立川・小学校侵入の一部始終が見えてきた 子どもたちや教職員の対応で「素晴らしかった」ポイントとは

 東京都立川市の市立第三小学校で8日、侵入した男2人が暴れ、教職員がけがをした事件で、教室に乱入した男たちの行動や児童の様子など、当日の詳しい状況が市教委などへの取材で明らかになった。専門家は「自らの判断で逃げた子どもたちの行動は素晴らしかった。一方、不審者を学校に入れない原則が守られていなかった」と指摘した。(岡本太)

◆暴行の様子を見て自分たちで判断

 関係者によると、母親は以前から継続的に子ども同士のトラブルを学校側に相談。8日朝は学校の会議室で担任の教員と約1時間にわたって話し合ったが、まとまらず、知人の男らと一緒に学校に戻った。

 市教委が教職員からの聞き取りを基にまとめた報告などでは、男2人は午前11時ごろ、無施錠の正門を通り、校舎内に侵入。2階の2年の教室に向かい、授業中に前方の扉から乱入した。「どこだ!」と児童の名前を叫び、トラブル相手の児童を捜していたとみられる。

◆暴行の様子を見て自分たちで判断, ◆通報ボタンを押した校長に侵入者は, ◆学校を悩ませる「ヘリコプターペアレント」, ◆「トラブルの解決に先生が疲弊」

男が侵入した市立第三小学校=8日、東京都立川市で

 市教委によると、男の1人が手に持っていた酒瓶を割り、近づいてきた担任の教諭を殴ったとされる。暴行の様子を目撃した児童らは自らの判断で避難。教室を飛び出すと「逃げろ」「不審者だ」などと声を掛け合いながら、1階の職員室方面などに向かった。

 同じ頃、2階の別の教室では異変に気付いた教員が児童らに扉の鍵を閉め、机を積んでバリケードを作るよう指示。ほかの教室を回り、不審者の侵入を伝えて回った。

◆通報ボタンを押した校長に侵入者は

 職員室にいた副校長は、児童の声を聞いて乱入された教室に急行。別の教員1人はさすまたを持って駆け付けた。教室では児童数人が逃げ遅れ、担任が男から暴行を受けていた。副校長が制止しようと声を掛けると、向かってきたため、一定の距離を取りながら職員室方面へと誘導した。

 男らは、その後も教員や駆け付けた校長に対して暴行。職員室前では鍵のかかった扉を押し倒して室内に乱入し、警察への通報ボタンを押した校長や教員を再び殴るなどしたという。応援に駆け付けた教職員らが5人がかりで、男2人を羽交い締めにして取り押さえた。教室から逃げ出した児童は教員の指示で体育館に避難し、けがはなかった。

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8日、男2人が侵入した市立第三小学校=東京都立川市で、本社ヘリ「あさづる」より(安江実撮影)

 一連の対応について、日本こどもの安全教育総合研究所の宮田美恵子理事長は「すぐに逃げた子どもたちの対応や、男らを誘導した先生たちの対応は素晴らしかった」と評価。一方、男らが侵入した正門が無施錠だったことについては「『不審者を入れない』という基本ができていない。施錠の徹底に加え、国には、防犯を専門に担当する職員の配置などを進めてほしい」と求めた。

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◆学校を悩ませる「ヘリコプターペアレント」

 学校関係者によると、教育現場ではトラブルなどを巡って保護者への対応に苦慮し、教員が疲弊している実態がある。

 小学校長の経験がある関東地方の市教育長は「保護者が納得せず、第三者を連れてくるのはよくある。特異な事例ではない」と指摘する。

◆暴行の様子を見て自分たちで判断, ◆通報ボタンを押した校長に侵入者は, ◆学校を悩ませる「ヘリコプターペアレント」, ◆「トラブルの解決に先生が疲弊」

写真は記事の内容と直接関係ありません

 児童のおじ、おば、祖父らが多いが、血縁関係のない知人もいて「保護者のような責任ある立場ではないためか、より理不尽な言動の人もいる」という。学校を繰り返し訪れる児童のおじに対し、訪問しないようスクールロイヤーが文書を送った事例もあるという。

 保護者自身による理不尽な要求もやんでいない。「最近では、機体を停止飛行するホバリングのように、ずっと滞留して要求を繰り返すのでヘリコプターペアレントと呼んでいる。教員の退職や志望者減少の要因になっている」

◆「トラブルの解決に先生が疲弊」

 2、3時間かけても電話が終わらないため、一部の学校は通話の録音機能を取り付けた。現在は教員の負担軽減のため、午後5時以降などは電話を自動音声にする学校も増えているという。

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 都教委が教職員を対象に実施したアンケートでは、回答者の23%が過去5年間に保護者などから暴言など社会通念上疑問と感じる言動や行為を受けたと回答。具体的な言動・行為では、長時間の電話などによる時間的な拘束、暴言、言いがかりによる金銭要求などが多かった。

 立川市の酒井大史市長も22日の定例記者会見で「トラブルの解決に先生が疲弊している」と指摘。「学校だけに押しつけず、市全体で、子どもや学校のトラブルを解決できるような方策を検討したい」と語った。

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