「あなたは容疑者だ」警察官をかたる詐欺の一部始終 不安をかき立て金だましとる…身を守るにはどうする?
警察官をかたるニセ電話詐欺が、全国で相次いでいる。警察官役のほか通信事業者役らも登場する「劇場型」で、今年の被害件数は3月末までに前年同期の約16倍。警視庁によると、その手口は「あなたの口座が犯罪に使われている。容疑者として逮捕状が出ている」と不安をあおり、巧みに金をだまし取る。(昆野夏子)
◆「これは極秘捜査なので誰にも言ってはいけない」
「あなたの電話から不特定多数に迷惑メールが送信されている。不正に契約した電話と思われるので、警察に連絡する。このまま転送する」。2023年秋、沖縄県の70代男性に「通信基盤局」を名乗る者から電話があった。

写真はイメージです
電話口で「警視庁深川署の刑事」と「警視庁本部の職員」を名乗る男たちのやりとりを聞かされた。「組織犯罪グループがこの名義人の銀行口座を使っている」「口座を使って資金洗浄している」「すべての口座を凍結し、本人を逮捕してください」
やりとりが終わると「深川署の刑事」が男性に告げた。「何か隠したりうそをついたりしていないか」「口座が犯罪に使われている。あなたは容疑者だ」
身に覚えのない男性が不安になると、登場人物たちが畳みかける。「これは極秘捜査なので誰にも言ってはいけない。話が漏れると犯人隠匿罪で捕まる」
◆実際にはあり得ない「逮捕状」「警察手帳」のLINE送信
相手を本物と信じ込んだ男性は「調査のためにお金を移す必要がある」と言われ、インターネットバンキングで4回計3232万円を振り込み、だまし取られた。警視庁は詐欺の疑いで、関与したとされる計24人を逮捕した。
警察庁などによると、警察官をかたる詐欺は昨年夏ごろから全国で急増。警察官同士を装った会話を聞かせて真実味を持たせ、居住地から遠い都道府県警を名乗ることで「署に来られないならLINE(ライン)でやりとりを」と誘導することが多い。偽造した逮捕状や警察手帳の画像をLINEで送る例もある。いずれも本物の捜査ではあり得ないことで、荒唐無稽だ。

警察官をかたる詐欺事件で、「大阪府警本部捜査二課」を名乗る人物から受信したLINE通信の画面(写真左右とも警視庁提供、画像一部加工)。送られてきた画像の警察手帳や書類は偽造されたものだったという
接触方法の7割が「+81」で始まる国際電話だが、末尾が「0110」の番号が画面に表示され、都道府県警本部や署の電話に偽装する手口も増えている。
◆被害者は高齢者に限らず幅広い年代に
警察官をかたったニセ電話詐欺は警視庁管内で今年、3月末までに503件の被害があり、32件だった前年同期の約16倍に上る。被害額は48億7000万円で、1億8000万円だった前年同期の27倍となった。
警視庁特殊詐欺対策本部によると、以前は高齢者を狙うニセ電話詐欺が多かったが、警察官をかたる手口では被害に遭う年代が幅広い。今年はこれまでの被害の9割が60代以下だった。
ネットバンキングで振り込ませる手口も、被害拡大の一因という。金融機関のATMは金額に制限があるのに対し、ネットバンキングは1回で1000万円以上の高額送金が可能で、第三者が介在せず周囲が異変に気付きにくい。
警視庁の担当者は「電話でも交流サイト(SNS)でも、接触してきた相手の所属や名前、電話・内線番号を尋ねてほしい。電話だったら一度切り、署や人物、番号が実在するのかを警察に確認して」と呼びかけている。

警察官をかたった詐欺への注意を呼びかけるチラシ=警視庁で

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