「革命」に身を投じる女子大学生 「獄(刑務所)に入るのも覚悟している」 中核派全学連に初の女性委員長が誕生

■大学2年生の秋、SNSフォロワーに誘われて, ■「革命のために暴力を用いる」と主張, ■活動の原動力は「戦争を止めること」, ■女性差別を根本から変えたい, ■両親は反対、逮捕と大学除籍を覚悟, ■全学連に身を投じるZ世代の女性たち, ■性被害に遭ったが「不純異性交遊」で停学処分に, ■繰り返してきた整形手術をやめた

 1960年代後半にピークを迎えた学生運動。社会の変革を目指し、機動隊とも衝突を繰り返したが、70年代以降は急速に支持を失った。すでに終焉を迎えたと思われていた学生運動に、最近、Z世代の女子大学生が参入している。昨年は警察庁が「極左暴力集団」と呼ぶ「中核派全学連」に初めて女性委員長が誕生した。なぜ、彼女たちは「革命運動」に身を投じるのか。

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 矢嶋尋(ひろ)さん(26)。学習院大学文学部の4年生。2018年に入学したが、2年間休学したので、いま4年。そして、もう一つの顔が警察庁から「極左暴力集団」と呼ばれている「中核派全学連」の委員長だ。昨年9月、長い歴史を持つ中核派全学連で、初の女性委員長となった。

「革命とは、資本家を打ち倒し、私たち労働者の社会をつくることです」

 柔らかな口調とは裏腹に、語る内容は「過激」だ。

 千葉県の出身。子どもの頃から政治や戦争、平和に関心を持ち天皇制を容認する既成政党に不信感を抱いていた。とは言え、当初はSNS上で意見を述べるリベラル層の一人に過ぎなかった。

■大学2年生の秋、SNSフォロワーに誘われて

 転機は20年、大学2年生の秋。音楽の趣味で繋がっていたSNSのフォロワーに誘われ、都内で開かれた中核派の政治集会に初めて参加し、その熱気にカルチャーショックを受けた。

 本気で社会を変えようと行動している人たちが、現代の日本に存在していたんだ――。

 その日以来、中核派の集会や反戦デモなどに参加するうち、自然と中核派全学連に加わった。

 両親は「暴力はよくない」と反対し、娘が活動家になったことで弟たちの就職に不利になるのではと心配しているが、思想の自由は理解してくれているという。

■大学2年生の秋、SNSフォロワーに誘われて, ■「革命のために暴力を用いる」と主張, ■活動の原動力は「戦争を止めること」, ■女性差別を根本から変えたい, ■両親は反対、逮捕と大学除籍を覚悟, ■全学連に身を投じるZ世代の女性たち, ■性被害に遭ったが「不純異性交遊」で停学処分に, ■繰り返してきた整形手術をやめた

■「革命のために暴力を用いる」と主張

 中核派の正式名称は「革命的共産主義者同盟全国委員会」。1957年に結成され、革マル派や革労協とともに新左翼の主要三過激派の一つ。マルクスやレーニンの革命理論をもとに、暴力によるプロレタリア革命で共産主義体制の実現を目指す。非公然組織「革命軍」を持ち、過去には京都御所に金属弾を撃ち込んだり、火炎瓶を使ったゲリラ事件を繰り返してきた。

 こうした点について矢嶋さんは、「上の世代が持っているほど、若い世代に極左暴力集団や暴力革命へのアレルギーはない」と言う。

 「私の感覚からすると、本当に今の世の中を変えるのであれば、権力を私たち労働者が取ることが必要。そのためには、話し合いでできるわけがないというリアリズム的感覚はありました。1917年のロシア革命が労働者のデモから始まったように、日本でも革命はデモから始まっていくものだと確信しています」

  だが、暴力による解決に疑問がある。暴力を使わない手段での革命はできないのか? これに対し、矢嶋さんはこう答える。

 「そういった意見があることは理解しています。ただ、軍隊や警察は暴力的な組織だと思っています。国家権力がそういった暴力を使って自分の体制を守ろうとする以上、私たちが革命のために暴力を用いることは避けられません。労働者が暴力を使えるようになることは、社会を動かす力を身につける積極的な過程だと考えています」

■大学2年生の秋、SNSフォロワーに誘われて, ■「革命のために暴力を用いる」と主張, ■活動の原動力は「戦争を止めること」, ■女性差別を根本から変えたい, ■両親は反対、逮捕と大学除籍を覚悟, ■全学連に身を投じるZ世代の女性たち, ■性被害に遭ったが「不純異性交遊」で停学処分に, ■繰り返してきた整形手術をやめた

■活動の原動力は「戦争を止めること」

 警察庁によれば中核派の構成員は約4700人。中核派全学連は、中核派の下部組織の位置づけだ。現在、全国の大学に約100人いて、うち約3割は女性だという。今年はすでに全学連だけで13人の逮捕者を出し、うち1人が起訴されている(8月現在)。

 矢嶋さんに逮捕歴はないが、

「獄(刑務所)に入るのも覚悟しています」

 今は大学に通いながらアルバイトで生活費を稼ぎ、活動を続ける。

 活動の原動力は、「戦争を止めること」。台湾有事が起きれば、日本は米国と一体となって中国と戦争し、九州や沖縄が戦場となり、多くの住民が犠牲となる。それを絶対に止めなければいけないと、力を込める。

「いま日本はアメリカと合同軍事演習を繰り返し、一部の日本の政治家は核シェアリング(共有)を訴えています。戦争を止めるためには、戦争を進める日本政府を倒すことが必要です」(矢嶋さん)

■大学2年生の秋、SNSフォロワーに誘われて, ■「革命のために暴力を用いる」と主張, ■活動の原動力は「戦争を止めること」, ■女性差別を根本から変えたい, ■両親は反対、逮捕と大学除籍を覚悟, ■全学連に身を投じるZ世代の女性たち, ■性被害に遭ったが「不純異性交遊」で停学処分に, ■繰り返してきた整形手術をやめた

■女性差別を根本から変えたい

 学生運動のピークは1960年代後半。長期化するベトナム戦争や日米安保条約改定などに反対し、社会の変革を目指して運動を展開、機動隊とも衝突を繰り返した。だが、70年代に入り、内ゲバや武装闘争のエスカレートなどで急速に支持を失う。今では学生活動家は少数となり、イデオロギーによる対立も終焉を迎えた。そんな中、なぜZ世代の女性たちが「革命運動」に身を投じるのか。

 京都大学文学部3年生の池之端紗衣さん(21)は、大学入学とほぼ同時に、中核派全学連に加入した。

「女性差別を根本から変えられるのは全学連の運動だけです」

 中学生の頃から女性差別に問題意識を持っていた。特に、祖父が母親に「女は大学に行くな」という趣旨の発言をしていたことを知り、理不尽さに衝撃を受けた。フェミニズムに関する本には「女性はこうすれば仕事でも活躍できる」と書かれていたが、男性はこんなことを考えなくても自由に仕事を選べる現実を見て、「女に生まれた以上は超えられない壁がある」と絶望し、諦めていた。

 2023年に大学に入学。京都大学に進学した理由は特にない。文学部を選んだのも、「なんとなく人類学をやりたかったから」。入学すると、全学連が開催していた「革命的女性解放」の学習会に参加した。そこで、「女性差別は、私有財産制と資本主義に原因がある」という提起に触れ、強く納得した。

 約1万2千年前から1万年前に狩猟採集社会から農耕が発展し、階級と同時に私有財産制が生まれ、外で働く男性は地位を高め、女性は家事労働に縛られ差別が制度化された。さらに資本主義の下では、女性は非正規雇用や低賃金で働くことを強いられ、差別が続いていると学んだ。

■大学2年生の秋、SNSフォロワーに誘われて, ■「革命のために暴力を用いる」と主張, ■活動の原動力は「戦争を止めること」, ■女性差別を根本から変えたい, ■両親は反対、逮捕と大学除籍を覚悟, ■全学連に身を投じるZ世代の女性たち, ■性被害に遭ったが「不純異性交遊」で停学処分に, ■繰り返してきた整形手術をやめた

■両親は反対、逮捕と大学除籍を覚悟

「どうしても腑に落ちなかった女性差別が、起源まで遡って考えたことで、すごく納得いきました」(池之端さん)

 当初は中核派を「怖い」と思ったが、女性差別だけでなく、今の政治に対する怒りを解き放てるのは全学連の運動しかないと感じ活動に身を投じた。

 昨年、女性たちが先頭に立って闘える反戦運動を牽引したいとの思いから、全学連の書記次長に就任した。デモではスクラムの前線に立ち、「石破政権打倒!」を叫ぶ。デモで声を上げることで、抑圧された怒りを解き放ち、「自分にも社会を変える力がある」と実感するという。

 両親は、「暴力的だから」という理由で活動に反対している。だが、池之端さんは逮捕も、大学を除籍になることも覚悟で、顔と名前を公表している。京都大学を拠点に、アルバイトで生活費を稼ぎながら活動を続ける。

 目指すのは、「抑圧された女性や労働者階級が主人公になれる社会」。沖縄の米兵による女性に対する性暴力事件など、いま女性差別は激化している、と話す。

■全学連に身を投じるZ世代の女性たち

「それは偶然ではなく、米軍が中国を軍事力で叩き潰すような戦争の訓練をしているから、女性の命を何とも思わないような暴力を平気で振るえるのだと思います。そこに怒りを持ち、社会を変えたいと思っている女性はたくさんいます。そういう人たちの希望にもなりたい」

 全学連に身を投じるZ世代の女性に共通する行動原理は、平等で公平な社会に寄与し、女性の抑圧を資本主義の問題と捉え、革命で変えようとする信念だ。

「同志であり、一緒に闘ってくれる心強さがあります」

 そう話すのは、ニノミヤさん(21)。

 昨年6月、全学連に身を投じた。

 きっかけは一昨年の冬。テレビで「成田闘争」のニュースを見たことだった。成田空港建設に反対し農民の土地を守る全学連が行うデモだったが、そこで初めて全学連を知り、「いいな」と思った。

「私と同世代の若者たちが一生懸命、 農民の人たちの立場に立って闘っているのが衝撃でした」

■大学2年生の秋、SNSフォロワーに誘われて, ■「革命のために暴力を用いる」と主張, ■活動の原動力は「戦争を止めること」, ■女性差別を根本から変えたい, ■両親は反対、逮捕と大学除籍を覚悟, ■全学連に身を投じるZ世代の女性たち, ■性被害に遭ったが「不純異性交遊」で停学処分に, ■繰り返してきた整形手術をやめた

■性被害に遭ったが「不純異性交遊」で停学処分に

 もともと歴史や政治に関心を持っていたこともあり、マルクスとエンゲルスが書いた『共産党宣言』を読み始めた。だが内容が難解だったので、今の全学連委員長の矢嶋さんに連絡し、勉強会に参加した。そこで戦争が起きる原因について学ぶとともに、「被害者を責めるような社会を団結して粉砕しよう」と寄り添ってくれたことが、全学連に加わる決め手となった。

 ニノミヤさんは関東地方の出身で、中学受験をして中高一貫の女子校に進学した。しかし、高校1年の3学期、ネットゲームで知りあった男性と直接会い、カラオケボックスで性被害に遭った。相手はネット上では「女性」を装っていたが、実際は男性だった。被害を両親や学校に相談したが、両親は「事件を大ごとにしたくない」と示談で解決。学校は「不純異性交遊」として停学処分となった。「ついていったあなたも悪い」と責めた大人たちもいた。

 結局、自主退学を選択。その後、通信制の高校に通いフェリス女学院大学に進学して国際関係を専攻した。

 大学では、なぜ戦争が起きるのかを知りたかったが、「お金が絡んでいるから」などと表層的なことしか教えてくれなかった。そんな時に出会ったのが、全学連だった。

「実力で闘うとなった時、逮捕もあり得ます。 それでも、自分のためでなく抑圧や搾取されている人たちと連帯して闘う姿がかっこいいと思いました」(ニノミヤさん)。大学には通う意味はないと考え、昨年1月に中退した。

■繰り返してきた整形手術をやめた

 一方で、これまでの環境により自己肯定感が低かった。高校卒業後は整形手術を繰り返し、総額400万円ほどを費やした。だが全学連と出合ってからは、外見の美しさや美意識を押しつけ高額な医療費を負担させる社会のあり方に疑問を抱くようになり、一度も整形をしていない。

 現在はSMクラブでいわゆる「女王様」として働きながら、全学連の活動を続ける。この仕事を選んだ理由は、高収入を得られ、身体的接触がなく男性に媚びずに済むため、自らの主体性を保てると感じたから。この働き方は、夜間労働や不安定な仕事を強いられる多くの女性労働者の現状とも重なる、という。

「私のように性被害を受けたり、夜の仕事をせざるを得ない人は世の中に大勢いると思います。そうした状況に置かれている人たちと連帯し、抑圧や搾取、女性差別のない社会をつくりたいです」(ニノミヤさん)

「革命」という言葉は、遠い過去の出来事のように響く。しかし、差別や抑圧に抗う女性たちにとっては、いまも切実な選択肢であり続けている。これは、この社会に生きる私たち全員に突きつけられた問いだ。

(AERA編集部・野村昌二)