「パパ以外の家族を攻撃」フクロウとの生活の実際

げんさんに甘えるガルー。その姿はまるで猫のようだ(写真提供:げんさん)
フクロウの生き方を尊重して共存する
「鳥って、『つがい』を決める生き物なんです。ガルーの場合、パートナーは僕です」
【実際の写真】フクロウは寝顔が「にっこり笑ったような顔」になる。とてもかわいい
げんさんに近づき、甘えるように体を摺り寄せるガルー。「撫でろ撫でろ」とばかりにくちばしで優しく袖をつまむその姿は、まるで猫のようだ。柔らかい首筋を撫でてやると、嬉しそうに目を細める。
ガルーは基本的に単独行動を好むが、雛のときからずっと一緒に過ごし、エサを与え続けてきたげんさんに対しては、強い愛着行動を見せることがあるという。
「ツンデレなんですよね。呼んでも来ないのに、自分が甘えたいときは近づいてくるんです。ただ、一人のパートナーに懐きすぎて他の人間を寄せ付けなくなるフクロウは多いので、注意が必要です」
ガルーもまた、ときに他の家族に対して攻撃的になることがあるという。

げんさんを「つがい」と決めたガルー。フクロウの習性として、ときに家族に攻撃的な行動を見せることも(写真提供:げんさん)
フクロウは、人に飼育されてきた動物ではない。飼育の歴史は浅く、野生下での習性が強く残っている生き物だ。
「懐かせる」のではなく、「慣れてもらう」。無理して人に懐かせるよりは、単独でもストレスなく暮らせる方がいい。家族とガルーが安心安全に暮らしていくためには、別々の空間が必要だった。
ガルー自身もまた、成長に伴い、係留されていることにストレスを感じ始めていた。大型のフクロウだけに、室内で放し飼いにするわけにもいかない。
そこでげんさんは、リビングの隣にサンルームを設置してエアコンを引き込み、ガルー専用の部屋を作った。建設業を営んでいるだけあり、その程度は朝飯前だ。
「掃き出し窓からそのままガルーの部屋へ行けるし、リビングにいればガラス越しにいつでもガルーが見えます」

自宅のリビングの隣にサンルームを設置し、ガルー専用部屋に。エアコンで温度管理もされている(写真提供:げんさん)
犬や猫のように常に触れ合う関係ではなく、ストレスのない距離をとり、フクロウの生き方を尊重しつつ共に生きる。それがげんさん一家とガルーの、家族の形となった。
男一人とオス一羽、自然の中で過ごす時間
フクロウは、見た目だけでオスかメスか見分けることは難しい。詳しい血液検査をして、ようやくどちらかわかるのだという。検査の結果、ガルーはオスだと判明した。
ガルーを連れて家族旅行に行こうとすれば、場所が限られるうえに、物珍しさにすぐに人だかりになる。いつの間にか男一人、オス一羽で自然豊かな場所へと出かけることが多くなった。

雪の中のガルー(写真提供:げんさん)
犬もフクロウも人間も、同じ時間軸を生きる仲間
フクロウには、やはり自然がよく似合う。近所の神社や河川敷、紅葉狩りやソロキャンプ、ときには、ペット可カフェのテラス席まで、げんさんはガルーをいろんなところに連れて行った。もちろんフクロウを含む猛禽類を連れて外出する際は、飛んでいかないよう脚にロープをつないで係留するのが基本だ。

春、桜の咲く季節のガルー(写真提供:げんさん)

6月、アジサイの季節のガルー(写真提供:げんさん)
「万が一逃してしまったら、ニュースで取り上げられるような事態になりかねません。ペット用として日本で販売されているフクロウはすべて外来種なので、生態系を乱してしまう可能性があるんです。
ガルーと暮らし始めてから、自然や生態系について勉強するようになりました。犬もフクロウも自然の生き物たちも、僕にとっては『同じ時間軸を生きる仲間』なんです」

男同士、一人と一羽でキャンプにも行った(写真提供:げんさん)
フクロウ飼育には、人生の半分を捧げる覚悟が必要
ガルーは、今年の秋で10歳になる。フクロウの寿命は長く、30年以上生きる個体もいるというから驚きだ。その間どれほど飼い主側の状況が変わっても、毎日のエサやりや世話が続く。
ただし、実際はそこまで長く生きる個体は少ないと、げんさんは言う。10歳のガルーは、すでにフクロウ仲間では「年長」の部類に入る。
「フクロウって、本当にストレスに弱い生き物なんです。一度、ガルーがけがをして診てもらったときも、『けがは治っても、けがをしたショックで死んでしまうかもしれない』と言われました。そのくらい、繊細な生き物なんです」
だからこそ、気候が大きく変わる時期を乗り越えるたび、無事に誕生日を迎えるたび、「今年も乗り越えられた」とほっとする。
小型のフクロウなら、都会の一人暮らしでも飼えないわけではない。しかしやはり、犬や猫よりも飼育は難しいと言わざるをえない。元気に育ったとしても、自分の人生を半分捧げる覚悟がなければ飼うべきではないと、げんさんは思っている。
「元気で、生きていてくれるだけでいいんです。一番幸せなのは、リビングからガラス越しに、ガルーがぐっすり眠っているのが見えたときかな。フクロウは下まぶたを持ち上げて目を閉じるので、にっこり笑っているように見えるんです。たまに力が抜けて、ガクッとなったりして。『ああ、安心してくれているんだなあ』って、うれしくなるんです」

自分の部屋で安心して眠るガルー。目を閉じると、にっこり笑ったような顔になる(写真提供:げんさん)
『フクロウ』という生き方そのものを愛する
ペットは家族。だが、家族の在り方は一つではない。フクロウを家族として迎え入れたのなら、できる限りフクロウらしく生きていてほしい。
フクロウは単独でいる時間を好む。懐いたとしても、犬や猫のように豊かなコミュニケーションができるわけでもない。誰にでも心を許すわけではなく、ときには攻撃的になることもある。
それでもげんさん家族は、『フクロウ』という生き方そのものを、愛している。

フクロウには、やはり森がよく似合う(写真提供:げんさん)
【フクロウと暮らすには】
・ペット可物件であり、フクロウ飼育の許可を得ていること
・毎日冷凍マウスなどを解体する時間と度胸があること
・ケージ、もしくは係留用の止まり木を用意し、その下にトイレシートを敷く
・室内の温度、湿度はフクロウの生息域の環境に合わせる
・散歩に連れていく際にはリードでつなぎ、絶対に逃がさないこと
・フクロウを診察できる獣医を調べておくこと
・その個体の生態や性格に合わせた関係を維持し、ストレスのない環境を用意すること
・「フクロウ」という生き物そのものを愛せること
・人生の半分を捧げる覚悟があること