90代ひとり暮らしの「ものの持ち方・手放し方」。持ちすぎない、でも亡き夫のセーター3枚は手放さない
どれだけ収納を増やしても、買い物好きの家はものでいっぱいになりがち。デザイナー・人形作家として活躍する粟辻早重さん(90代)は、新しいものを入れる分だけ古いものを手放す「ところてん方式」をとり入れています。必要なものを循環させつつ、大切なものは残す。粟辻さん流の習慣を紹介します。
※ この記事は『92歳、好き放題で幸せづくし』(KADOKAWA刊)に掲載された内容を一部抜粋・再編集して作成しています
【写真】大好きな靴下は、この箱に入る分だけ

夫の書斎にあるものは、ほぼ当時のまま。資料にしていた美術書などを開くと、なんだか懐かしい気持ちになります
持ちものは「ところてん方式」で整理する

手元に残す靴下を決めたら、1足ずつそろえてたたんでおきます。靴下をまとめておく輪ゴムも、お気に入りのカラフルなものを使っています
ものが増えていく。これは、私のような買い物好きの宿命です。収納スペースがたっぷりあったとしても、ものを増やす一方だといずれは入りきらなくなってしまいます。「収納場所がないから買わない」という考え方もありますが、残念ながら私の流儀には合いません。
私には、「新しいものを入れるために、すでにあるものを送り出して収納スペースをつくる」やり方のほうがしっくりきます。名づけて「ところてん方式」です。
●不要なものを手放すのは、小さな心のぜいたく
たとえば食器類は、よく人にゆずっていました。洋服のように古びることがないので、喜んでもらってくれる人も多いんです。いざとなると処分するのをためらうものもあるけれど、私はいらないと思ったら「えい!」と手放します。「まだ使える」というだけの理由で、愛着がなくなったもので限られたスペースを埋め続けるのは、かえってもったいないと思うから。
たとえ靴下1足でも、心から「好き」と思えるものは自分を幸せにしてくれます。身の回りの「好き」を増やすために不要なものを手放すのは、小さな心のぜいたく。自分を満たすために必要なことだと思っています。
着ないけれどとっておきたい服もある

古い真っ赤なジャケットは、クローゼットを明るくしてくれる存在です
洋服を整理する場合、手放すかどうかを決める際に難しいのは、着心地と見た目のバランスを見極めることです。たとえばTシャツは少しくたっとしてきた頃が着心地がよいため、つい長く着続けてしまうけれど…。
今年の夏、外出先でなにげなく鏡を見たら、だらしない服を着たおばあさんが映っていました。よく見たら、それは私! 着るものを選ぶときは自分を客観視することも忘れちゃいけないな、と反省しました。
「ところてん方式」で、今好きなものを持つことにしてはいるけれど、「古いから」「使わないから」と割りきれるとは限りません。片付け上手な人は「1年着なかったものは捨てる」などとルールを決めていたりしますが、私には無理。「今もこれからも使わないけれど持っていたいもの」もあるからです。
●夫のカシミヤセーターはずっと手元に残す
たとえば、真っ赤なジャケット。何十年も着ていないので、本来は処分するべきでしょう。でも、私のクローゼットにある服は、黒、白、グレーがほとんど。赤いジャケットを捨ててしまったら、ここから光がなくなってしまう! だから、この先も着ることがないのはわかっていても持ち続けているんです。
もうひとつが、夫のカシミヤのセーター。ほかの衣類は処分したけれど、夫がとくに好きだった3枚は手元に置いています。私には大きすぎるけれど、風邪をひいてパジャマで過ごすときのガウンがわりにぴったり。腰までおおわれるから温かいし、なつかしいセーターにくるまっていると、夫に抱きしめられているような気分になれるんです。