1階に土俵、力士も生活 「相撲部屋付き賃貸」が常に満室のワケ 「朝稽古の音が目覚まし代わり」「ちゃんこ会」「ジムで力士に遭遇?」
東京スカイツリーの東側にある墨田区文花・京島を歩いているとひときわ目立つ6階建てのビルがある。1階に「押尾川部屋」の大きな看板がかかるここは、相撲部屋のある複合型マンション「クリエイティブハウス文花」。下層階は、元関脇・豪風として活躍した押尾川親方が開く押尾川部屋が、上層階は単身者用の賃貸物件が共存する珍しい造り。
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入居者は朝稽古が見学できる(撮影:梅谷秀司)

下層階は押尾川部屋が、上層階は単身者用の賃貸物件が共存する「クリエイティブハウス文花」(撮影:梅谷秀司)
入居者は押尾川部屋の朝稽古見学ができる特典がある。いったいここではどんな暮らしができるのか。その実態を探るべく、押尾川部屋と物件の管理を行うエイゼンを取材した。
相撲ファンの入居者は節度を守って力士を見守る
1階から3階は押尾川部屋で、土俵のある稽古場、ちゃんこを作る厨房とダイニング、複数人が入れる大きな浴室などの水回り、現在12名の力士が暮らす大部屋、親方の住居で構成されている。
内装は親方が計画の段階から携わり、稽古場のある1階は天井を高くして木材をふんだんに使うなど、こだわりをちりばめた。また、力士と親方の住居はしっかり区切って力士のプライベートを守るなど、間取りにも親方のアイデアが反映されている。

シェアハウスの個室は約6畳。冷蔵庫、机、イス、ベッドフレームなど基本的な家具が備え付けられていて便利(写真:エイゼン)

約16畳のワンルーム。周囲に高い建物がないため日当たりは抜群(写真:エイゼン)
賃貸部分は、3~4階がシェアハウスで約10m²の居室が10部屋、5~6階が約25m²のワンルームが10部屋という構成になっている。家賃は近隣の平均相場と同程度。
「シェアハウスで人と交流しながら暮らしたい人、ワンルームでプライバシーを確保したい人と、入居者の考え方はそれぞれ。両方のニーズを満たす物件にしました」(エイゼンの片桐拓弥社長)
エイゼンでは、すでに京島エリアで長屋をリフォームしたシェアハウスの賃貸物件を運営して好評を集めていた。そこでの要望や課題を踏まえ、クリエイティブハウス文花ではトイレとシャワーはバッティングしてもいいように2つずつ設置し、共用であるリビングとキッチンはできる限り広くとるなど、より暮らしやすい環境を整えた。

シェアハウスの共有トイレは2つ設置されている(撮影:梅谷秀司)

清潔感があり、広々とした共有リビング(撮影:梅谷秀司)

調理道具がそろった共有キッチン(撮影:梅谷秀司)
そんな経緯があって、2022年4月にクリエイティブハウス文花が完成。実際に入居者を募ると学生だけでなく20~30代の若い社会人も集まった。
『スー女』が集まる?
「全員ではありませんが、定期的に相撲好きな人が入居されます。特に『スー女』と呼ばれる若い女性の相撲ファンの方が多いですね。みなさんマナーや節度を守って力士を見守っています。シェアハウスにはワーキングホリデーで来日した海外の方もいて、稽古見学を通して日本の相撲文化を体験しています」(片桐社長)

朝稽古を見学できる(撮影:梅谷秀司)

朝稽古の様子(撮影:梅谷秀司)
朝稽古見学に加えて、年末に押尾川部屋とエイゼンが合同で行う「ちゃんこ会」に参加できるのも入居者の大きな特典。力士が作ったちゃんこ鍋を味わいながら親方や力士と交流できる貴重な機会で、若者同士、話に花を咲かせているという。相撲好きな入居者の親が遠方から上京して参加することも。

押尾川部屋、入居者、エイゼン関係者、地元のバレーボール実業団チームが集う忘年会も開催(写真:クリエイティブハウス文花ホームページより)

エイゼンの管理物件の入居者を対象に屋上を開放し、隅田川花火大会を鑑賞(写真:クリエイティブハウス文花ホームページより)
また、毎年7月に行われる隅田川花火大会に際しては、エイゼン主催でクリエイティブハウス文花の屋上を会場に入居者向けの花火見学会を開催。スカイツリーをのぞむ絶好のロケーションで花火を楽しめるうえ、名古屋場所と開催時期が被らなければ、押尾川部屋の一同も参加する。積極的に出席してコミュニケーションを楽しむ入居者が多いという。

屋上からは東京スカイツリーも見える(撮影:梅谷秀司)
イベントだけでなく、日常生活でもここでしかできない体験が待っている。
「朝稽古の声や音は入居者にも聞こえるそうですが、今まで苦情が来たことはありません。逆に『朝が来た』という目覚まし代わりになっているのでしょうね。学校や会社に行く際、相撲部屋の前を通ると開いた勝手口から稽古風景やちゃんこを食べている力士の様子が見えるのが楽しいという声も」(片桐社長)
部屋は常に“満室”
入居者と力士の接点はほかにもある。
クリエイティブハウス文花の近くにあるエイゼンが運営するフィットネスジムには押尾川部屋のリクエストに応えてダンベルやバーベルなどフリーウエイト系の器具をそろえており、稽古後にジムを利用する力士も多い。入居者は特典として無料でジムを利用できるので、何気なく行ってみたら力士と遭遇、ということもありえるのだ。

「24Hフィットネス筋二郎 墨田文花店」は力士向けの器具が充実(写真:エイゼン)

タイミングが合えば力士がトレーニングする様子を見られるかも?(写真:エイゼン)
生活の一部にお相撲さんがいる、そんな特別な暮らしを送れるクリエイティブハウス文花。ワンルームとシェアハウスは常に満室だという。
「住み始めると長い方が多いです。徒歩圏内にキラキラ橘商店街や大型スーパーがあり、買い物も便利。東武亀戸線の小村井駅まで徒歩6分、京成押上線の京成曳舟駅まで徒歩12分とアクセスが特別にいいわけではないですが、そのぶん落ち着いた住環境が魅力です」(片桐社長)

エイゼンの片桐拓弥社長(撮影:梅谷秀司)
押尾川親方も、この地で相撲部屋を開いてよかったと深くうなずく。
「相撲部屋を開いて4年がたちましたが、文花・京島エリアは素晴らしい地域だなと実感しています。差し入れをいただいたり、近隣のみなさんが下町らしい温かい雰囲気で応援してくれて、とても居心地がいいです。
地域に根差した相撲部屋を目指しているので、町内会との交流も積極的に行っています。お祭りやイベントに顔を出して、主体的に楽しむことが力士たちの活力にもなっています」(押尾川親方)

押尾川親方(撮影:梅谷秀司)
他にない付加価値を持つクリエイティブハウス文花。人と人とのふれあいが息づく下町で、相撲という伝統文化に触れながら送る生活は、入居者にとってかけがえのないものになるだろう。