「日本代表は“1年休む”」男子バレー西田有志25歳が明かす“休養宣言”の真意「“もう必要ない”と言われるリスクがある。それでも…」

2025年度の日本代表登録メンバーに選出された西田有志(25歳/大阪ブルテオン)。代表活動についてはしばらくの休養を宣言しており、今後の動向が注目される

涙を流したパリ五輪から8カ月――2025年4月17日、バレーボール男子日本代表の登録メンバー43名が発表された。悔しさを糧に、再び高みを目指す15名のインタビューを収録した書籍『バレーボール男子日本代表 15人の肖像』(構成・インタビュー、米虫紀子/世界文化社)より、大阪ブルテオン・西田有志(25歳)のエピソードを抜粋して公開します。激闘イタリア戦の秘話や“休養宣言”の真意を明かした【全2回の2回目/高橋藍編も公開中】

 第3セット24-21のマッチポイントになった時も、変わらず……を意識してはいました。「勝てる」と思ったらたぶん負けると思ったので。そこから決め急いでしまったり、トランジションを取られた時に焦ってしまうから、それは絶対よくないと思っていましたけど……。でも、終わってから考えると、やっぱりあのシチュエーションになったら、「勝てる」と思ってまうやろ、と(苦笑)。

悔やまれる第3セット「左手が見えていなかった」

 シモーネ・ジャンネッリにサービスエースを取られて24-24と追いつかれたあと、僕のスパイクがアレッサンドロ・ミキエレットにブロックされました。

 しっかりブロックが見えて、「あ、これ絶対行けるわ」と思ったんですけど……。

 自分が打とうとしているところに、ミキエレットの右手があったんですよ。「今日の感じだったらこの右手絶対飛ばせる。ブロックアウトを取れる」と思った。でも相手の左手が見えていなかった。右手のちょうど親指あたりが見えたので、そこを狙った時に、左手が出てきて、思いっきり止められた。ワイパーみたいに腕を振ってきて、止められたのを覚えています。

 ミキエレットは手を中(クロス側)によく入れてくるので、右手がその分、離れるから、右手に当てて飛ばそうと思ったんですけど、やっぱり身長も高いし(205cm)手も長いから、右手まで届かなかったというのはありました。

「だる! ここで身長かよ!」と思いました。悔しかったというか、腹が立ちましたね。自分にないものを持っている相手が、それを武器にしてきたのが一番きついな、と。

 あの時、関さんはめちゃくちゃいいトス上げてくれたのに。自分も、焦っていたとか冷静さを失っていたというのはなく、ブロックも見えて、しっかり狙っていた。それまではずっとブロックアウトだったり、いろいろやりながら点を取れていたので、「これ決めれる」と思ったんですけど、それが負けだったのかなと。うまくいかないもんですね。

 まだまだ全然、トップレベルじゃねえなって、相変わらず思いました。確かスパイク決定率は50%を超えていた(52.9%)んですけど……。ポイント、ポイントなんですよね。勝てたとも思うけど、でもその勝つために取るべき要所のポイントを取った場面が、相手のほうが多かった。相手が持っていた。それしかないと僕は思います。

 出し切ったという思いもあるし、めっちゃええ試合をやったとは思うんですけど、なんか「ええ試合やった」と言われると、余計に悔しいんですよ。

◇◇◇

4試合を通して好調を維持し、チームトップの81得点をパリに刻んだが、準決勝には届かなかった。試合終了の直後、西田は受け入れ難い現実に抗うように、イ! と顔を歪めた。そして、呆然と肩を落としながら整列に向かう石川キャプテンに後ろから抱きつき、言葉をかけた。

◇◇◇

「よう戻ってきたな。さすがやわ。やっぱすげえよ!」

 あの時かけたのはそんな言葉でしたね。結果がどうとかじゃなく、ここまでよう戻ってきたなって。一番というか、ほとんどのストレスを祐希さんが抱えていただろうから、しんどかったと思う。僕と山内(晶大)さんが副キャプテンをやっていたけど、どれだけそのストレスを緩和できていたかはわからない。ずっと、一番重圧を感じていたのは祐希さんだった。

 試合後、みんな、なかなかコートを離れられなかった。あのチームが終わってしまうことが悲しくて、名残惜しくて。嫌いだったら、あんなふうにならないですよね。本当にすごいチームでしたよ、あのチームは。

「休養宣言」の真意

 今後の日本代表については、1年休むということは決めています。

 とはいえ、ゆっくり休むというわけではなく、トレーニングだったり勉強だったり、すでにオフシーズンのスケジュールを組んでいて、常に動き続けるつもりです。フィジカルもメンタルもプレーも、自己投資する時間を作らないと、この先がないなと思ったので。

 このまま以前と同じようにやっているだけでは、成長がないというか、考えが新しくならないから、代表に行ってもたぶん同じことを繰り返すんじゃないかと。だから考え方や自分の能力を、新しくしたり、今あるところからどんどん派生させていきたい。

 もちろん体の負担が積み重なっているからというのもありますが、「自分を変えたい」というのが一番にあります。これまで自分が知らなかった分野に足を踏み入れていこうと。

 例えば、ピラティスとスポーツって相性がいいんじゃないかとか、将棋をやっている人はこのシチュエーションでどう考えるのかな? とか。いろいろな動きや考え方を持っておけば、選手として面白いんじゃないかと思って、今いろんなアイデアを書き出しています。もちろん主体はバレーボールですけど。今ジャンプトレーナーにもついているので、必要な分野を常に向上させて、息抜きするところは息抜きして、というイメージです。楽しみですね。お金はかかるんですけど、その分の楽しさと成長があると思うので。

 もちろん次のロサンゼルス五輪のため、というのがベースにあります。

 ただ、リスクがあるのもわかっています。「代表を1年休む」と発言することに対しても、「代表でやれることを当たり前だと思っている」と捉えられてしまうこともある。全然そんなことは思っていないんですけど。

 それに、1年休んだことで、「もう必要ない」と言われる可能性もあります。でもそう言われたら、見返すだけだし、後悔させるだけ。常に何があっても向上する方向にしか、僕は向いていないですね。

〈はじめから読む→第1回:高橋藍編へ〉