待望の7年ぶり『スター・ウォーズ』新作が"出足好調"の背景 スピンオフは"ヒット規模が縮小中"だが…本作は覆せるか

世界中の熱狂的なファンから支持される伝説的シリーズの『スター・ウォーズ』。

【写真を見る】2000年以降の『スター・ウォーズ』シリーズの興行収入推移。最新作での可愛いグローグーも

2027年は劇場第1作の全米公開から50周年を迎えるが、その露払いとなる7年ぶりのシリーズ最新作『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』が、5月22日より日米同時公開された。

出足としては、週末映画動員ランキング1位(興行通信社調べ)、初日から3日間で動員43.5万人、興収7.49億円のヒットスタートになった。

同シリーズスピンオフとの興行収入の同期間比較では、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(18年/最終興収21.4億円)の114%、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー 』(16年/最終興収46.3億円)の81%。この先の話題の伸びに期待がかかる。

公開とともにSNSでは絶賛の声が溢れた一方で、否定的なポストも少なくないようだ。現時点で評価は割れているが、ポジティブな声の方が多勢だろう。とくに若い世代からの好意的な発信が目立っている。

長きにわたって紡がれる本シリーズは、オリジナル3部作からの50代以上の年配層がコアファンになる。そうしたなか今作は、若い世代の取り込みを狙う位置づけのスピンオフになっている。

初週の興行成績とSNSのリアクションからは、まずは概ねその狙い通りの風が吹いたことがわかる。ここから大きな波になっていくか。

『スター・ウォーズ』が紡いできた半世紀の歴史

『スター・ウォーズ』はもともと、ジョージ・ルーカス監督による映画企画のオリジナル物語として生まれた。

銀河系を舞台にした壮大な宇宙戦争の物語は、当初からエピソード1〜9まであったが、1977〜83年のオリジナル3部作(旧3部作)では、エピソード4〜6が『新たなる希望』『帝国の逆襲』『ジェダイの帰還(公開時のタイトルはジェダイの復讐)』として映画化された。

そこから伝説が始まる。当時革新的だったVFX映像や音響のクオリティと物語の世界観は、熱狂的なファンダムを生み出した。

99〜05年には新3部作としてエピソード1〜3『ファントム・メナス』『クローンの攻撃』『シスの復讐』、15〜19年にエピソード7〜9が続3部作『フォースの覚醒』『最後のジェダイ』『スカイウォーカーの夜明け』として公開された。

約5年をかけて上映される3部作が、10〜15年ほどの感覚をあけながら、約40年にわたって公開されてきた、3シリーズ9エピソードの壮大な物語になる。さらに、この実写映画シリーズを本編として、ドラマやアニメシリーズなど多くのスピンオフが生まれている。

スピンオフ実写映画としては、時系列ではエピソード3『シスの復讐』とエピソード4『新たなる希望』の間の物語になる、『ハン・ソロ』(18年)と『ローグ・ワン』(16年)が公開された。

それに続くスピンオフ3作目になるのが今回の『マンダロリアン・アンド・グローグー』であり、エピソード6『ジェダイの帰還』の後の帝国が崩壊した銀河を舞台にした物語になる。

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(写真:『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』(C)2026 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.)

スピンオフ4作目のライアン・ゴズリング主演『スター・ウォーズ/スターファイター(原題)』(27年5月28日全米公開予定)は、エピソード9『スカイウォーカーの夜明け』の後を描く初めての物語になる。

ドラマやアニメもあり膨大な作品数に

ちなみに、実写映画以外でも、ドラマシリーズでは19年以降『マンダロリアン』『スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー』『スター・ウォーズ:アソーカ』など複数シーズン続く人気作が生まれ、アニメでは『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』など80年代から多くのシリーズが誕生し、ファン層を拡大してきている。

スピンオフを含めると膨大な作品数になるが、ディズニーの公式サイト「スター・ウォーズヒストリー」では、映画やドラマシリーズの実写、アニメを含む全作品を物語の時系列で一覧にしている。

今年で77年の第1作公開から49年。本編シリーズ第9作までの全世界興行収入は推定102億ドル。スピンオフ映画やアニメ、ドラマシリーズを含め、グッズなど『スター・ウォーズ』関連売り上げをあわせると、総額は推定460億ドル以上と言われる。

ちなみに日本での興収は次ページの通り。日本でも100億円を超えるシリーズではあるが、誕生から長い時間を経て、数字的には全盛期を過ぎているように見受けられる。

とくにスピンオフは大きく数字を下げている。それでも市場では大ヒットと呼ばれる規模であり、熱烈なコアファンの存在と作品そのものが持つ力を示している。

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スター・ウォーズ

往年のファンの心を揺さぶるオマージュも

そうしたなか、7年ぶりのシリーズ新作となるのが、スピンオフ3作目の『マンダロリアン・アンド・グローグー』だ。

物語の舞台は、エピソード6『ジェダイの帰還』の後の銀河。ダースベイダーの死後、帝国は崩壊したがその残党や無法者がのさばり、宇宙は混沌としていた。

伝説の賞金稼ぎマンダロリアンは、帝国復活への新たな戦争を防ぐための依頼を新共和国から受け、父子のような絆で結ばれるグローグーとともに任務に就く。

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(写真:『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』(C)2026 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.)

ストーリーはこれまでのシリーズ同様、単純明快だ。与えられたゴールに向かって、次々に挟み込まれるミッションをこなしていく王道のスペースアクションアドベンチャーになる。

そこには、オリジナル3部作からの昭和世代ファンにとってたまらないシーンがいくつもあった。

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(写真:『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』(C)2026 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.)

とくに、メカファンに大人気のAT-ATウォーカー。エピソード5『帝国の逆襲』で、雪原を迫りくる帝国の大軍のなかでひときわ威圧感を放っていたAT-ATが、本作でも帝国の残党との戦闘で登場する。屈強そうな筐体の4本脚の全地形対応戦闘ビークルだが、その動作はどこかぎこちなくもあり、実はあまり強くない。

耐ブラスター装甲プレートを装備し、前方にはヘビーレーザーキャノンとブラスターキャノンと強力な火力を備える戦闘力の高いトランスポーターである一方、脚を狙われるとバランスを崩してあっさり倒壊する。

そのギャップに良さがある。本作のマンダロリアンとの戦闘では、けっこう活躍する。それでもやはり破壊される。そのAT-ATらしいやられっぷりに不思議な爽快感があった。

ほかにも、エピソード6『ジェダイの帰還』のルーク・スカイウォーカーとジャバ・ザ・ハットの対峙や、両軍勢の砂漠での戦闘を彷彿させるいくつものシーンがあり、エピソード4『新たなる希望』の伝説の名シーンのオマージュには胸を熱くさせられた。

本作には、オリジナル3部作への愛とリスペクトが満ち溢れている。心を揺さぶられた昭和のおじさんは少なくないに違いない。

これまでのシリーズとは異なる世界観のスピンオフ

一方、スピオンオフとなる本作には、これまでのシリーズと異なる点も多い。

今回のマンダロリアンの物語には、シリーズを通して描かれる共和国軍と帝国軍の戦闘と、その根底にあるスカイウォーカーの血筋を巡る光と闇の闘いとは、直接的なつながりはない。定番になっているキャラクターの成長の裏の試練もない。

スピンオフだから当たり前といえばそうなのだが、シリーズ全体を覆い尽くす暗いトーンと重い空気感がないのだ。

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(写真:『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』(C)2026 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.)

逆に、マンダロリアンとグローグーの『子連れ狼』のような旅路とエピソードには微笑ましさがあり、作品の世界観にいつものような暗さがない。

とくに、小さくてかわいいグローグーの愛らしさは、シリーズのなかで異色だ。彼の行動に笑いが起きる場面もあり、場内が温かい空気に何度か包まれたのを感じた。明らかにこれまでの『スター・ウォーズ』作品とは異なる空気感を醸し出していた。

それが示すのは、本作がライト層向けの作品であり、シリーズ未見の人への入り口としての位置づけになっていることだ。

シリーズ未見のライト層向け作品になった背景

それには理由がある。

50周年という節目を迎える来年に公開される予定の『スターファイター(原題)』は、本編シリーズ9作(エピソード9)の後の宇宙を描く初めての物語になる。さらにその先には、ジョージ・ルーカスによる原作にはない、まったく新しい物語の『スター・ウォーズ』の新3部作の企画が進んでいる。

つまり、来年は『スター・ウォーズ』の新たな幕開けの年になるのだ。そこからシリーズは新章に入る。

その序章の位置づけになるのが今回の『マンダロリアン・アンド・グローグー』だ。歴史ある大作シリーズが次なる時代へと変革を遂げる新章へのプロローグは、若い世代をはじめとした新たなファン層の開拓の役割を担っている。

そのためのグローグーだろう。小さくてかわいいキャラクターが活躍する物語で、女性をはじめとする若年層へのアプローチを狙った。

実際、週末のシネコンのスクリーンには、若い世代の男性グループやカップルのほか、女性の2〜3人組の姿も目立っていた。

SNSを見ても、女性層からの好評のポストが目立つ。一定の成果を得ているようにうかがえる。

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(写真:『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』(C)2026 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.)

シリーズの変革を打ち出しながらも、もちろん年配層を中心にするコアファンを切り捨てるわけではない。その世代の心を掴む作り込みもしっかりとあり、個人的には後半は胸熱だった。

ライトセーバーこそ出ないものの、両手にそれぞれ大鎌と剣を持つ2人がぶつかり合う、まるで日本の時代劇のようなソードアクションや、戦闘機で地上の拠点を急襲するラストの戦闘アクションはまさに『スター・ウォーズ』シリーズそのもの。

父子関係の確執とそこからの解放や、仲間との絆がしっかりと描かれ、感動のラストに落とし込まれる。王道のスペースアクションエンターテインメント大作である本シリーズの流れをしっかりと継承している。

スピンオフということもあり、作品テイストこそこれまでのシリーズとは異なるものの、本筋の物語性を受け継いでいるから、従来ファンも納得しているのではないだろうか。

加えて、本作のよさには、映像描写にぬるさがないことがある。昨今の世間の風潮に忖度することなく、この物語を描くために必要なシーンをしっかりと映し出している。

戦時を生きる彼らが直面する生死をかけた戦闘も暴力も、激しさとキツさを伴って映す。物事の本質から目をそらさないから、そこには迫力が宿る。テレビドラマのような丸さはない。演出も映像描写もしっかりした、大人向けの戦争映画の側面を有する。

『スター・ウォーズ』新章の今後に注目

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(写真:『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』(C)2026 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.)

シリーズはこれまで、共和国と帝国との抗争を通して、銀河の多様な種族の調和や協調をひとつのテーマとして入れ込んできたが、本作はそうした社会性やメッセージ性は前面に打ち出されない。賞金稼ぎが直面する諍いを映す、エンターテインメントに特化している。

それは、『スター・ウォーズ』を知らなくてもおもしろい、誰でも楽しめる物語になっている。

初週の結果を見ても、その狙いが奏効しているように見える。まずは来年の新たな幕開けに向けた地ならしの成果が表れている。ここからスタートする『スター・ウォーズ』新章は、幸先良い出足になった。