「祖父に預けたヒヨコが"鳥刺し"に」「フェリーに乗ったら即うどん」…ジモト民が《黒豚・黒牛より愛する》鹿児島グルメ

鹿児島生まれ、鹿児島育ち。大学4年間は県外に出たものの、鹿児島市とその近郊で40年以上過ごしてきた。そんな筆者が、鹿児島の「アタリマエ」を前後編で紹介する。前編は、「鹿児島の食」について。(後編はこちら)。

「名物」にはよく食べるものと、そうでないものが

県外から鹿児島に友人を迎えるとき、「どこに連れていこうかな」とわくわくする。おせっかいな性分なので、聞かれたら求める以上におすすめ情報を送りつけることもしょっちゅうだ。

【写真を見る】2005年創業「よしみ屋」のラーメン(中)は800円。プラス100円で「もやし増し」もできる(写真:筆者撮影)

とはいえ、鹿児島県は南北600kmと広大で、その名物を一括りに語るのは難しい。「人生の半分以上を鹿児島市とその周辺で過ごしたらこうなった」というサンプルとして読んでもらえたらありがたい。

鹿児島の名物と聞いて何を思い浮かべるだろうか。黒牛、黒豚、鹿児島ラーメン、さつまあげ、豚骨、酒ずし、焼酎、しろくま、かるかん、さつまいものスイーツあたりが定番かもしれない。ただ、一鹿児島人として言わせてもらえれば、よく食べるものもあれば、そうでないものもある。

「名物」にはよく食べるものと、そうでないものが, 福岡人からは不評?の鹿児島ラーメン, 「黒牛」「黒豚」はめったに食べないご馳走, とんかつは普段も食べる肉料理, 夏祭りのヒヨコ、祖父から「夕べ食べたがね」, 「熊本発祥」の饅頭に行列をつくる

1950年創業「こむらさき」のラーメンは1200円。たっぷりのキャベツは、栄養のバランスをとるために初代が考えたという。ちなみに、こむらさきは京セラ創業者の稲盛和夫さんも通ったお店として知られる(写真:筆者撮影)

福岡人からは不評?の鹿児島ラーメン

鹿児島名物の中で、筆者が比較的よく口にするのは鹿児島ラーメンだ。各店バラエティに富んでいて定義が難しいのだが、独断と偏見で言わせてもらえば、鹿児島ラーメンは豚骨と鶏ガラで取ったあっさり味のスープが特徴だと思う。

また、老舗の閉店に伴い減ってきたが、昔ながらの鹿児島のラーメン店は年配の女性が切り盛りするイメージが強い。緑茶と大根の漬け物が出てくるのも鹿児島流だ。もっとも昨今の物価高騰の影響か、漬け物を出すのをやめた店もあると聞く。

鹿児島人は、鹿児島ラーメンが大好きだ。一方、筆者の周りの県外人からの評判はパッとしない。特に福岡出身の友人知人のコメントは手厳しい。

遊びに来た福岡の男性からは「あれはラーメンじゃないね」と言われた。「どこに行ったの?」と聞くと、天文館の「こむらさき」だという。

鹿児島の有名店、こむらさきのラーメンはそうめんと見紛うような白い麺が特徴だ。かん水を使っていないため、麺にはコシがない。スープには昆布や椎茸のだしも使われているらしく、鹿児島ラーメンの中でも独特の個性を放っている。私はここのラーメンが好きなのでムッとしたが、博多ラーメンや長浜ラーメン、久留米ラーメンに慣れた舌には違和感があったのだろう。

ある女性から、「鹿児島のラーメンにはキャベツが入っているのが許せない」と言われたこともある。あらためて筆者が食べている鹿児島ラーメンを見ると、キャベツやもやし、ネギといった野菜が入ったものが多い。

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2005年創業「よしみ屋」のラーメン(中)は800円。プラス100円で「もやし増し」もできる(写真:筆者撮影)

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1949年創業「のり一」のラーメン(中)は700円。あっさりスープで、飲んだあとの締めにぴったり。やはり、もやしがのっている(写真:筆者撮影)

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1967年創業「ふくまん」のラーメンは800円。緑茶と大根の漬け物を出してくれる(写真:筆者撮影)

しかし、筆者に言わせれば、肉も野菜も炭水化物も入った、バランスの取れた家庭料理のような趣き、これこそが鹿児島ラーメンだ。

鹿児島でラーメンを食べることがあったら、あなたの地元のラーメンとの違いを面白がってもらえるとうれしい。

鹿児島人はラーメンも好きだが、うどんを食べるのも好きだ。それも、フェリーで。桜島のある大隅半島側に渡るフェリーが2つあり、なぜかどちらにもうどんコーナーがある。桜島フェリーでは「やぶ金」、垂水フェリーでは「南海うどん」が営業しており、乗船時に食べるのを楽しみにしている人が多いのだ。

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桜島フェリーと桜島。右の建物は、いおワールドかごしま水族館(写真:筆者撮影)

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垂水フェリーのうどんコーナー(写真:筆者撮影)

筆者は社会人になり、大隅半島に取材に行くようになってからフェリーのうどんを知った。今も朝早くフェリーに乗るときは、このうどんを朝食がわりにしている。

桜島フェリーの乗船時間はたったの15分なので、「乗り込んだら即注文」が鉄則だ。垂水フェリーの乗船時間は45分あるので、焦る必要はない。

ちなみに「桜島フェリーと垂水フェリー、どっちのうどんが好きか?」で論争になるのも「地元民あるある」だ。

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垂水フェリーの素うどんは、つけあげ(さつまあげ)入り(写真:筆者撮影)

「黒牛」「黒豚」はめったに食べないご馳走

鹿児島グルメといえば、「鹿児島黒牛」「かごしま黒豚」は外せないだろう。鹿児島黒牛は、5年に1度開催される「全国和牛能力共進会」において2大会連続で日本一を獲得しており、かごしま黒豚も知名度は高い。県外の友人たちからは黒牛よりも「黒豚食べたい」とリクエストされることが圧倒的に多く、そのときはとっておきの店に連れていく。

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JA鹿児島県経済連直営「華蓮」のかごしま黒豚のしゃぶしゃぶ(写真:筆者撮影)

ただ、地元の人が毎日のように黒牛や黒豚を食べているかと問われれば、筆者は「否」と答える。わが家の場合、鹿児島黒牛を購入するのは、年末年始のすき焼きと、年に数回の"家焼肉"のときぐらい。普段は銘柄を気にせず、国産牛の切り落としを買う。黒牛はご馳走で、友人が来たときか、誕生日などのお祝いごとと絡めて外食で食べるものだと考えている。

黒豚も同様だ。わが家では、鹿児島県産豚肉の切り落としやバラ肉の出番が断然多い。

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「松風」の鹿児島黒牛の焼肉。鹿児島市街地から車で40分ほどの場所にある(写真:筆者撮影)

ちなみに、鹿児島には黒牛と黒豚に次ぐ“第3の黒”黒さつま鶏もある。藩政時代から闘鶏用に飼育されてきた薩摩鶏と他品種とを交配して2006年に開発されたそうだが、筆者は残念ながら一度も食べたことがない。

とんかつは普段も食べる肉料理

このように、鹿児島人だからといって「黒○○」の肉を毎日のように食べているわけではないのだ。

だが、普段からよく食べる肉料理もある。それがとんかつだ。

筆者がよく行くのは「とんかつ竹亭」。鹿屋市の本店のほかは、鹿児島市に2店舗、霧島市に1店舗の4店舗しかなく、鹿児島市の2店舗も郊外にあるため、車でないとアクセスしにくい。そのためか、竹亭はいつ行っても地元客でにぎわっている。

開店前から行列ができ、営業中もお客さんがひっきりなしだ。仕事中のサラリーマン、子連れのファミリー、老夫婦、若いカップルなど、客層は幅広い。最近は県外ナンバーの車もちらほら見かける。評判が県外にも轟いているのだろうか。

人気の秘密は、何と言っても味のよさとリーズナブルな価格だ。鹿児島県産豚のロース肉を使った「とんかつ定食」は1200円。とんかつはやわらかくジューシーで、サクサクした薄づきの衣を噛み締めると肉のうまみが押し寄せる。胃腸の弱い筆者も、ここのとんかつはぺろりと完食できる。

ご飯とキャベツはおかわり自由。谷山店では、11〜12時に入店した人にはメンチカツのサービスもある。

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1970年創業「とんかつ竹亭」。とんかつ定食は1200円。キャベツの奥に見えるのがサービスのメンチカツ(写真:筆者撮影)

黒豚にこだわるなら、天文館通電停から徒歩5分の「味のとんかつ丸一」をおすすめしたい。こんがりと揚がった迫力満点のロースかつは、ランチタイムなら1750円でいただける。昼時は行列必至のため、余裕を持って訪れたい。

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「味のとんかつ丸一」は1983年創業。写真はロースランチ定食1750円。その大きさ、分厚さに一瞬ひるむが、さすがは黒豚。あっという間にお腹におさまるおいしさ。特製ソースと辛子をつけ、レモンを搾っていただくのが丸一スタイル(写真:筆者撮影)

近年のとんかつブームを受けてか、鹿児島県内には銘柄や部位、調理法で差別化した新しいとんかつ店が続々とオープンしている。いろいろ試して、好みの味を見つけてみてほしい。

夏祭りのヒヨコ、祖父から「夕べ食べたがね」

もう1つ、筆者がよく食べている肉料理が「鳥刺し」だ。さばく過程で毛を焼くため、香ばしい風味がつき、肉は「たたき」状態となっている。

鹿児島ではかつて「鶏は歩く野菜」と言われ、家の庭で鶏を飼って来客やお祝い事のたびに潰してふるまう習慣があった。筆者の祖父宅でも鶏を飼い、さばいていたのを思い出す。

夏祭りで買ったヒヨコが成長して面倒を見きれなくなったので、祖父に預けたら鳥刺しにされたこともあった。鶏小屋を覗いて「いない!」と騒ぐ私たちきょうだいに「夕べ食べたがね(昨夜食べたでしょ)」と冷静に告げた祖父の表情が忘れられない。

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鶏肉専門店で買ってきた鳥刺し盛り合わせ。手前から奥に向かって、羽身、砂ずり、ももの刺し身(写真:筆者撮影)

鹿児島県では2000年に鳥刺しに関する独自の衛生基準が設けられた。そのため、地元民も観光客も、安全性の高い鳥刺しを安心して食べることができる。スーパーや「かしわの◯◯」「◯◯かしわ店」といった鶏肉専門店で普通に買うことができ、居酒屋のメニューに載っていることも多い。

県外から来た友人に鳥刺しをリクエストされたことは一度もないのだが、生食に抵抗がなければぜひ試してみてほしい。

鳥刺し好きの鹿児島人は、だいたい「ここで買う(食べる)」と店を決めているようだ。筆者も決まった店で購入し、鹿児島の甘い醤油と、にんにくや生姜のすりおろしをつけて食べる。もちろん、お供は芋焼酎のお湯割りだ。外で食べるなら、鹿児島空港から車で15分の「地鶏の里 永楽荘」がおすすめ。鮮度抜群の鳥刺しだけでなく、黒牛、黒豚もいただける。

「熊本発祥」の饅頭に行列をつくる

最後は、甘いもので締めることにしよう。

観光客にも人気の「しろくま」は地元民にも人気のかき氷だ。夏は専門店に行列ができている。だが、筆者は店に並んで食べることはない。実家の冷凍庫には、夏になると「ボンタンアメ」で有名なセイカ食品のしろくまのカップアイスが入っていたからだ。

「かるかん(軽羹)」も観光客に人気のお菓子である。多くの鹿児島人にとっては高級なお菓子で、贈答品のイメージが強いのではないだろうか。自分で買うことは少ないが、もらうとうれしい。県外出張時の手みやげとしても重宝している。

かるかんには餡なしと餡入りがあり、前者は「かるかん」、後者は「かるかん饅頭」とよばれる。子どものころは断然餡入り推しだったが、大人になり、餡なしもおいしいと思うようになった。

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最近ではかるかんをトースターで温めてバターをのせる食べ方があると聞き、実食。かるかんの甘さとバターの塩っぱさがマッチしてクセになる味(写真:筆者撮影)

今回はせっかくなので、しろくま・かるかん以外で、鹿児島人に人気のお菓子を紹介しよう。それが鹿児島の繁華街、天文館にある「蜂楽饅頭」。いわゆる今川焼きだ。味は「黒あん」と「白あん」の2種類があり、価格は1個120円。持ち帰り用の窓口にはいつも長い行列ができている。

鹿児島人にこれほど愛される蜂楽饅頭だが、じつは熊本県水俣市が発祥だ。鹿児島天文館店は1959年に開店。物心ついたときから見ているので、筆者はこのあいだまで鹿児島の名物だと思いこんでいた。

持ち帰って皮がしっとりしたタイミングでいただくのもいいが、店内でサービスの緑茶とともに、焼き立てをいただくのもまた格別だ。「熱いので気をつけてください〜」という声かけとともに出された饅頭は、外はカリッ、中はむっちりとしている。120円で幸せになれることうけあいだ。

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蜂楽饅頭 鹿児島天文館店の蜂楽饅頭とサービスの緑茶。店内で食べるときは、店に入ってすぐ右の窓口で会計しよう(写真:筆者撮影)

鹿児島人としては、両棒餅(ぢゃんぼもち)もぜひ県外の人に食べてほしい。あぶった餅に2本の竹串を刺し、醤油や味噌を使った甘いタレをかけた餅である。

薩摩藩島津家の別邸「名勝 仙巌園」のすぐそば、鹿児島湾と桜島を望む道沿いに4軒の両棒餅屋が軒を連ねている。鹿児島では目の前の海で海水浴をしたときに食べた思い出の味という人が多いだろう。

筆者にとって、両棒餅屋のある通りは実家と鹿児島市の行き帰りで必ず通る道である。渋滞時には助手席まで店の人が売りにきてくれるので、親にねだって買ってもらっていた。ときどき無性に食べたくなり、年に数回訪れている。

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1874(明治7)年創業「平田屋」の両棒餅は10本で700円。注文すると知覧茶と山川漬(鹿児島県指宿市山川地区で作られる大根の漬け物)も出してくれる(写真:筆者撮影)

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店内では目の前の桜島を見ながら、両棒餅をいただける(写真:筆者撮影)

また、鹿児島では地域でとれる穀物や芋類、植物の葉を使った、独自の「だんご」の文化が育まれてきた。そのうちのいくつかは個人経営の菓子店などでいまも購入することができる。

「かからんだんご」は、香りのよい「かからの葉(サルトリイバラ)」で小豆やよもぎのだんごを包んで蒸したもの。5月の節句の時期に家庭で作るものだったそうだが、いまは店で買う人が多いだろう。

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かからんだんご。左の煎粉餅(いこもち)も鹿児島の昔ながらのお菓子だ(写真:筆者撮影)

「あくまき」も5月の節句に欠かせない。木灰を水に溶かした灰汁に浸けた餅米を竹の皮で包んで蒸したお菓子で、きなこや黒砂糖をつけて食べる。

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あくまき。スーパーや物産館で手に入る(写真:hungryworks/PIXTA)

観光ガイド本で紹介されている鹿児島の食は、鹿児島人にとってもご馳走、というのが正直な感想だ。鹿児島人はお客さんが来たら張り切るが、普段は素朴なものを食べている。「いつも食べているものを教えて」と聞いてみると、思いもよらない鹿児島名物が飛び出すかもしれない。