愛子さまと「りくりゅう」三浦璃来さんの装いは「和洋リンクコーデ」のよう! 「御所解文様」に海外高級レザーバッグの新しさ

春の園遊会で注目を集めた、和装の招待者といえば、ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケートのペアで日本代表初の金メダルを獲得した「りくりゅう」こと三浦璃来さん(24)と、木原龍一さん(33)だろう。三浦さんの振袖は、神戸の老舗呉服店の特注品。うっすら紫がかった桃色の振袖は、愛子さまの淡いラベンダーの装いと美しく調和していた。
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愛子さまの装いは淡いラベンダー色。そして、三浦璃来さんの振袖は、ほんのり紫がかった桃色を指す「撫子色(なでしこいろ)」だった。
春の光を包んだような両者の色調は、まるで一対の衣装のように優しく調和していらした――。出席者のひとりは、そうため息をついた。
「三浦さんは、個人的には…同い年で12月生まれと、ご一緒なので。勝手ながら、親近感をもって拝見させていただいていました」
愛子さまのこの言葉が話題になった、「りくりゅう」ペアとの歓談は、ふんわりと和やかな空気に包まれていた。
ジャンプ談義に花が咲くなか、侍従が「お時間が…」といった様子で、愛子さまにそっと耳打ちする。愛子さまは深くうなずくものの、まだまだお話が足りないといったご様子で、歓談は続いた。
「空中で回っている間――、怖くはないですか」
愛子さまがこうたずねると、三浦さんはパートナーの顔を見たあとにしっかりとした声で、こう答えた。
「はい。落ちても、僕が下敷きになるからね、と声をかけていただいているので――。信頼しているので…、怖さは一切ないです」
大切なパートナーをしっかりと支え、守ってきた木原さんは、すこしだけ気恥ずかしそうに微笑み、同意するように頭を下げた。

この日の装いは、薄緑の羽織はかま。色紋付に染め上げられた五つ紋の「五三の桐」は、木原家の家紋だ。
袴地に用いられる絹織物の「仙台平(せんだいひら)」は、人間国宝・甲田綏郎(よしお)氏が制作した品だという。

隣では、振袖姿の三浦さんがほほ笑んでいる。うっすら紫がかった淡い桃色の地色は、三浦さんの透明感のある美しさを、より際立たせていた。
ふたりの和装をプロデユースしたのは、『家庭画報』チームだ。三浦さんの振袖と帯は、神戸の老舗呉服店、「きもの百科イトカワ」の大切な品だ。
店主である糸川 英里(えり)さんによれば、この振袖は、父である先代社長が、孫(英里さんの娘)の成人式のために図案師と構図から作成し、仕立てた品だという。
「嬉しい偶然もありました」
そう、糸川さんは振り返る。
三浦さんはおよそ146cmと小柄でスレンダー。英里さんの娘も小柄であったため、振袖の寸法も、まさにぴったりであったという。
撫子色で染めた「一越ちりめん地(ひとこしちりめんじ)」に、総刺繡で「御所解(ごしょどき)文様」を描いたこの振袖は、制作に3年もの歳月をかけたという。
「御所解文様」とは、江戸時代中期から後期にかけて主に公家や武家の大奥や大名の奥向きの女性用の正装に用いられた文様で、『源氏物語』といった王朝文化の流れを汲み発展した情景を描き出したものだ。

園遊会で三浦さんが着た振袖。その「御所解文様」の細部に注目すると、美しい情景が見えてくる。着物全体には総刺繍で、流れる流水や霞に水草、桜や菊、竹や松といった四季の草花と、御所車や山中の殿舎、干網や扇や蓑笠などが細部にわたって施され、まるで日本画のよう。
技術面では一切妥協がない。桜や菊、松や笹など吉祥の草花には、紫や白、濃い赤紫の蘇芳(すおう)の色で絵画のように濃淡と遠近をつけて仕上げてゆく。
一方で、格式のあるこの振袖を、三浦さんは洋装のように感じるほど、ふんわりと軽やかに着こなしていた。前出の店主、糸川さんは、こう話す。
「いまの時代を生きる女性がうちの着物に袖を通したときに、思わず『可愛い』という言葉が飛び出すような、そんな着物をつくるのがイトカワの理念です」
あの撫子色の振袖は、24歳の三浦さんがいちばん美しく映えるような、そんな作品だったのではないかなと思います、と続けた。

初代社長は、終戦翌年に和歌山県で呉服店を創業したのち、1970年に神戸市の三宮に出店。港に近く、かつては異国情緒あふれたこの街は、伝統とともに新しい価値観を柔軟に吸収する土壌がある。
この「御所解文様」の振袖が仕立て上がったのは、7年ほど前のこと。総刺繍に用いられる刺繍糸には、水色やブルーグリーンに近い緑青(ろくしょう)色といった、ビビッドな色を選んだ。
「いまの女性の顔の造形や骨格は、着物が日常着であった時代とはまるで違います。和装のメイクやヘアスタイル、髪の色さえも、洋服のときと大きく変わりません。ならば、着物も伝統を守りながらも少しだけ時代にあった要素を加えることで、いま着る人がいちばん美しく映る品を作ることができる、そう思うのです」(糸川さん)
この日、「りくりゅう」のふたりが手にしていたのは、和装用の織物バッグではなく、おそろいの革製バッグだった。伝統のなかに光るモダンな個性。ふたりの和装からは、そんなみずみずしさがあふれていた。
(AERA 編集部・永井貴子)

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