地元民に「夜は危険だから近寄るな」と警告されたが… ドヤ街《大阪・西成あいりん地区》の"本当の姿"

高度経済成長期に日雇い労働者が集まる街として栄えた、“日本最大のドヤ街”とも言われる大阪・西成のあいりん地区。近年は、自治体やNPOによる治安改善に向けた動きもあり、ディープな観光地として外国人観光客やバックパッカーが増えている。

【写真22枚】地元民に「夜は危険だから近寄るな」と警告されたエリア。西成の「絶品グルメ」や「リアルな街の様子」も

一方、一部地域の荒んだ空気は現在も変わらず、興味本位の観光客が近寄れば剣呑な雰囲気が漂うこともある。近隣のホルモン焼き屋の店主は、「とくに三角公園周辺は夜は危険だから近寄るな」と話す。

そんなあいりん地区を歩き、西成の現在の姿をお伝えする。

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下

大阪・西成といえばドヤ街のイメージがあるが、それは新今宮駅(JRと南海電鉄)周辺のあいりん地区だけ。西成区全体を見れば、閑静な住宅地も、真新しい都市型ホテルもあり、駅周辺の繁華街には外国人観光客の姿も目立つ。

新今宮駅も、北側の一部は再開発され、すぐ駅前に星野のリゾートの大型ホテルがそびえるほか、南側も駅の近くは都市型ホテルがいくつも並ぶ。この辺りだけなら普通の街だが、そこから南のあいりん地区へと足を進めると異世界が広がる。

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

新今宮駅北側の一部は再開発され、大型ホテルがそびえる(写真:筆者撮影)

あいりん地区のシンボルになる、新今宮駅前のあいりん総合センターは、建物の老朽化により現在は閉鎖され、工事の仮囲いに覆われている。センター内の各施設はそれぞれ近隣に移っているが、職安や労働福祉センターは、すぐ近くの南海本線ガード下にある。

それらが置かれる新今宮駅から萩ノ茶屋駅に向かう南海本線のガード下東側が、“そういう場所”。あちこちの壁やシャッターには落書きがあり、ホームレスの荷物らしきものが散見される。職安の周囲には、ガード沿いの垣根に座り込む年配者や、車座になって酒を飲む数人の集団が、平日昼間から少なくない。

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

新今宮駅から萩ノ茶屋駅に向かう南海本線のガード下には昭和の世界があった(写真:筆者撮影)

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

南海本線のガード下の自転車屋(写真:筆者撮影)

昭和にタイムスリップした気分

周辺には、何屋かよくわからない商店や、「酒」の看板を出すアルコール飲料の自動販売機が密集する狭い空間などがあり、昭和へ時空を超えたような感覚に陥る。

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

落書きもあり独特な雰囲気が漂う(写真:筆者撮影)

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

あいりん労働公共職業安定所は、南海本線ガード下の西成労働福祉センターのすぐ隣にある(写真:筆者撮影)

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

アルコール飲料の自販機が集まるガード下の狭い空間。外には「酒」の看板が掲げられている(写真:筆者撮影)

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

商店があちこちで営業している(写真:筆者撮影)

このエリアのソフトドリンク飲料の自販機は、1本100円がデフォルト。見たことないメーカーのドリンクがある50円〜の自販機も発見した。それが最安値のようだ。

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

ソフトドリンク飲料の自販機はどこも100円だが、50円〜も発見。この一帯の最安値のようだ(写真:筆者撮影)

自治体が「西成ウォールアート」として仕掛けた、国内外の芸術家によるグラフィティアートも、街のところどころの壁面に見ることができる。代表的なものは、萩ノ茶屋駅から南下した東側のガード下の壁面。また、阪堺電車の新今宮駅の壁一面のグラフィティは目を引く。

わざわざ見に行くほどではないが、落書きだけではないことも知っておくといいだろう。

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

南海本線ガード下の西成ウォールアート(写真:筆者撮影)

昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

炊き出しのテントが手前に見える三角公園(萩之茶屋南公園)の南西側の入り口から。東側と北側の公園沿いの道路には、路上生活者や日雇い労働者などが集まる(写真:筆者撮影)

南海本線の萩ノ茶屋駅から、線路の東側に平行する紀州街道に向かうと、三角公園(萩之茶屋南公園)がある。支援団体などによる炊き出しが定期的に行われる公園であり、一角にはそのテントなどが備えられているが、この周辺はとくに雰囲気が異なる。

公園沿いの道路には、年配の路上生活者や日雇い労働者などが集まっており、一見平穏なように映るが、観光客が興味本位で近づけば、剣呑な空気が漂うことも少なくない。近くの人によるとトラブルが起きることもあるという。近隣のホルモン焼き屋の主人からは、「夜は三角公園付近には近づくな」と注意された。

また、すぐ北には西成警察署があるが、その裏の四角公園(萩之茶屋中公園)の周囲は、三角公園と同じ雰囲気が漂っている。公園の周囲を立ち止まらず通り過ぎる分には問題ないが、とても写真を撮れる雰囲気ではない。

ちなみに、四角公園に隣接する10階建てくらいのビジネスホテル(簡易宿泊所ではない)は、1泊1400円の看板が出ていた。

この辺りはホルモン焼きが名物になり、店先に鉄板と簡易席を置く店舗も多い。高度経済成長期の日雇い労働者の街だった当時、安価で高カロリーなホルモン焼きが定着した歴史的な背景がある。

現在は、ホルモン焼きと、かすうどん(ホルモンが入ったうどん)は西成のソウルフードになり、有名なおいしい店がいくつもある。周辺地域からホルモン焼き目当てに来る20代の女性グループなども多いようだ。

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

西成警察署の隣の食堂・淡路屋(写真:筆者撮影)

西成警察署の隣の食堂・淡路屋は、カウンターと店の外に置かれた簡易席だけのこじんまりとした店舗で、気軽に立ち寄れる。かすうどんは、昆布とかつおの出汁が効いた透き通る汁と柔らかめのうどんに、カリッと焼いた歯ごたえのあるホルモンが載る。隣の屋台のホルモン焼き(モツ、タン、ハチノス、砂肝)も注文できて、さくっと名物料理を楽しめた。

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

淡路屋のかすうどん(1000円)と、隣の屋台のホルモン焼き(500円)。この辺りのかすうどんの料金としては高いが、困っている人には無料でうどんを提供しているという(写真:筆者撮影)

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

かすうどん(写真:筆者撮影)

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

ホルモン焼き(写真:筆者撮影)

飲み屋が多い商店街は賑やかだった

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

新今宮駅周辺の目抜き通りになる萩之茶屋本通商店街(写真:筆者撮影)

南海本線の萩ノ茶屋駅から阪堺電車の今池駅に伸びる萩之茶屋本通商店街が、この辺りの目抜き通り。ホルモン焼き屋から食堂、居酒屋、床屋、衣料品店などさまざまな店舗が並ぶ、昭和の空気に満たされた商店街だ。

手頃な値段の食堂が多く、ある店はうどん・そば250円、ラーメン430円。居酒屋の看板がある飲み屋は、カウンター席だけのカラオケスナックのような店舗がほとんどで、昼間から営業する店も少なくない。通りには歌声が響いていた。

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

飛田本通商店街の飲み屋が多く並ぶ一角。居酒屋のカラオケが通りに響く(写真:筆者撮影)

その東側の飛田本通商店街はさらにディープだ。空き地の壁には「居酒屋で覚醒剤を売るな!」「男になりたいならホストと闇バイトはするな!」という主張強めの警告看板が並び、通りでは「血管注射500円から」と謎の呼び込みのおじが声をかけてくる。

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

主張が強い警告看板(飛田本通商店街)(写真:筆者撮影)

飲み屋が集まる一角には、こじんまりとした居酒屋(カラオケスナックタイプ)が立ち並び、夜はカラオケの歌声があちこちで鳴り響く。それは、音漏れどころか、商店街全体の街鳴りになっていた。

その曲は、久保田利伸や杏里、TM NETWORK、白井貴子など。聴こえてきたなかの最新曲はTM NETWORKの『Self Control』だった。また、通りをすぐ横に入ると、壊れかけのRadioならぬ壊れかけの家屋がふつうにある。商店街の雰囲気を察してもらえるだろうか。

居酒屋の多くがほぼ満席。通りには外国人観光客の姿も目立ったが、居酒屋は地元の人たちで賑わっているようだ。

大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している

西成の夜といえば、約100年の歴史がある大阪最大の花街・飛田新地が知られる。飛田本通商店街から新開筋中央商店街に入り、阪神高速14号線のガードをくぐると飛田新地北門跡に着く。そこから南東一帯が花街になる。

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

白龍大明神(写真:筆者撮影)

飲み屋は、前述の商店街に多いほか、JR新今宮駅北口を出てすぐのガード下には、色鮮やかな提灯がならぶ新今宮屋台村がある。この辺りは、あいりん地区とは別世界のどこにでもある夜の街であり、外国人観光客も多い。夜遅くまで気軽にお酒や食事を楽しめる。

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

チェ・ゲバラを店頭に掲げる飲み屋も(写真:筆者撮影)

日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

整備が進む新今宮駅周辺の南海本線ガード下, 昭和にタイムスリップした気分, 昼間でも剣呑な空気が漂う三角公園周辺, 飲み屋が多い商店街は賑やかだった, 大阪最大の花街、飲み屋街、屋台村など夜は充実している, 日本の文化のひとつが色濃く残る独特な街

あいりん地区のシンボルだった新今宮駅前のあいりん総合センターは閉鎖されている(写真:筆者撮影)

治安の悪い危険な地域というイメージのあるあいりん地区だが、近年はかなり変わっている。あいりん総合センターの閉鎖が象徴的だが、再開発による整備が地区一帯で進み、街並みが変化の過程にある。

そうしたなか、新今宮駅前のホテルや周辺の商店街には、多くの外国人観光客の姿を見かけた。同地区を含む西成は、ディープな観光スポットとして注目され、観光客が増えているようだ。

ただ、あいりん地区の一部のエリアは、いまも昔の空気が色濃く残る。注意は必要だが、マナーや気遣いを意識さえすれば、日本の文化のひとつを感じられる街を楽しめるはず。

一度訪れてみるといいだろう。ほかのどこにもない、とても印象深い街だ。