ポストに督促状?「親の借金」知らないと怖い相続

親の借金があなたに降りかからないために“すべきこと”とは(写真:mits/PIXTA)

「相続といっても、ウチはたいした財産ないし。関係ない」
そう思っている人も多いはず。しかし、「そういう人こそ、いちばん危ない」と警鐘を鳴らす著書『マイナス相続サバイバルガイド: 人生を棒に振らないためにやっておきたいこと、ぜんぶ』が刊行された。
「相続は、プラスのものだけではありません。準備不足でマイナスの相続をした結果、あなた自身が破産する危険性すらあるのです」
そう語る著者の永峰英太郎氏に、「親の借金のリスク」について解説してもらった。

「親の財産」を把握しているのは3人に1人

いきなりですが、皆さんのご両親は「借金」をしていますか?

【書籍】知らなかった「親の借金」への対策、すべて解説!

おそらく多くの人が「わからない」と、答えるのではないでしょうか?

相続弁護士相談広場が、親子で年1回以上の連絡・交流がある男女100名(40~69歳)を対象に行った調査(2024年6月)によると、親の預貯金や財産について「把握している」と答えた割合は、全体の3分の1にとどまっています。

プラスの財産でさえ、把握している人は少ないのです。

親の借金(マイナスの財産)は、とてもプライベートな問題です。プラスの財産以上に、子どもにとっては、聞きづらい事柄だといえます。

それだけに「わからない」と答える人が多いのは、致し方のないことかもしれません。

しかし、です。

「致し方のないこと」だとスルーし続けると、あなたに“大きな災い”が襲い掛かってくる可能性が高まります。

親の借金の有無を知らないままでいると、親の死後、あなたが借金を背負うことになりかねないからです。

民法では、プラスの財産を引き継ぐように、マイナスの財産もまた、遺された配偶者や子どもが引き継ぐことと定めています。

しかし、それでは何の落ち度もない相続人にとっては、あまりに理不尽です。

そこで民法では、「相続放棄」という制度を設けています。プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄するというもの――これが相続放棄です。

そして、相続放棄の手続きには、期限があります。

その期限は、相続開始を知ってから3カ月以内です。一般的には、被相続人が亡くなった日となります。3カ月を過ぎれば、自動的にマイナスの財産も相続することになります。これを「単純承認」といいます。

親の借金で「あやうく破産するところだった」友人

私の友人は、父親の死から2カ月後、父親宛ての督促状が届き、多額の借金を知ることとなりました。

父親の住まいは岐阜県にありました。母親は父親とは別居しており、友人も都内に住んでいたため、父親に借金があるとは、まったく想像していなかったといいます。

父親の死後の手続きが一段落し、遺品整理のため、たまたま帰省したときに、督促状がポストに入っていたのです。

じつは、この時点で、友人はミスを犯します。

相続放棄は「無申告でOK」だと、思い込んでいたのです。

「父は賃貸暮らしだったし、お金があったわけではなかった。相続税が発生しないならば、申告は不要と書いてあったので、借金も申告しないでいいと思った」とは、その友人の言葉です。

しかしその後、親類から「手続きが必要」と聞かされ、友人は慌てて、手続きを行ったそうです。まさに申告期限ギリギリで間に合いました。

では、親の借金について、どのように知るべきでしょうか。

まず「死後に知ればいい」というスタンスは捨ててください。

親の死後は、住民登録関係や年金関係、健康保険関係など、相続人がすべきことは多くあります。相続税が発生する場合は、10カ月以内にしないといけません。不動産の相続登記も義務化されました。

そうなのです。やることが満載なのです。

私は父が亡くなったとき、四十九日を終えて、本格的に死後の手続きに入りました。となると、相続放棄の手続き期限まで、1カ月強です。

督促状が届くのを、ただ待つというのも、精神衛生上よろしくありません。

親の気持ちを損なわずに、借金について聞く方法

それだけに、親が健在なうちに聞くことが鉄則になります。

私は母が元気だった頃、「まぁ聞くまでもないことだけど、うちは借金はないよね?」と尋ねたことがあります。すると「ないわよ」と笑って答えてくれたものでした。その言葉は、両親の死後の手続きの際、私にとって大きな“安心材料”となりました。

親に聞いて、借金がない場合は、笑って答えてくれるはずです。

一方、親が口を濁したら、借金がある可能性が高いといえます。親は「借金が相続人に引き継がれる」というルールを知らないのかもしれません。

この場合は、「相続のとき、残された家族が借金をかぶることになるんだよ。返済方法の計画を立てたりするためにも、教えてほしい」と伝えましょう。親はちゃんと告白するはずです。

親の借金が判明したら、プラスの財産もざっくり把握してください。

相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄する制度です。

例えば、300万円の借金があるものの、1000万円の不動産を所有しているのであれば、不動産を売却し、借金返済に充てればよいのです。プラスの財産を把握しておかないと、大きな損をしてしまうことになるのです。

なお、親が元気な段階で、借金があることを聞き出し、その額が、親の生活スタイルを見直すことで返済が可能であると判断したら、家族で話し合って、その借金をどのように減らしていけばいいのか、計画を立てていくことをおススメします。

借金のある親に「借金は家族のもの」であることを伝えれば、生活を改める気持ちが芽生えることは十分あり得ます。

司法統計によると、相続放棄の件数は、2023年度で約28万件となっており、この5~6年は、毎年約1万件ずつ増加しています。そして、相続放棄する理由でいちばん多いのは「被相続人の借金」なのです。

相続放棄は、借金を抱えた親を持つ子どもの当然の権利だと覚えておきましょう。