農家「猛暑で『白米』はさらに減る」 生産量が政府発表より「70万トン」少ないカラクリ 小泉進次郎は改革者かハリボテか

■昨年の作況指数は「105」なのに, ■農水省の統計に「カラクリ」, ■小泉農水相は「作況指数」廃止を発表, ■「大きな改革」ではあるが…, ■暑さで「精米歩留まり」下落, ■猛暑で歩留まり「こんなに減るんだ」, ■白米の流通量をなぜ精査しないのか

「10年に1度」レベルの猛暑だ。気象庁は7月7日、「高温に関する早期天候情報」を発表した。一方、小泉進次郎農林水産相は6月、「作況指数」の廃止を発表。長年指摘されてきたカラクリのある指数の廃止は意味あることだが、実はコメにはさらに大きな問題が残されている。

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■昨年の作況指数は「105」なのに

「数字から見れば『豊作』ですよ。でも、この周辺の農家で、『昨年は米が取れた』という人は誰もいない。つまり、農水省がいうことと、生産現場の実感が合っていないんです」

 千葉県匝瑳(そうさ)市にある栄営農組合の伊藤秀雄顧問はそう話した。

 2024年、千葉県の「作況指数」は105だった。

 作況指数とは「米の出来具合」を表す指標で、10アール当たり平年収量(600キロ前後)に対する当年の同じ面積当たり収量を表す。平年を100とした指数で、おおまかにいうと、それ以上は「良」、以下は「不良」となる。

■農水省の統計に「カラクリ」

 全国の作況指数は2023年、24年とも101と「平年並み」で、収穫量は23年産米が661万トン、24年産米は679万2000トン。この数字を基に、農水省は一貫して「米不足は生じていない。流通に問題がある」と、主張してきた。

 これに対して、伊藤さんは「収量調査の方法が間違っている」と指摘する。

 農水省は、全国から無作為抽出した約8000カ所の水田で、3平方メートルの米を刈り取り、収量を調査する(通称「坪刈り」)。その際、1.7ミリのふるい目幅で選別した玄米の重量を計測し、この値を基に全国の「10アール当たり収量」が算出される。

「ところが、ふるい目の大きさは地域や米の品種などによって異なり、千葉県では米を選別する際に1.8ミリのふるい目を使用することが一般的です。当然、千葉県で選別された実際の収量のほうが、農水省が出す統計上の収量より少なくなる」(伊藤さん)

■昨年の作況指数は「105」なのに, ■農水省の統計に「カラクリ」, ■小泉農水相は「作況指数」廃止を発表, ■「大きな改革」ではあるが…, ■暑さで「精米歩留まり」下落, ■猛暑で歩留まり「こんなに減るんだ」, ■白米の流通量をなぜ精査しないのか

■小泉農水相は「作況指数」廃止を発表

 こうした調査方法は「前近代的」だとして、伊藤さんは関東農政局などに改善を訴えてきた。

 そんななか、青天の霹靂ともいうべき事態が起こる。6月16日、小泉農水相は突然、「作況指数」を廃止、今年産米から公表を中止すると明らかにしたのだ。

 小泉農水相は、「作況指数」を廃止する理由ついて、「作況指数は長期的なトレンドとの比較であり、生産現場での作柄の実感と乖離(かいり)している」と述べた。今後は前年と比較するかたちで出来・不出来を示すという。

■「大きな改革」ではあるが…

 収量調査については、従来の1.7ミリのふるい目の基準を実態に合わせ、多くの農家が使う1.8~1.9ミリのふるい目に変更する。人工衛星のデータの活用や、大規模農家の収穫データの入手も検討するという。小泉農水相は、今後の米の収量の把握について、「精度を向上させて、農業政策の新たな基盤を確立していきたい」と述べている。

 この決定は大きな変革を意味している。

 農水省はこれまで作況指数のギャップについて、「大規模な農業法人などや小規模な農家を問わず、さまざまな地域(平坦地から中山間地)を実測調査した結果の平均値となっているから」と説明してきたのだ。

■暑さで「精米歩留まり」下落

 東京大学大学院・鈴木宣弘特任教授は、こう話す。

「全国の農家のみなさんからは、暑さの影響で『昨年の作況指数の実感は90くらい』『精米歩留まりは8割台に落ちている』という声を多く聞いています。昨年産米の流通量は、農水省が考えるよりかなり少ない可能性がある」

 精米歩留まりとは、玄米を精米して表面のぬか層を削り取ったあと、得られる白米の割合のことだ。年間700万トンの生産量に対して、仮に精米歩留まりが1割低下すれば、70万トンの米が減る。政府備蓄米が91万トンというから、いかにインパクトのある量が「歩留まり」で減っていることがわかるだろう。

■昨年の作況指数は「105」なのに, ■農水省の統計に「カラクリ」, ■小泉農水相は「作況指数」廃止を発表, ■「大きな改革」ではあるが…, ■暑さで「精米歩留まり」下落, ■猛暑で歩留まり「こんなに減るんだ」, ■白米の流通量をなぜ精査しないのか

■猛暑で歩留まり「こんなに減るんだ」

 日本有数の米どころ、新潟県南魚沼市の米農家・笛木竜也さんによると、猛暑の23年に収穫した米は、等級だけでなく、「精米歩留まり」も悪かった。

「通常、精米歩留まりは9割ほどで、玄米30キロを精米すると白米約27キロができる計算です。ところが、23年産米は約25キロ。『こんなに減るんだ』と驚くほどに減りました」(笛木さん)

 米とは、稲の種子だ。前出の伊藤さんによると、猛暑にさらされた稲は種子を守るため、もみ殻やぬか層を厚くする。厚くなったそれを取り去れば、可食部になる白米は自然、小さくなる。つまり、猛暑により米の実質的な収量は否応なく減少するということだ。

「農水省は米の生産現場で今、何が起こっているかを見ようとせずに、机上の計算だけで生産量を決めてきた。23年は事実上、『不作』だったのだから、24年は増産しなければならなかった。ところが、われわれに対して示された作付面積の目安は変わらなかった」(伊藤さん)

■白米の流通量をなぜ精査しないのか

 小泉農水相は収量調査について見直しを発表したものの、最近の猛暑の影響で精米歩留まりが下がり、白米の流通量が減少していることについては具体的には触れなかった。

「猛暑の影響についても国が検証を行わない限り、米の流通量が減少している本当の原因はわからない」(同)

 だが、検証を行えば、これまで「流通に問題がある」としてきた農水省の主張が覆える可能性がある。

 先日は突然自身のSNSにLINEクーポンを提示するなど、米について振れ幅の大きい挙動を繰り返す小泉農水相だが、何をどこまで理解しているのか、背後に何を意図するブレーンがいるかはわからない。

 だが、白米の流通量に影響する「歩留まり」について精査する気配は今のところない。検証が実現する可能性は残念ながら低そうだ。

(AERA編集部・米倉昭仁)