「西のゴールデンルート」欧米豪の観光客呼び込む 万博きっかけに格差解消目指す勝算は

西のゴールデンルートにある道後温泉=松山市
閉幕まで約1カ月となり連日盛況の大阪・関西万博をきっかけに、訪日客を兵庫県から九州までの西日本に呼び込もうと、自治体や企業が連携し「西のゴールデンルート」を打ち出している。各地をつなぐ観光モデルコースを設定し、専用サイトで予約できるようにした。滞在期間が長く消費額も多い欧米とオーストラリア(豪州)からの宿泊者は東京-大阪間が80%を占める一方、兵庫県以西は6%にとどまっており、広域連携で格差を解消できるか注目される。

「門司港レトロ」として人気のJR門司港駅=北九州市
300団体が参画
「観光客のいびつな宿泊状況を平準化し、知られていない西日本の魅力を知ってもらうことが狙いだ」。「西のゴールデンルートアライアンス」会長の高島宗一郎・福岡市長は7月に開いた会見でこう強調した。
同アライアンスは、欧米豪の観光客を取り込めていないことを課題とする同市や神戸市などが2023年に前身の連合体を設立。24年に交通や旅行会社なども参画して拡充させた。現在は約300の団体が参加し、西日本一円の広域観光の発展・強化を目指している。
会見には万博を運営する日本国際博覧会協会も加わり、高科淳副事務総長が「万博開催の効果を全国に波及させるべきだ。国内外の来場者に各地にも足をのばしてもらえるよう『万博プラス観光』の取り組みを進めている」と語った。
万博閉幕後も継続
政府観光局によると、今年1~6月の訪日客数は前年同期比21%増の2152万人で過去最高を更新。観光庁が発表した1~6月の訪日客の消費額(速報値)も過去最高の4兆8053億円だった。

一方で、欧米豪の訪日客が「ゴールデンルート」と呼ばれる東京-大阪間に集中し、他地域は恩恵を受けられていない実態がある。観光客の集中が地域住民の生活に悪影響を及ぼすオーバーツーリズム(観光公害)も富士山や京都のある東京-大阪間で深刻化しており、西のゴールデンルートへの誘客で緩和が期待されている。
専用サイトでは観光のモデルルートや各地の観光情報を掲載し、予約ページとリンクして簡単に予約することができる。モデルルートは訪日リピーター向けに2週間程度の「ロング」と、気軽に足を運んでもらえる3~4日の「ショート」を作成した。
ロングは「新幹線を軸に巡る関西〜九州横断」や「九州〜四国〜関西まで海を渡る瀬戸内海横断」など3種類。ショートは、広島と長崎の被爆地を訪ねる「平和を考える」や、大分などの温泉地を巡る「酒どころや温泉地で紡がれる食文化に触れる」など8種類となっている。
8月27日には万博会場でPRイベントを開催。万博をきっかけに取り組みを知ってもらった上で、観光の格差是正に向けた活動を万博閉幕後も続けていく考えだ。
オーバーツーリズム、6割が「悪影響」
各観光地が訪日客でにぎわう一方、オーバーツーリズムの問題も深刻化している。リクルート「じゃらんリサーチセンター」の調査では、旅行者の増加で日常生活圏に混雑エリアが発生している場合について「悪影響が出ている」とした回答が60・4%に上った。政府も対策を打ち出しているが、有効な解決策にはなっていない。

西のゴールデンルートにある瀬戸大橋
調査は行政や宿泊施設などを対象に実施。混雑エリアで発生している問題(複数回答)としては、「生活圏の雰囲気が変わった」(57・5%)、「マナーが悪い旅行者がいる」(52・2%)の順に多かった。
地域ごとにみると、関西では「生活圏の雰囲気が変わった」が72・9%、関東では「物価や飲食店の価格などが急激に上昇した」が60・0%とそれぞれ目立ち、地域ごとに問題のポイントが異なる傾向もみられた。
必要な対策(複数回答)としては「マナー啓発(多言語対応など)」が54・8%と最も多かった。一方で難しい対策としては「交通渋滞の解消」が44・9%、「公共交通の輸送力増強」が44・5%だった。
政府は2023年にオーバーツーリズム対策を発表し、観光客の分散や平準化に乗り出している。混雑する路線バスから地下鉄への分散促進、手ぶら観光の実証導入のほか、需要に対応した運賃・料金の柔軟な設定などを打ち出し、導入に向けた予算措置や規制緩和を進めるが、解決には至っていない状況だ。(井上浩平)
「外国人目線」徹底を アジア太平洋研究所研究統括・稲田義久氏
政府はオーバーツーリズムを防ぐため地域が一体となって取り組む事業を補助する「先駆モデル地域」を選定している。大阪・関西万博の来場者に会場外のイベントや施設の訪問を促す「拡張万博」の観点からも、西日本の広域連携による観光振興策は評価できる。
海外の旅行事業者は、観光の魅力を伝えるのに重要なのは観光地がしっかりとしたテーマ性を持つことだと強調する。西のゴールデンルートでは「神楽」や「平和」などのテーマが取り込まれている。
観光の周遊ルートを考えるにあたり、「外国人目線」を徹底し、ターゲットとする欧米豪の観光客が何を求めているのか当事者の立場で検討することが重要だ。
外国人目線で見れば、広域周遊にとって近接性や利便性の優先順位は高くないかもしれない。一方でイノベーション(技術革新)を活用し、移動手段の予約や決済などを一体的に提供する次世代交通サービス「MaaS(マース)」はさらに進化させる必要がある。