ショウガ×キャラメル、たらの芽×レモン…ヘルシーな野菜ジェラートで味わう自然の恵み

産直の野菜、果物を使ったジェラートがそろう=東京都港区の「エリコ オオサワ アースリー ジェラート」(津川綾子撮影)

冷たいスイーツに癒やしを求めたくなる夏。イタリア発祥の冷菓ジェラートは、アイスクリームよりも低脂肪で、後味も軽い。最近は産地にこだわった野菜や果物を使い、職人が手がけたものが人気となっている。

イタリアでは、ジェラート作りの修業を積んだ職人を「ジェラティエーレ」と呼ぶ。千葉県大多喜町で「山里のジェラテリア 山猫」を営む富澤奈美さんもその一人。2019年、イタリア・ボローニャでジェラート作りを学んだ。

「本場の技術と考え方を学ぶ中、最も印象的だったのはイタリア特有のもっちりとしたジェラートの食感でした」

野菜ソムリエでもある富澤さんは「千葉にはおいしい野菜や果物がたくさんある」と、地元産の農産物を使う。「ジェラートは食材そのものの食感や味わいを生かしやすく、非常に相性がよかった」という。

千葉県産の牛乳に、春にはイチゴ、夏にはメロンやプラム。地元産の果物などをたっぷりと使い、果肉などに含む水分まで練り込み、一切水を加えないことで、香りまで楽しめるジェラートに仕立てる。最近のおすすめは、無農薬で育て、その日の朝に摘んだばかりのミントを地元産の牛乳に合わせた「白いチョコミント」。さらには「乳製品ゼロ・完全ビーガン仕様のジェラートの開発に挑戦しています」と話す。

千葉の食材にこだわった「山里のジェラテリア 山猫」のジェラート

マッシュルームとコーヒーが合うなんて

東京・表参道のオーガニック野菜ジェラート専門店「エリコ オオサワ アースリー ジェラート」には、色とりどりの12種類が並ぶ。トマトやマッシュルーム、大葉、ショウガ…ジェラートの上に飾られた野菜が、産地直売所の野菜棚を思わせる。

作るのは店主の大澤英里子さん。生まれ育った鳴子温泉(宮城県大崎市)の自然の恵みを生かしたジェラートの評判が広がり、今年4月、東京に本拠を移した。

「日本全国にあるこだわりの農産物の持ち味をジェラートにして表現し、自然の恵みの豊かさを伝えたい」と大澤さん。

例えば、「栃木県杉山さんの無農薬すだち&佐々木さんの大葉のマスカルポーネ」というジェラートは、コクのあるチーズや牛乳の甘さが、大葉の爽やかな風味とスダチのキリリとした香りを際立てる。

「たらの芽シトロン」などユニークなフレーバーのジェラート。東京・表参道の街並みを眺めながら味わえる

高知の有機栽培ショウガは、焦がしキャラメルとオーツ麦ミルクを合わせジェラートに。ショウガのパンチのある辛さが、キャラメルの甘くほろ苦い風味と重なり、くせになる。ブラウンマッシュルームのコク深い味わいがコーヒーと好相性だと、大澤さんのジェラートを食べ初めて知った。

「店の前で育てたハーブもジェラートに使います」と話す大澤英里子さん

自然が直面する危機も実感

すでにレシピは200種ほど。巧みな相乗効果で、素材それぞれの味わいを伝える。その独創性が評価され6年前、「ジェラートマエストロ日本一」の座に輝いた。

ジェラートに名を加えるほど、生産者との交流を大事にする。「ここ数年暑すぎてトウモロコシが取れなくなった、とか、食料不足に陥った野生動物に田畑の野菜を食べ尽くされた、とか。大変な状況を耳にします」と気候変動の影響も気に掛ける。

ときには「たくさん取れたから使ってほしい」と民家の梅を譲り受け、ジェラートに。自然の恵みの尊さを知るから、大事に使う。

以前は生産者の畑がそばにあり、容易に訪ね歩けた。東京進出後は「それができなくて」。鳴子にちなんだ名を改称し、店名に「アースリー(地球の)」と掲げたこれからは、全国の生産者を訪ね、新たな味の表現を見いだすつもりだ。(久保武司、津川綾子)