「今日で処分が決まる」保護猫を引き取ったイラストレーター、「もしも」に備えて「猫の母子手帳」発案

 イラストレーター「オキエイコ」(本名・荻野 朱加(あやか) )さん(37)の岐阜市内の自宅を訪ねると、ニャ~ンと「看板娘」2匹が迎えてくれた。三毛猫の「しらす」と茶白猫の「おこめ」。人なつっこく愛らしいが、もとは保護猫だった。「2匹との出会いで、自分の仕事も、生活も大きく変わった。猫たちは私の家族なので毎日が楽しいですよ」

さみしげにポツンといた「しらす」

猫たちと一緒にマンガを執筆するオキさん(6月18日、岐阜市で)=青木瞭撮影

 オキさんはツイッター(現・X)に長女の子育て日記を投稿していたところ、出版社の目に留まり、2019年1月、コミックエッセーでデビュー。元々絵が好きで、高校で美術を学び、趣味で投稿し続けたことが実を結んだ。

 大の猫好きで3歳から、実家で約19年間飼った。「いつか猫と暮らしたい」と思っていたが、ペットを飼えるマンションへの引っ越しを機に猫探しを始めた。

 友人に「保護猫とかは?」と薦められ、20年春、岐阜県動物愛護センター(美濃市)に出かけた。お目当ては子猫だったが、片隅にさみしげにポツンといた「今日で処分が決まる」という4歳の猫が目に入った。柄の入り方が実家の愛猫と少し似ていた。「うちに来る子だ!」と確信して引き取り、長女の好物から「しらす」と名付けた。

 しらすは前の飼い主からネグレクト(飼育放棄)に遭い、十分に餌も与えられていなかった。保護猫に関する知識や、しらすについて「絵日記」として投稿していたところ、再び出版社から声がかかり、コミックエッセー「ねこ活はじめました」(KADOKAWA)を21年3月に出版。取材を進める中、保護猫カフェで「おこめ」(8歳)と出会い、家へと迎え入れた。

オキさんが飼う保護猫の「おこめ」

 なつきにくいと思われがちな保護猫だが、注いだ愛情に応えてくれる。一匹でも多く新しい飼い主が見つかれば、と思う。

友人の言葉がきっかけ

 「もしも自分に何かあったら、この子たちはどうなるのだろう」――。一人暮らしで猫を育てる友人の言葉をきっかけに、何かいい方法はないか考え始めた。

 自身は双子を22年3月に出産。母子手帳を受け取った時ふと、「何で猫には母子手帳がないんだろう。あれば助かる人も多いはず」と思い立った。

 10万人以上のフォロワーに投げかけると、病歴や投薬、食事の時間や種類、アレルギー、餌はどこで買い、どこに保管しているか……、次々とアイデアが集まった。

オキさんが手がけた「ヘルプ手帳シリーズ」

 「家で大切な 家族(ねこ) が待っています。私になにかあったらこの手帳を開いてください」と表紙に記した「ねこHELP(ヘルプ)手帳」は4000部以上売れた。より多くの情報をまとめられるバインダー式にしようとクラウドファンディング(CF)にも挑戦。目標額の25倍を超える金額を集めた。

 昨年1月の能登半島地震の被災者からは、「ヘルプ手帳のおかげで心強かった」「離れている時も安心できた」など感謝の声が寄せられた。同時に犬用のバインダー式のヘルプ手帳も必要だと考えて、現在CFで資金を募っている。

 イラストレーターと3人の子育てをしながら、岐阜大地域科学部で環境心理学を学ぶ。仕事の幅を広げようと22年10月、活動拠点とする会社「nancoco(ナンココ)」も設立した。

 「人が欲しいと思っても、世の中にないものを自分の力で作れていて楽しい。一人でも多くの飼い主を救うことができれば」と願う。(沢村宜樹)