「自分の葬儀をしてほしくない」が6割超え お金がかかり過ぎるから、だけではない30~50代で多い「必要だと感じない」理由とは

「自分の葬儀をしてほしくない」と考える人が6割超。しかも30~50代の現役世代に多いという。この調査結果から「死」や「葬儀」に対する現代人のどんな思考や志向がうかがえるのか――。

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 葬祭事業を手がける「ティア」(名古屋市)の調査によると、6割超が「自身の葬儀をしてほしくない」と考えていることがわかった。

 調査は今年1月、20~70代の男女1500人を対象に実施。「自分が亡くなった後、葬儀をしてもらいたいですか」という質問に、「はい」と回答した人は37.4%にとどまったのに対し、「いいえ」は62.6%にのぼった。

 年代別では、葬儀を「してもらいたい」派は70代が56.8%、60代が41.2%のほか、20代も40.4%と高齢世代に次いで多かった。これに対し、「してもらいたくない」派は、40代が74.8%、50代が72.8%、30代が66.4%で、働き盛りの現役世代が多くを占めた。とりわけ40代は、調査項目にある「自身」「配偶者」「親」のすべてにわたって葬儀実施の意向が年代別で最も低い結果も浮かんだ。

 現役世代はなぜ、「葬儀なし」を希望するのか。

 調査主体のティアに理由を尋ねると、「住宅ローンや子どもの進学、親への生活支援など、経済的な支出が大きい世代だからと考えています」とのことだった。

 実際、今回の調査でも「自分の葬儀をしたくない理由」(選択式、複数回答)の中で、「経済的に厳しく、お金をかけたくないから」を選んだ人は34.9%と一定数いる。ただ、経済的な理由を選んだ人の比率は、「葬儀をする必要を感じないから」(68.2%)、「準備などに手間がかかり面倒だから」(38.7%)に続く水準だった。さらに言えば、最も多かった「葬儀をする必要を感じない」という、その理由こそ知りたいところだ。

 ということで、現役世代の「死」や「葬儀」に対する意識に詳しい一般社団法人「デスフェス」共同代表の市川望美さんに見解を尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「もう少し丁寧に見ていく必要があると思います」

 どういうことなのか。

 7割近くが選んだ「葬儀をする必要を感じないから」という理由について、市川さんは「私の理解では、いわゆる『伝統的な葬儀』であれば、しなくて結構です、ということかなと思います」と話す。

 先祖代々の墓に入ったり、お寺で戒名をもらったりということも含めた伝統的なスタイルの「葬儀」はしてほしくない、という意識の表れではないか、というのだ。

 調査では、葬儀に参列した経験については肯定的な受け止めが目立った。

「これまでの葬儀に出席して良かったですか」という質問に、「良かった」と回答したのは7割近く。その理由(選択式、複数回答)で多かった「最期のお別れができたから」(55.4%)、「気持ちに区切りをつけることができたから」(51.2%)を選んだのは、40代でも過半にのぼっている。市川さんは言う。

「この回答結果からも、区切りやお別れの機会を持つこと自体は『良いこと』と考えている人は少なくないのが浮かびます。であれば、自身の葬儀を『したくない』派の6割の回答者の中にも、今までの葬儀とは別のスタイルや選択肢があれば、『したくないわけではない』という人も潜在的に含まれているのではないでしょうか」

 そのうえで市川さんは、現役世代が自身の葬儀に否定的な背景として、「経済的な理由も少なくない」と指摘する。

「葬儀には『コストがかかりすぎる』というイメージがあります。『これが相場』『こういうものだから』と言われても、お葬式に百万円単位の出費をできない人や、支払い能力があったとしても納得がいかない人は現役世代ほど多いはずです。経済が右肩上がりだった時代とは異なり、今はライフプランの見通しが立てにくい時代ですから、理由や根拠がよくわからないものにお金を使いたくない、という経済合理性の意識が働くのも当然でしょう。自分自身の葬儀となると、なおさらです」

 火葬のみでセレモニーを行わないようなシンプルな直葬が増えているのも、経済合理性が作用している面もあるのではないか、と市川さんは言う。

 また、40代で「葬儀をしたくない」派が最も多いのも腑に落ちるという。

「私もそうですが、50代になると、自分が喪主として送る、あるいは送られる立場になることも現実的に考えられるようになります。しかし、30~40代は家族が増え、自分たちが生きることで手いっぱいの状況でお金もすごくかかるライフステージの局面ですから、『死』に対してリアリティーがないのは仕方がないのかもしれません」

「死」や「葬儀」を取り巻く環境も変化している。「死が身近でなくなったことで具体的に葬儀のイメージが持ちにくい面もある」と市川さんは言う。

「身近な人の死に立ち会う経験が減り、葬儀も『サービス購入』のように形式的になっているのかもしれません。普段からお世話になっているお寺があれば、そのしきたりや、代々の慣習を踏襲することもあると思いますが、今は檀家としての付き合いも希薄化していることが多く、知識も経験も不足していて、葬儀の必要性や重要性を感じる機会が減っていることも影響がありそうです」

 調査では、親や配偶者の葬儀については、いずれも「したい」派が7割を超えた。親や配偶者の葬儀は「送る側の気持ちの整理」や「やってあげなければいけない立場」のため、「したくない」とは回答しづらかった人も、自身のことであれば遠慮なく、「やらなくてもいい」という本音を吐露した可能性もある。

 いずれにしろ、「親や配偶者とも生前にどんな葬儀をしたいのか、しっかり話し合っておくべきだ」と市川さんは訴える。でないと、不本意な思いを抱えたまま、世間並みの葬儀を「こなす」という選択肢しかなくなってしまうからだ。

 市川さん自身、父親の葬儀の際に故人が好きだった花を飾りたいと思ったが、葬儀業者が用意したパッケージの中から選ぶしかなかった経験があり、違和感が募ったという。

「この時代にパッケージの中から選ばせる? これってサービスとしてどうなのかしらと思いつつ、しきたりだから仕方がないのかなという諦めや、急いで決めなければいけないという切迫感もあって受け入れました」

 既存の「葬儀」のスタイルはピンとこない。かといって、他の選択肢が見えにくいのが現状なのは否めない。しかし一方で、樹木葬や海洋散骨という葬られ方もあるという認知や、「自分らしい葬儀」という発想も徐々に広がりつつある。

「画一的な葬儀は『NO』だけど、弔うこと、偲ぶこと、儀式については強く否定されているわけではないと思います。今の葬儀のスタイルは現代の価値観・多様性に対応できておらず、個々の人生の豊かさを十分に映すことができていないと感じますが、SBNR(Spiritual But Not Religious:宗教的ではないが精神的)と呼ばれる層の人たちは、そういった溝を埋めるサービスを開拓していくはずです。私たちが開催している『Deathフェス』(注)をポジティブに捉えている人たちはまさにこの層と重なると思っています」

 市川さんはこう続ける。

「“葬儀”を自分自身の生の表現、それぞれの人生の表現だと考えると、今の一般的な葬儀のような『総決算』的な場ではなく、生前に周囲への感謝を示す『生前葬』のような形式も含め、越境学習やリスキリングのように『一度いままでの自分を捨てて再生していくプロセス』としての“葬儀”のニーズはこれから高まっていくと思います。そうなった時のセレモニーの担い手は、葬儀業界に限らない多様なプレーヤーが参画することになるでしょう」

(AERA編集部・渡辺豪)

【注】Deathフェス……市川望美さんと小野梨奈さんが共同代表を務める一般社団法人「デスフェス」は、渋谷ヒカリエ(東京都渋谷区)で「死」をポップかつ誠実に見つめ直す祭典「Deathフェス」を2024年以降、毎年開催。幅広い年代の来場者が多数参加し、話題を集めている。今年8月にはメールマガジン「デスフェスJournal」を創刊。年に1度のイベントにとどまらず、年間を通じて事業運営・文化創生に取り組んでいる。