「コアラ暴言」否定投稿後も反論を続け……内閣広報官はアベノマスクの“発案者” 高市包囲網に警戒か

佐伯耕三内閣広報官が運用するX(旧Twitter)アカウントが話題となっている。これまでならいちいち反論してこなかったような報道にも、細かく事実関係を示し反論。首相の支持者らからは「オールドメディアに対し、即レスバ」とじわじわ人気を集めているが、その背景には高市政権を取り巻く状況への焦りもあるようだ。
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そもそも内閣広報官とは、どのような役職なのか。その名のとおり、内閣の政策や活動を広報する役割を担い、内閣広報室をつかさどる立場だ。事務次官級のポジションだが、これまで国民が目にする機会があったのは、首相の記者会見時の司会進行くらいだった。 そんな内閣広報官に1月に就任した佐伯耕三氏は、5月から内閣広報室のXアカウントを試験的に運用し始めた。そして6月になってアカウント名を「内閣広報官(色々投稿試し中)」に変更。「中の人」を明確にし、「首相の身近で働く内閣広報官の立場から、これまでにない投稿を試みていきたい」(木原稔官房長官)との狙いがあるという。
■「アベノマスク発案」でおなじみの内閣広報官
ただ、このアカウントには懸念の声も出ている。内閣広報官、つまり「中の人」の佐伯氏は第二次安倍政権時に首相秘書官を務めた経産官僚だが、これまで佐伯氏の政策やメディア戦略には疑問符がつくものが多かったのだ。

とくに佐伯氏が進めた施策とされるもので評判が悪かったのが、コロナ禍の初期に全国に配布された「アベノマスク」だ。
佐伯氏は安倍晋三首相(当時、以下同じ)に対し「全国民に布マスクを配れば、不安はパッと消えますよ」と進言したとされ、その後アベノマスクは「小さいし、感染防止効果が低い」「配り終えるころには、不織布マスクが市中に出回るようになり不要になった」などと不評を買い、政権の支持率低下の要因になったとも指摘された。
そのほかにも、コロナ禍には安倍首相が自宅で愛犬とくつろぐ動画を星野源さんの「うちで踊ろう」の歌に合わせて投稿して、外出自粛のストレスや収入減の不安を感じる国民感情を逆なでしたことがあったが、これも佐伯氏の発案とされる。
佐伯氏は当時、財務省や外務省などから送り込まれた他の首相秘書官に比べ、1人だけ10歳ほど若く40代前半だった。それゆえに「ネットで『ウケ』がいい発信が分かる」と周囲からもみられ、本人もその意識が強かったというが、実際には官邸の外にいる国民の感覚とはずれていたと言えそうだ。
そんな佐伯氏、マスコミからの追及や報じられ方には敏感で、安倍首相を守ろうとするあまり、ときには記者たちに強い不満をもらすこともあった。
「コロナ禍前は佐伯氏が飲み会を終え、深夜12時を回ったような時間に、佐伯氏の自宅近くで1時間ほど話を聞くのが、当時取材を担当していた記者たちのルーティンでした。記者団から『桜を見る会』についての追及が続いていたころは、夜回り取材に来た記者たちに『なんや、あの質問は』『質問して目立ちたいだけやろう』と毒を吐くこともありました」(全国紙政治部記者)

そんなふうに安倍首相に心酔し、ときには首相の威を借りて年次が上の経産官僚たちにも不遜(ふそん)な態度をとるなどして経産省内で恨みを買った後の佐伯氏は、安倍政権が終わると本省から離れていた時期もあった。
だが、高市政権発足後、安倍官邸の再来を狙う高市首相の意向もあり内閣広報官に就任。安倍政権時には非公式な取材対応のときに行っていた報道への論評ともとらえられる言動を公にするようになった。
■「コアラではなくカンガルー」
佐伯氏の投稿がとくに注目を集めたのが、6月6日。オーストラリア外遊後の政府専用機内で高市首相が女性自衛官に激怒したという週刊誌のネット報道を否定したことだった。
報道内容は、キャビンアテンダント業務を担当した女性自衛官が「オーストラリアでコアラをご覧になりましたか?」と高市首相に尋ねたところ、高市首相が「遊びに来てるわけちゃうねん!」などと激怒し、女性自衛官は政府専用機の任務から外されることになった、という内容だった。
佐伯氏はX上で「根拠なき『噂』や『伝聞』が独り歩きすることは、広報官としては『ナーバス』にならざるを得ず、事実に基づいて『火消し』させていただきます」と投稿。帰国便で首相を担当した自衛官は男性だったとしたうえで「この際なので、総理にも確認したところコアラではなく『カンガルー』について、男性自衛官から笑顔で『ご覧になりましたか?』と声をかけられ、総理も笑顔で『残念ながら見る時間はなかった』と答えたとのことです」と細かく反論した。
さらに、「その自衛官の方は窓際の棚の上にカンガルーのぬいぐるみを置いてくださっていたようで、総理はその心遣いに大変感謝していました」とも付け加えた。

■安倍政権時の「トラウマ」
「コアラではなくカンガルー」、「女性自衛官ではなく男性自衛官」……そんな細かい部分も含め、政策や政局とはあまり関係のない週刊誌報道の内容について逐一反論することは、これまでの官邸にはほとんどなかった動きだ。
その背景には、高市政権を取り巻くピンチも影響していそうだ。
「高市事務所が関与したとされる総裁選の誹謗中傷動画問題は、首相の答弁も苦しくなって潮目が変わってきたと永田町ではみられています。
佐伯氏にとっては第二次安倍政権時、桜を見る会問題や、コロナ対応をめぐってSNS世論が一気に政権批判に傾いた『トラウマ』もあるでしょう。当時よりもショート動画などで一気に話題が拡散されやすくなっている今、SNSの世論で政権への逆風が一気に強まることを危惧しているのでは」(自民党関係者)
「報道を監視する意図はない」(木原氏)としながらも、「コアラ暴言否定投稿」の後も報道への反論を続ける佐伯氏のアカウント。これまでも先輩官僚や記者団に威圧的な態度をとったり、さらには2018年4月の衆院予算委では、玉木雄一郎・希望の党代表(当時)にヤジを飛ばして問題化した”前例”があるだけに、「投稿がエスカレートしすぎて逆効果にならなければいいが……」(自民党関係者)と不安の声も出ている。
(フリーライター・柳ケ瀬さゆり)
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