。したがって暑い日や寒い日、雨の日は特に買い回りしづらい。お目当ての店舗に来店したとしても、わざわざ傘をさしたり汗をかいたりして、「何か他にも良い店舗がないか」と探す人は少ないだろう。

両施設は広い平面駐車場を備えており、来店客の多くは車を利用しているように見受けられる。とはいえ、せっかく駅前に大型モールが2つもあるのに、そこに回遊性が生まれていないのはもったいなく感じる。

最初から空き区画が存在した

「BIG HOPガーデンモール印西」が一時「廃墟モール」と呼ばれた要因は、動線や形態の問題だけではない。ほかの要因を開業当初から遡って探っていこう。

「BIG HOPガーデンモール印西」は2007年9月にオープンした。多様な価値観を提供する「グレートバリューモール」をコンセプトとし、1日中滞在できる商業施設を目指して開発された。当初はアウトレット店舗が多く集められていた。

約150区画が用意されていたが、オープン時点での出店テナント数は約130店舗。オープンから半年ほど経っても、約10区画が空いていた。郊外での大型店開発を制限する「改正まちづくり三法」の全面施行前の駆け込みによって大型商業施設が開業ラッシュとなり、テナントが不足していたのだ。

オープン当時のフロアガイドを開くと、現在閑散としている「駅前ビレッジ」にはコンビニやグロサリー、鮮魚店、レストランなどが出店していたものの、すでに6区画が「Coming Soon」や「催事」の表記になっている。その他のエリアにも、4つの空き区画がある。オープンした時点で、雲行きの怪しさがうかがえる。

また、競合環境も熾烈だった。2002年オープンの「ジョイフル本田」、2005年オープンの「牧の原モア」、2006年オープンの「イオンモール千葉ニュータウン」といった競合がひしめいていたのだ。

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「BIG HOPガーデンモール印西」の対面に建つ「牧の原モア」(写真:筆者撮影)

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ひと駅隣の千葉ニュータウン中央駅近くにある「イオンモール千葉ニュータウン」(写真:筆者撮影)

周辺に競合施設が多く、オープン当初からテナントが埋まっていなかったこと、現在でもテナントが埋まり切っていないことを考えると、この立地にこの店舗数の商業施設は規模が大きすぎたともいえる。

オープンから1年足らずで運営会社が破綻

追い打ちをかけたのが、「BIG HOPガーデンモール印西」を開発・運営していたミキシングの破綻だ。

ミキシングは「BIG HOPガーデンモール印西」のオープンからわずか8カ月後の2008年5月に民事再生法の適用を申請した。理由は、「BIG HOPガーデンモール印西」 の約半年後に京都府で開業した「ガーデンモール木津川」のテナント選定が難航し、資金繰りが悪化したためである。

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「ガーデンモール木津川」2023年11月訪問時(写真:筆者撮影)

その後、「BIG HOPガーデンモール印西」ではテナントの撤退が相次ぎ、ネット上で「明るい廃墟」などと言われるようになった。

そんな「BIG HOPガーデンモール印西」 に2018年4月、核テナントとしてロピアが出店した。ロピアの集客力により、買い物客が集まるように。また、主に土日祝にファミリー向けのイベントが開催されており、運営会社の尽力も感じられる。

「BIG HOPガーデンモール印西」復活の背景には、印西市の人口増加もあるだろう。施設がオープンした07年9月末時点で約6万2000人であった人口は、26年3月末には約11万2000人にまで増加している。(印西市『人口表』)23年は人口増加率が全国1位、24年は3位となるなど、全国的に見ても人口が増え続けている街なのだ。

前述のとおり複数の空き区画が残り、特に「駅前ビレッジ」は閑散としているものの、一時の廃墟状態は脱している。

廃墟化した4つの要因

冒頭にて、廃墟モールの誕生には7つの要因があると書いた。具体的には以下の7つだ。

①競合施設の存在、②モータリゼーションの進展、③アクセスの悪さ、④動線の設計ミス、⑤施設規模の不適合、⑥運営会社の破綻、⑦核テナントの撤退

「BIG HOPガーデンモール印西」は①競合施設の存在、④動線の設計ミス、⑤施設規模の不適合、⑥運営会社の破綻により廃墟化し、核テナントの存在と新たな運営会社による集客により復活傾向にある。

続く後編では、同様に運営会社の破綻後に廃墟化し、新たな運営会社と核テナントのロピアにより復活したモールを取り上げ、より詳しい背景を探っていく。