世界一売れたゲームの映画「吹き替え版」の凄み

盛り上がる要素はあるが、ストーリーはない, 映画の欠点となるのが「共通認識の欠如」, ボスと戦うときのBGMが人気になりやすいRPG, 宣伝のためのタレント吹き替えがむしろ希望となる

世界一有名かもしれないモンスター「クリーパー」も当然ながら出演する(画像:YouTubeよりキャプチャー)

2025年4月25日より、映画『マインクラフト/ザ・ムービー』が上映される。本作は世界一売れたゲーム『マインクラフト』を題材にしたハリウッド映画だ。

【写真で見る】『マインクラフト/ザ・ムービー』の舞台はオーバーワールド。もともとゲーム内用語だが、要はブロック異世界だ

『マインクラフト』は3億本も売れており、まさしく世界で最高の売り上げを記録しているゲームである。映画は海外ですでに公開されており、4月6日時点で興行収入は3億100万ドル(約442億円)を記録。アメリカでは初登場ナンバーワンを記録しているほどだ。

ゲームの映画化といえば『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』も大ヒットを記録したが、こちらは公開初週で1億4636万ドルであり、倍近い差をつけている。まさしくメガヒットであろう。

しかしながら映画『マインクラフト/ザ・ムービー』が最高の作品かというとやや疑問で、むしろタレントによる吹き替えが魅力となる不思議な作品となっている。

盛り上がる要素はあるが、ストーリーはない

盛り上がる要素はあるが、ストーリーはない, 映画の欠点となるのが「共通認識の欠如」, ボスと戦うときのBGMが人気になりやすいRPG, 宣伝のためのタレント吹き替えがむしろ希望となる

冒険の舞台となる「オーバーワールド」。もともとゲーム内用語だが、要はブロック異世界だと思ってもらえばよい(画像:YouTubeよりキャプチャー)

さて、映画に入る前にゲームの『マインクラフト』を軽く説明しておこう。

ゲーム『マインクラフト』は、立方体のブロックを自由に組み合わせてさまざまなものを作れるゲームである。クリエイティビティ、つまり創造力が重要なゲームで、簡素な家から巨大な街まで、心の赴くままにさまざまなものを作ることができる。

映画版では、現実の人間が登場する「異世界転送ファンタジー」になっている。主人公であるギャレット(ジェイソン・モモア)やヘンリー(セバスチャン・ハンセン)たちが不思議なゲートに入ってしまい、すべてがブロックでできた「オーバーワールド」にたどり着くといったあらすじだ。

ゲームを遊んだ人はこう思うかもしれない。「ストーリーと呼べるものがほぼないゲームなのに、どうやって映画にするのか?」と。

盛り上がる要素はあるが、ストーリーはない, 映画の欠点となるのが「共通認識の欠如」, ボスと戦うときのBGMが人気になりやすいRPG, 宣伝のためのタレント吹き替えがむしろ希望となる

『マインクラフト』のメインキャラクター「スティーブ」はジャック・ブラックが演じる。ゲームのイメージとは合わないが、ユニークな存在だ(画像:YouTubeよりキャプチャー)

さて、どのようにしてストーリーがないゲームを映画にしたか。まず、スティーブ(ジャック・ブラック)が急に歌いだして観客の笑いを誘ったり、ナタリー(エマ・マイヤーズ)が激しいアクションで敵をなぎ倒したりと、いかにも映画らしい要素でなんとか場をつなげようとしている。

そして、ゲーム原作映画らしく、『マインクラフト』ならではの要素も作中にいろいろと差し込んでいる。たとえば高いところから落ちるにしても「水バケツ」があれば無傷で着地できたり、あるいはロケット花火で空を飛んだりと、ゲームを遊んだ人ならピンと来る要素がちりばめられているわけだ。

このように盛り上がる要素があるにはあるのだが、字幕版を見た筆者は正直なところあまりおもしろくはなかった。決してつまらないわけではなく、料理に塩が足りないように、おもしろさが足りないのである。

映画の欠点となるのが「共通認識の欠如」

盛り上がる要素はあるが、ストーリーはない, 映画の欠点となるのが「共通認識の欠如」, ボスと戦うときのBGMが人気になりやすいRPG, 宣伝のためのタレント吹き替えがむしろ希望となる

Netflixの『ウェンズデー』で活躍したエマ・マイヤーズも出演。ビジュアルは目立つがかなり地味な役回り(画像:YouTubeよりキャプチャー)

やはり『マインクラフト』にはもともとストーリーがないので、映画を見続けるための動機が薄いのだ。ストーリーは起伏が作れていないうえ予定調和になるのがわかりきっているし、1時間40分もあるのでショート動画のようにふざけた要素だけで構成することも不可能となる。はっきりいって、ポップコーンとホットドッグ、そしてコーラが欲しくなる映画である。

とはいえ、ストーリーがほぼないゲームが映画化した例はある。前述の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』もまさしくそうだ。

マリオはどのように映画にしたのかといえば、これは「ゲーム体験を映画化する」といった手法を取っていた。そもそもゲームとは総合芸術であり、操作してクリアした喜びのみならず、グラフィックやサウンド、演出にコントローラーの振動といった要素もすべてひとまとめにして体験するものである。

ボスと戦うときのBGMが人気になりやすいRPG

たとえばRPGではボスと戦うときのBGMが人気になりやすいが、あれは「強敵と対峙する緊張するシチュエーションで流れる音楽」だからこそ印象に残りやすいわけだ。各要素が複雑に絡み合い、ゲーム体験をプレイヤーに与えるのである。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』はこのゲーム体験をうまく映画に乗せており、観客は見ているだけでゲームの思い出を呼び起こされるような仕組みになっていたのである。

盛り上がる要素はあるが、ストーリーはない, 映画の欠点となるのが「共通認識の欠如」, ボスと戦うときのBGMが人気になりやすいRPG, 宣伝のためのタレント吹き替えがむしろ希望となる

実写に寄せるためゲームキャラクターはやや不気味な存在になっているが、村人はそのなかでもかなり危うい。もはや、そういうものだと思うしかない(画像:YouTubeよりキャプチャー)

しかし『マインクラフト』にはそういう共通体験があまり存在しない。前述のようにこのゲームは自由なので、遊び方は本当に人それぞれなのだ。

『マインクラフト』はひとりで遊ぶこともできるし、家族や友人と遊ぶこともできる。インターネットで知らない人と遊んでもいいし、同好の士を集めてプレイしてもよい。

ゲーム内容も、バニラ(何も手を加えないもの)で遊ぶ人もいれば、アドオン(追加要素)をいろいろ入れるケースもあるし、あるいはMOD(個々人が作る改造データ)に手を出す場合もあれば、YouTubeなどの動画を通じて楽しむケースもある。何をどう作るか、どう遊ぶかも多様な選択肢があるわけだ。

世界一売れているゲームであり、同時に自由な遊びでもあることから、共通認識が作りづらい。こうなると映画では浅いところしか触れることはできないのである。子供はそれで喜べるかもしれないが、年齢が高くなるほど厳しくなりそうだ。

盛り上がる要素はあるが、ストーリーはない, 映画の欠点となるのが「共通認識の欠如」, ボスと戦うときのBGMが人気になりやすいRPG, 宣伝のためのタレント吹き替えがむしろ希望となる

海外で話題のラヴァチキン(Lava Chicken)(画像:YouTubeよりキャプチャー)

なお、海外では映画版がネットミーム(ネットの極めて一時的な流行語)として盛り上がっているようで、うまく共通認識を作れているようだ。ラヴァチキン(溶岩チキン)やチキンジョッキーといった要素は特に人気なようで、生きたニワトリを上映中に持ち込む人まで現れるほどの人気および混乱ぶりだという。

日本ではそのニュースに対して「なぜそこまで盛り上がれるのか」といった雰囲気ですらあり、やはり『マインクラフト』に対する共通認識が欠けていると言わざるを得ないのではないか。

そこで重要になるのがタレント吹き替え、つまり吹き替え版にさまざまなYouTuberが出演する部分である。

宣伝のためのタレント吹き替えがむしろ希望となる

盛り上がる要素はあるが、ストーリーはない, 映画の欠点となるのが「共通認識の欠如」, ボスと戦うときのBGMが人気になりやすいRPG, 宣伝のためのタレント吹き替えがむしろ希望となる

チキンジョッキーはゲーム内できわめて低確率で生成されるレアモンスター。それが映画化されてネットで流行になり……と説明されたところでおもしろさは理解できない(画像:YouTubeよりキャプチャー)

映画『マインクラフト/ザ・ムービー』の吹き替え版にはHIKAKINやSEIKIN、そしてドズル社、日常組、カラフルピーチといった、ゲーム『マインクラフト』の実況動画で人気を博している人たちが出演する。また、狩野英孝も出演するのだが、これもゲーム実況つながりだと思われる。

こういったタレント吹き替えは嫌がる人も少なくないし、筆者も普段であれば黙って字幕版を見るタイプである。しかし今回の映画に限っては、ゲーム実況で有名な人たちが出演したほうがむしろよいのではないか。

前述のように、この映画の弱点は共通認識に欠けるところにある。ゆえに「日本国内で有名なゲーム実況者やタレントが出演する」となれば、そのファンは間違いなく楽しめる映画に格上げされるといえよう。場合によっては、宣伝のためのタレント吹き替えが映画作品にとって重要なスパイスになりうるわけだ。

もちろん出演者に興味がない人にとって、映画『マインクラフト/ザ・ムービー』は薄味な作品になるだろう。ただ、少なくとも筆者にとっては、「これは字幕ではなく吹き替えで見るべきだった」と思わされる稀有な作品だったことは間違いない。