【特集】共学化から3年目、先進的な教育で入学者数が大幅増…星の杜

  星の杜中学校・高等学校 (宇都宮市)が共学化・校名変更を行って3年目。「探究・グローバル・デジタル」を柱としたカリキュラムや、これからの社会で活躍するために本当に必要となる「非認知スキル」の育成を目指す教育が評価を得て、入学者数が大幅に増加している。4月12日には、この改革を担った小野田一樹校長、運営母体「宇都宮海星学園」の石川一郎理事長と宮田 純(なお)也(や) 理事の3人が、同校の教育方針について語り合う「クロストーク」が開催され、多くの保護者、受験希望者らが聴き入った。クロストークの模様を取材し、終了後、3人に今後の展望などについて話を聞いた。

日本の教育の問題点を率直に指摘したトーク

星の杜教育フォーラムの「クロストーク」で理念を語る(左から)宮田理事、石川理事長、小野田校長

 「星の杜」として3年目を迎えた2025年度、中学校の入学者数は、初年度の約1.9倍の55人、高校は初年度の約1.6倍に当たる162人と大幅に増え、受験者数も伸びている。同校の打ち出した教育の理念が、多くの受験生や保護者の支持を得た形だ。

 この躍進を担ったのが小野田校長と、学園の石川理事長、宮田理事の3人だ。小野田校長は、21年度から同校の前身である宇都宮海星女子学院の校長補佐を務め、24年度に校長就任。石川理事長は、21年度から学園の理事および「カリキュラムディレクター」として同校の教育の方向性を整え、25年1月に学園理事長に就任した。

 スクールミッションやカリキュラムの構築は、この2人が中心となって行ってきた。さらに宮田理事を迎えたのが25年2月。学校教員の教育力を高める大規模教育イベント「未来の先生フォーラム」の責任者で、学びや成長のあり方を世に問う編著もあるスペシャリストだ。

 「クロストーク」は、同校の学校説明会に合わせて開催されたもので、集まった保護者や受験希望者らに向けて、現在の教育に対する認識、同校が掲げる理念などが熱く語られた。

 小野田校長はまず、DX(デジタルトランスフォーメーション)や生成AI(人工知能)の普及にどう対応すべきか論じた。これからは、ものを教えるだけの教員は存在意義がなくなる恐れがあるとし、「『AIに取って代わられる教員』も出てくるだろう。学校のあり方が問われている」と強い危機感を表した。

「『突き抜ける力』を育てたい」と話す石川理事長

 これに対し石川理事長は、「知識はネットで手に入るし、思考もある程度はAIで代替できるようになった。作業の効率化には役立てることができるが、課題はその先だ」と語った。宮田氏は「信頼度の高い一次情報を得ることが大事。体験や実践の機会としてのプロジェクト学習や課外活動、行事などが重要」と話した。

 大学入試の動向について小野田校長は、「日本ではいまだに偏差値が入試の指標だが、実は海外では使われておらず、総合型選抜が主流となっている」と問題点を指摘。「本校は総合型選抜で志望大学へ進める教育を目指し、しっかり準備していく」との考えを示した。

 宮田理事も「従来の入試は、試験会場で発揮される『一瞬の力』を問うてきた。総合型選抜では中学、高校で積み上げた人生のアウトプットが問われる」と総合型選抜の意義を解説。石川理事長は「これを突破するには、自分の興味あるテーマに基づいて『世の中をどう変えるか』を常に考え、取り組んでいることが重要となる。だからこそ探究学習が大事だ」と論じた。

 最後に、こうした教育の動向を踏まえ、「星の杜」としてどのように実践していくか議論された。そこで石川理事長は、次のように決意を語った。「『従来のやり方を守りつつ、新しい方法も取り入れる』というのでは結局、変われない。本校では現状を前提とせず、『これから必要な教育は何か』を考えて、一からカリキュラム設計した。生徒たちが『突き抜ける力』を持つよう、育てていきたい」

「調べ学習」にとどまらない探究学習、非認知スキルを目指す

小野田校長は「先進の教育をいち早く確立したい」と語った

 クロストーク終了後、3人に改めて、同校が進める重要テーマについて話を聞いた。石川理事長が「一番の柱」と重視するのは探究学習の展開だ。現在、多くの学校で行われている探究学習については、「あらかじめゴールが想定された『調べ学習』で、ネット検索で答えにたどり着けるものがほとんどです」と厳しい見方を示す。

 「本県の日光市を例に考えれば、従来型の探究学習では『日光の特色を調べる』などになるでしょう。本校では例えば『日光に人が集まるよう、土地の特色をどう生かすか』と、一歩進んだ問いを自ら立てて探究を行います。探究学習の中で行う情報の取得、まとめ、発表は、語学力やデジタルリテラシーを駆使する機会にもなります」

 生徒の学びの指標として、「星の杜タキソノミー」という概念を取り入れたのも斬新だ。これはアメリカの教育学者ベンジャミン・ブルームが提唱したタキソノミー理論を基としている。石川理事長はこう説明する。「従来の日本の学校教育は、『記憶』『理解』『応用』という『低次の認知スキル』の育成まででした。これらはいわば、正解がある課題に対処する力です。『星の杜タキソノミー』ではさらに、『なぜそうなのか』を考える分析、『本当にそうか』を検証する評価、そしてこの二つを繰り返すことから生まれる創造といった『非認知スキル』を身につけることを目指します」

先進教育を確立し、全国へ広めたい

「『人生100年』時代に必要な力を」と強調する宮田理事

 こうした新しい理念が受け入れられるか、「地方にある学校としては、不安もありました」と小野田校長は振り返る。「でも、入学者が増えていることからも、多くの保護者、受験生に関心を持っていただいていることがわかりました」。入学後も、外部で開催される探究コンテストに積極的に参加する生徒が増え、全国レベルの入賞者も出ているという。

 こうした状況を踏まえ、カリキュラムをさらに強化するために迎えたのが宮田理事だ。「同校の理念と、日本の教育にインパクトをもたらそうという姿勢に共感し理事をお受けした」という宮田理事が、抱負を語る。「日本の学校は、中学では高校を目指し、高校では大学を目指す『先送り教育』を行ってきました。直近のステップだけ見ていて、生徒も教員も『人生』について考える機会がありません。視点を上げて、『人生100年』時代に必要な力を見いだし、伸ばす教育を行う必要があります。この点で私にできることは多いと考えています」

 小野田校長も「これからの社会に相応しい先進教育を本校でいち早く確立したいですね。さらには全国の教育界にネットワークを持つ宮田理事の力も借りて、全国に広く伝えていきたいと考えています」と意欲的だ。

 3人の言葉からは、「『星の杜』での改革を起点に、日本の教育を変えていきたい」という熱意が感じられた。ここからどのような生徒が育ち、教育がどう変わっていくのか、チャレンジは続く。

 (文:上田大朗 写真:中学受験サポート 一部写真提供:星の杜中学校・高等学校)

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