平日深夜でも激混み「ラーメン山岡家」 行って納得、SNS人気の背景

山岡家、ショート動画SNSで盛り上がる

 SNS時代、飲食店は“映える”空間づくりに力を注いできた。

 美しく整った特別感のある空間で写真や動画を撮影し、SNSに投稿する。それは、いまやトレンドを超えて、幅広い層に根付いたカルチャーだ。

 だが、こうした文化とは趣の異なる“とあるスポット”が、いま注目を集め、SNSや動画投稿サイトで着実な人気を獲得しつつあるという。

 とあるスポットとはラーメンチェーンの「山岡家」である。

 2023年頃から、ショート動画SNSでは、「山岡家を訪れてラーメンをすする投稿」を見かける機会が急激に増えた。

 当初は、アルゴリズム的に中年層が好みそうな外食動画がたまたま表示されやすくなっただけかと考えた。

 ところが、山岡家を運営する丸千代山岡家の財務情報をのぞいてみると、売上高が2021年1月期で142億6500万円だったのに対し、2023年1月期では186億7600万円、2025年1月期では345億8500万円にまで伸びている。

 まさしく急激な伸長。筆者が感じた「ブーム」は、どうやら気のせいではなさそうだ。

深夜でも店内は混んでいた

まずは、山岡家を実際に体験してみよう

 ある日の深夜、自宅から行けそうな店舗を調べて、しばし車を走らせた。

 暗闇の中に煌々と光る「山岡家」の看板を見つけた。時刻は0時過ぎ。深夜なのに、駐車場が8割ほど埋まっていることに、まず驚かされる。こんな時間に、こんなにも多くの人がラーメンを求めてやって来ているのか。

 店内に足を踏み入れると、独特の豚骨臭が漂っている。店内は「昔ながらの街中華」のような、どこか懐かしい空気だ。

 なんと、食券機には数人の行列まで見られる。カウンター席に加えて、広々としたテーブル席も多い。店内を見渡すと、ひとり客も多いが、それ以上に、20代と思しき若年層グループで賑わっている。驚いたことに、平日深夜の店内が7〜8割は埋まっているではないか。ラーメンをすすりながら活発に会話を楽しむその姿は、活気に満ちている。

 自動販売機で食券を購入し、席につく。はじめての山岡家といいうこともあって、(おそらく)スタンダードな醤油ラーメンを注文。価格は690円。いまどき驚くほど良心的だ。他に「特性味噌」「味噌」「塩」「辛味噌」「ウルトラ激辛」「焦がし醤油」などが選べた。

いくつかの味から選べる。つけ麺もある

トッピングも豊富

 なお、人気No.1は醤油ラーメンにネギをトッピングした「醤油ネギラーメン」であるらしい。確かに、トッピングのネギをライスに載せて食べる動画を何度も見かけた。

 出てきたラーメンは、確かな存在感を放っている。多めの脂に覆われた茶褐色のスープで、トッピングはネギ、ほうれん草、チャーシュー、海苔。その下に隠れる麺は、低加水の中太麺で、しっかりとした食感。

多めの脂に覆われた茶褐色のスープが特徴的

 口に含んでみると、意外にも過剰なこってり感はなく、むしろスッと胃に収まる。これなら、遅い時間帯でも無理なく食べきれそうだ。量もほどよく、大食いの成人なら、ライスをセットにしてもちょうどいいかもしれない。

麺は低加水の中太麺

 豚骨ということもあって好みは分かれるかもしれないが、24時間営業のチェーンで、690円で食べられるなら、このラーメンは100点満点だろう。

 店内でスープを炊いた本格的なラーメンを提供している点、良心的な価格、24時間営業、豊富なカスタマイズ性、素朴だが食欲をそそるビジュアル。このあたりに、支持を拡大する理由の一部がありそうだ。

 ともかく、ショート動画として一種のコンテンツ化している山岡家のリアルな姿を初めて目にして、その魅力を肌で体感できた。

山岡家動画ブームの理由を考えてみたい

 改めて、SNSに流れてくる山岡家の動画を眺めてみる。

 ショート動画SNSで「山岡家」と調べると、各々が工夫した「俺流の食べ方」や「初挑戦レポート」「新メニュー食べてみた動画」「複数メニューの一気食い動画」「山岡家あるある」などの動画がずらりと並ぶ。こうした動画がまた別の来店者を呼ぶ流れができあがっている。

 こうしたブームが起きる背景には、SNSの影響だけでなく、「場所」の力もあるだろう。

 山岡家は北海道に本社を置く全国チェーンだが、首都圏では、首都圏から郊外に移り変わる“境界”付近に多くの店舗を構えている。マップアプリなどで山岡家にピンを置くと、都心を中心点とした同心円上に、きれいに店舗が並んでいる様子が確認できるはずだ。

 こうした立地の多くは、幹線道路沿いかそのすぐそばで、大規模な物流拠点が近いケースも多い。つまり、もともと深夜でも人や車が行き交う場所なのだ。だからこそ、夜遅くでも若者たちがふらりと車を走らせ、友人と集まり、ラーメンを囲むことができる。

 SNSを通じて広がっている山岡家ショート動画人気は、こうした「集まりやすい場所」「深夜でも営業している場所」という、もともとの立地や営業スタイルもうまく作用しているだろう。

 さらに、近年の「モッパン動画」の流行も、こうした山岡家ショート動画の人気を後押ししたと考えられる。食事のライブ感や喜びをシェアする文化がすでに広がっていたことで、山岡家のラーメンを食べる動画に、多くの人が“楽しさ”を感じる土壌が整っていた。

 深夜のおいしいラーメン、すこしの背徳感と満腹感、楽しいカスタマイズ、そして友人との談笑。

 山岡家ショート動画が持つこれらの魅力は、従来の“映え”文化が持つ整った美しさの魅力とは、方向性が明確に異なる。だが、これもまた時代が求めるリアルで、現代らしい景色なのだろう。

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  • ラーメン山岡家