暴力団「工藤会」20代以下の組員が福岡ではゼロに…「匿流」使った特殊詐欺に資金源変容か
特定危険指定暴力団工藤会(本部・北九州市)の福岡県内で活動する組員のうち、20歳代以下が昨年末時点でゼロになったことが、県警への取材でわかった。統計が残る2013年以降で初めて。工藤会トップで総裁の野村悟被告(78)を逮捕した「頂上作戦」の着手から11日で11年。工藤会は高齢化や警察の取り締まり強化の影響で弱体化が進む一方、県外に活動範囲を広げている若手も確認されており、警察当局は実態把握を進めている。
組員7割減 70代以上は14・9%

野村悟被告の自宅に入る捜査員(2014年9月11日、北九州市小倉北区で)
県警によると、県内で活動する組員は昨年末時点で150人で、頂上作戦に着手した14年の490人に比べて7割減った。高齢化も進み、組員に占める20歳代以下の割合は4・7%から0%となった一方で、70歳代以上が2・2%から14・9%と大幅に増えた。平均年齢は24年までの10年で9・4歳上昇して55・3歳になり、24年は50歳代以上が7割を占めた。県内で活動する暴力団の平均年齢52・4歳よりも高くなっている。

工藤会組員の平均年齢と20歳代以下の割合(福岡県内の勢力)
県警幹部は「工藤会に対する集中的な取り締まりや、暴力団追放運動の高まりによって組員の摘発や離脱が進み、若い世代が加入したがらなくなった」とみる。
県外で若手活動 匿流も警戒
一方、警察当局が警戒を強めているのが、福岡県外で活動する若手組員や、SNSでつながり違法行為を繰り返す「匿名・流動型犯罪グループ( 匿流(トクリュウ) )」だ。
捜査関係者によると、警察当局は近年、工藤会の勢力範囲として福岡、山口両県に千葉県を加えた。同県松戸市では工藤会系組事務所も確認されている。
千葉県警は2月、東京都の女性から300万円をだまし取ったとして、関東で活動する20歳代の工藤会系組員を詐欺容疑で逮捕した。特殊詐欺グループの受け子のリーダーとみており、ある捜査関係者は「工藤会は匿流の使い方や特殊詐欺での金の稼ぎ方において、他の暴力団を圧倒的に上回る勢いがある」と指摘する。
福岡県警幹部は「工藤会の伝統的な資金獲得活動は恐喝やみかじめ料などだったが、近年は特殊詐欺を有力な手段の一つにしている。武闘派から経済ヤクザに様変わりしつつある」と話す。
特殊詐欺で摘発される組員ら増加
全国の暴力団勢力と摘発人数が減る中、特殊詐欺で摘発される組員らは増加傾向だ。警察当局は、暴力団の資金獲得活動の一つが「匿流」を使った特殊詐欺に変容しているとみている。

暴力団組員の摘発人数の推移(準構成員を含む)
警察庁によると、全国の暴力団勢力(準構成員を含む)は2024年末時点で1万8800人で20年末時点の約7割となった。摘発人数も20年は1万3189人だったが、24年は8249人に減った。薬物密売は暴力団の資金源の一つとされるが、覚醒剤取締法違反容疑での摘発も、同期間で3510人から1707人に半減した。
一方、特殊詐欺の被害は深刻化している。24年は2万1043件(被害総額718億8000万円)に上り、25年上半期(1~6月)も前年同期を大きく上回っている。摘発された組員らも増加傾向で、323人だった21年を除き、20~24年は402~439人で推移。25年上半期は217人だ。
また、匿流が関与した疑いがある特殊詐欺事件の24年の摘発人数は2263人。熊本県警が同年11月、闇バイトで実行役を勧誘するリーダー格とみられる指定暴力団道仁会系組幹部を逮捕するなど、警察当局は暴力団が上位者として関与するケースも多いとみる。
日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会の鈴木仁史・元副委員長は「匿流を使った特殊詐欺は上位者に捜査の手が及びにくい。警察が身元を隠す仮装身分捜査などで組織に入り込み、組員らの摘発につなげることが必要だ」と指摘する
◆工藤会= 市民や企業への襲撃を繰り返し、警察も標的にするなど「日本で最も凶悪な暴力団」とされ、2012年に全国で唯一、特定危険指定暴力団に指定された。福岡県警の統計が残る1992年以降、県内で最大勢力を維持してきたが、2023年末に指定暴力団道仁会(本部・福岡県久留米市)を下回り、第2勢力となった。総裁の野村悟被告は市民襲撃4事件で殺人罪などに問われ、1審で死刑判決を受けたが、控訴審では1事件が無罪となり無期懲役を言い渡された(検察、弁護側ともに上告中)。